「脇役」でも輝けると証明したら（プロット作成により休載します）

第47話 王都ウェルデン

「にしてもこんな楽に王都に入れたの初めてだわ。冒険者組合（ギルド）本部からの推薦状ってすげーんだな」

「それは俺も同感だ」

　王都ウェルデンの街中を二人で談笑しながら歩きさっきまでの出来事を話題に話していた。ボールスの手にはその推薦状なる用紙があり、それを横で歩くカーボンが興味深げに眺めていた。

　王都の大きな門に近づくと王都内に入る馬車の行列があったのでそちらに並んでいた。カーボンの話では何処もかしこも国や街に入る時は厳重な審査があるそう。それを通って持ち物検査をしてステータスを確認した上で漸く入国が完了するとか。

　ボールスがその話を聞いて何処も同じだなと日本を思い出していると自分達の番が漸くきた。そこでカインから受け取っていた冒険者組合（ギルド）本部の推薦状なる物を渡したら険しい顔付きの警備兵が直ぐに笑顔になり何も確認せずに通してくれた。

　馬車は警備兵が管理してくれるというので任せている。

「でも怖いよな。あれでもし俺達が犯罪者だったらどうなっていたのか」

「それは一理あるが、国の警備だ。流石にそんな馬鹿じゃないだろ。恐らく魔道具か何かで初めから確かめていたんだろ」

「そうかねぇーまあ、そうと願うしかねぇよなぁー」

　少し納得がいってなさそうなカーボンだったが直ぐに周りにある屋台や珍しいお店を見て興味を唆られたのかその話題は終了した。それはボールスも同じで中でも近くから香ばしい香りがする屋台に釘付けだ。余裕ができたら王都の観光をしたいと願うのだった。

　そして二人が少し歩いて冒険者組合（ギルド）本部が見えてきた時、自分についてくるカーボンが気になってしまう。

「あれ？　カーボンも冒険者組合（ギルド）本部に用事が？」

「ま、そんなところだな」

「そうなのか。なら早く済ませてご飯でも食べに行こう」

　お互い用事も同じ場所なら夜ご飯を二人で食べようと心躍る。

「そうだな。ちなみに旦那。宿屋は決まっていて？」

　そんな素朴な疑問に簡素な返事を返す。

「あぁ、俺がルクセリアで泊まっていた宿屋から紹介状を貰っていてね。カーボンの分も貰ってる」

「さっすが旦那！　なら宿決めはしなくて済むな。助かった」

　二人は話しをしながら冒険者組合（ギルド）本部の下まで来ていた。ルクセリアの冒険者組合（ギルド）でも大きいと思ったが目の前に聳え立つ冒険者組合（ギルド）本部は想像を超える大きさだ。

「デカ、本部だけはあるな」

　見上げて素直な感想を告げる。

「旦那。見ていても他の冒険者が来て邪魔になるから俺達も早く中入ろうぜ」

「そ、そうだな。じゃあ、行くぞ」

「おう」

　急かされたボールスは少し緊張気味に、カーボンはお気楽に。お互い非対称な表情を浮かべて冒険者組合（ギルド）本部に入る。

　中はルクセリアの冒険者組合（ギルド）と変わらず綺麗。違うところはその規模。王都だけあって人の量も多くそれぞれのランク帯の冒険者達が犇めきあっている。食堂エリアには幾つもの長椅子が置いてあり飲食が出来るスペースも完備されている。そこでは色々な人達、種族、多種多様な冒険者達が話し合っていた。

「…人、多いな」

「王都だからな」

　「王都だから」。その一言だけで済ませられるほどの人の量に初め圧倒された。カーボンの返事を聞き、今の自分は一人ではないと思い出して奥にある受付まで進む。

『……』

　うわ。周りからの視線がパネェ。俺は新顔だもんな、そりゃ気になるか。だが、なんでか俺に視線が集まっているような…気のせいだよな…。

　内心ビクビクしながらもなんとか受付の列に辿り着いた。

「相変わらず列、長えな」

「カーボンは以前も来たことがあるのか？」

「ちと野暮用でな」

「ふーん。もしかしてその時も今回みたいに依頼で？」

「そんなところだな」

　二人は噛み合っているようで若干噛み合っていない会話を互いに話し、自分達の番まで時間を費やしていた。

「次の方、どうぞ」

　冒険者組合（ギルド）から出た後の話を二人で話していると自分達の番になっており、受付嬢から呼ばれていた。二人は顔を見合わせカーボンが顎をクイッと前に出した。恐らくその行為は「お前が先に受けろ」と伝えているのだろうと察した。

「あ、どうも。自分ラクセリアから来たボールスといいます。こちらのギルド長から監督官の依頼を受けてまして…」

　俺は周りからの視線を感じながら目の前にいる性格が少しキツそうで綺麗よりの緑髪の女性に話しかける。そして持っていた推薦状を受付嬢と自分との間にある台に置く。

「…貴方が。承知致しました。少々お待ちください」

　受付嬢は推薦状を一瞥してボールスの顔を一瞬見て、背後にいるカーボンの顔を見ると「お待ちください」と一言言葉を残して一礼。背後の部屋に入っていく。

　なんだ？…あぁ、上司に伝えに行ったのか。しかしカーボンの顔を見ていたな。知り合い？…何度か来たことがあるって言ってたしな。

　少し気にはなったが二人の関係を外野がアレコレ考えるのも野暮だと思い受付嬢の帰りを無難に待つことにした。そんな時間も少し経った頃先程の受付嬢が知らない男性を連れて戻ってくる。その男性は端正な顔の持ち主で金髪のナイスミドル。そして一言。

「貴方がボールス・エルバンスさんだと確認できました。今から――カーボンさんと模擬試合を行なってもらいます」

「は？」

　俺はその言葉に理解が及ばず、反射的に素で言葉を返してしまった。ただし受付嬢は変わらない澄ました顔だ。隣にいる男性は満面な笑顔。横目でカーボンを見ると片手で口を押さえて笑っていた。

　そこでボールスは漸く気づいた。カーボンが冒険者組合（ギルド）本部に用事があるのはそういうことだと。

　◇◇◇

　受付嬢が連れてきた男性…冒険者組合（ギルド）本部の本部長であるエレガンから話を聞いた。信じたくはないが、信じなければいけないと悟り、コロッセオのような外見の闘技場に立っていた。

　その手には刃が潰された模擬専用の片手剣があり周りを見回す。ボールスの二メートルほど先にはこちらと同様刃が潰された両手剣を肩に担ぐカーボンの姿もある。

「…どうしてこうなったのやら」

　つい先ほどまでの出来事を思い浮かべる。

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　受付嬢から「カーボンとの模擬試合」をしてもらいたいと言われて放心状態となっていた。なんとか理解することに成功して現実へと戻ってきた。その後も話を聞いた。話を聞いた限りでは冒険者組合（ギルド）本部の本部長であるエレガンが「ボールスの実力を知りたい」とのことで今回の監督官の件含めてルクセリアから王都ウェルデンへとカーボンが連れてくるまでエレガンが仕組んだことだとわかった。

　その際に知ったことだが、カーボンは元々冒険者で「A」ランクの実力を持つとのこと。今は冒険者を辞めて王都お抱えの御者だと。カーボン自身は「A」ランクの実力もあり貴族や役人などの御者として重宝されている。それも護衛を必要としない『戦える御者』として有名だとか。

　その話を聞いて納得をした。護衛を不必要なこと。王都に何度も足を運んでいること。そして…初め会った時に気づいたら間合いを取られていたこと。実力はあると思っていたがまさか元でも「A」ランク冒険者だとは思わなかった。

　その後もギルド本部長のエレガンの策にまんまと嵌ったボールスはあれよこれよと模擬試合をする運びとなり受付嬢のスイス嬢から説明を聞き、現在闘技場に立っている。

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　周りは二人を囲むように円状の闘技場で幅は横が30メートル。高さが50メートルはある広々とした場所となる。闘技場には観客が観戦できるスペースもあり今は冒険者や話を聞いた街の人、受付嬢達冒険者組合（ギルド）の従業員も観戦に来ている。その中には接待をした受付嬢のスイスの姿もあった。

　審判役の男性から聞いた話では闘技場にいるボールス達を囲むように【結界】が離れているから観客に危険はないため存分に己の力をぶつけ合ってくれと言われた。そんな審判役はギルド本部長のエレガンなのだが…。白色と紺色の制服に身を包む金髪のナイスガイことエレガンは結界内であり二人の中間に立って楽しそうに笑っている。

「――カーボンさんよぉ〜初めからこうなるって見越していただろ？」

　俺はこの場から逃げれないなと悟り。少し離れた場所にいる模擬戦相手にジト目を向ける。

「まあな！　ただ俺も噂の旦那の実力は知りたかった。なんで「D」ランクなのかもな」

　開き直ったカーボンは「ガハハ」と大口で笑う。そんなカーボン相手に肩を竦める。

「そうか」

　二人はそんな語らいをお互いにし、武器を構える。二人の雰囲気が変わり準備が整ったことを確認したエレガンが告げる。

「二人共。これは模擬試合だ。命を落とす行為は勿論。こちらが危険だと思った時即刻止めさせてもらう。スキル、魔法は禁止にするがどうか猛き闘いを見せてくれ――始め！」

　そして二人の模擬試合は火蓋を切る。