第44話 ボールス、監督官の道
「――こ、こうか。これなら、魔力を少しずつ貯められる…」
荒い息を吐き心身共に疲れ果てた様子で脂汗を額に滲ませネックレスを握っていた。
「魔封じのネックレス」への魔力の供給の適切なやり方を編み出し試した。ネックレス如きに「お前ならわかる」と上から目線で言われてしまったので根性と自力でなんとか。
方法はまず【
「あぁ〜ちょっと休憩」
座っていたベットに寝転がる。
「うぁーこの状態じゃダンジョンなんて潜れねぇな。一旦、休憩だ、休憩」
疲れ果てた体では何もできないと思い三の鐘まで仮眠をとることに。
◇◇◇
その頃の
「ぎ、ギルマス大変です!」
「? ポーラ君。そんなに慌ててどうしたのだね?」
カインが部屋で『クエスト』を吟味、ダンジョンのことで頭を回しているとギルド嬢であり司書でもあるポーラが突然部屋に入ってくる。そのポーラの慌てようを見て普段冷静沈着であるカインですら驚くほどだ。
「す、すみません! 取り乱しました」
「構わんよ。少し深呼吸でもして整えなさい」
「わかりました」
自分の失態を恥じたポーラは平謝りする。そんなポーラにカインは一呼吸入れて落ち着くように優しい声音で伝える。
「…落ち着きました」
「それはよかった。それで、何かあったのかね?」
暫し深呼吸して落ち着きを取り戻したポーラにカインが質問する。
「はい。それが、こちらをギルマスに見ていただければわかると――」
言葉を濁し、ポーラからおずおずと手に持っていた一枚の用紙を受け取る。
「ふむ」
用紙を受け取ったカインは真剣な眼差しで目を通す。そして読み終わり少し経つと眉間に皺を寄せてポーラの顔を見る。
「――これはいつ届いたのかね?」
「さ、先程です」
「そうか」
ポーラから話を聞いたカインは目を瞑る。そして一息吐く。
「君では身に余る案件だ。私の方から直接彼に話を通しておこう」
「あ、ありがとうございます!」
ポーラはカインに頭を90°下げてお礼を伝える。そしてポーラは後のことをカインに託して部屋を退出する。
「…また、厄介な」
ポーラの退出を確認したカインはそんな一言を溢し、静寂が部屋の中を支配する。
◇◇◇
「全然、疲れが取れた気がしない。これじゃ生活にも支障がでるぞ。アレ使うか…」
少し仮眠をとり昼食をいただいた。今はまだ魔力が回復せずベットの上で寝転び呻いている。このままではいけないと思い秘策をここで使うことに。ベット近くに置いておいたバックを漁る。
「…ポーション」
自分の左手に収まる青色の小瓶を見る。このポーションは「魔力回復ポーション(極)」。買えば一本で「1000万ベル」以上はする代物。なんでも
こんなどう考えてもやば目なポーションをラクセリアを救ったという理由で10本も貰ってしまった。いやな、俺も「流石にそんな価値のあるものは貰えない」と断ったさ。「受け取らなかったらどうなるかわかってるよな?」とでも言うような圧に負けて有り難く頂戴したけど。それが役に立つとは…。
「せっかくだから」
小瓶の蓋を開けるとポンという軽快な音を鳴らして蓋は簡単に開いた。そこから漂ういかにも苦そうな薬品の香り…えぇいままよ!
「…甘い」
絶対に苦いと思って飲んだ末、甘かった。その事実にどうリアクションを取っていいのかわからず、小瓶の蓋を閉めて自分の状態を確認する。腕を振ったり、その場で立ち上がり伸びをする。
「マジか。不快感が消えた…「ステータス」」
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ボールス・エルバンス 29歳 男
L v.48
種族:人種
ジョブ:性技
サブジョブ:戦士
魔力:97600→107600(+10000)
筋力:3020
防御力:950
魔防御力:630
素早さ:4500
運:50
加護:なし
スキル: 剣術lv.2 体術lv.2 身体強化lv.5 氷魔法lv.0(開花してない)性技lv.7 絶倫lv.9 性欲lv.10MAX 棍棒術lv.5 繁殖 悪食 鑑定lv.1
ユニークスキル:強奪lv.5
属性:氷・無
状態異常:快調
持ち物:なし
所持金: 146万ベル
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「oh」
自分の「ステータス」画面を見て絶句した。それは当然の反応。ポーション一つ飲んだだけで誰が魔力が「全回復」すると思うか。それも魔力が上がってるし、と。
「…いや、どう考えてもおかしいだろ。コルデーさん? あんた俺に何を渡した…??」
王国に赴いているであろうコルデーに向けて尋ねる。その返事が返ってくることはないと知っていても。
しかし、俺も「魔力枯渇」になったことがあるから魔力は多少増えていると思っていた。今回は多少の域を超えてやがる。それも全回復とか…俺が聞いた話ではどんな優れたポーションでも既存の半分でも回復すれば優秀だと聞いたのだが…。
知識通りポーションとはどのポーションも変わらず最大の回復はその人の既存の数値の半分が限度。それも甘味などするはずもなく青臭さがあり苦い。中には「エリクサー」と呼ばれる「魔力」「体力」共に全回復する代物もあるもの、それは『神の涙』とも呼ばれて簡単に手に入れられる代物ではない。
「…まあいいや。どうせ貰い物だし。あと9本あることは…あ、アレだ。本当にヤバい時、使おう。うん」
「魔力ポーション(極)」?が入ったバックを静かに床に置くと少し裏声で震えた声で自分を落ち着かせる。
「気分転換に外でも出るか…」
なんか落ち着いていられなかった。だから外にでも出てリフレッシュしようと思った。
「丁度よかった。君がまだ宿屋に居てくれて」
「…カインさん?」
部屋を出て出かけることをミリナさんに伝えようとした時、何故か居るカインさんに声をかけられた。
何故だか知らないがそのことに少し嫌な予感を感じずにはいられなかった。
・
・
・
「単刀直入に言う。ボールス君、君には今から…王都に行ってもらいたい」
「
「えっとぉー、カインさん? 詳しく説明を聞いても?」
嫌な予感が的中した。それも突然のことで戸惑ってしまう。それでも冷静に冷静に…と、自分が王都に行かなくてはいけない経緯を聞くことに。
「…君の反応はごもっともだ。実は先程王都の
そう前置きを置くとカインさんは詳しく内容を教えてくれた。
ルクセリアの街で起きた【
「――すまない。私自身もこの話を知ったのが先程なので、驚いている」
座った体勢で頭を下げる。
「あ、いや。そんな、頭なんて下げないでくださいよ!」
「…ありがとう」
カインさんは頭を上げてくれる。その顔は少し鎮痛だと思った。
「ボールス君。初めの会話に戻るのだが、君には王都に行って臨時の試験監督官となって貰う。私としては勧めたくのないのだが…本部の意向には私のような一ギルド長では背くことができない…すまない」
「承知しました。俺も一応、本部と
表情を見て、また、自分が折れるまで頭を下げてきそうだったのでこちらから提案にのる。
内容的に俺が折れなくてはカインさんの面目も立たないだろうしな。
「ありがとう。一応、王都行きの馬車は既に手配してある」
「…そうですか」
「初めから俺が行く前提じゃねえか」とか思ったが今は口に出さず、耐えた。大人とはこういう生き物だからな。「本音」と「建前」というモノが存在する。まあ、実際そんな多くは考えずに長いものには巻かれるのが一番手っ取り早い手段。
少しは人生経験を積んできた身。なので無駄な労力をかけないためにも上の意向に従うのみ。その後もこれからについて話し合う。
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