第39話 悪魔付き(笑)
「……」
警戒を解かず吹き飛んだ不審者達を見据える。壁に叩きつけた不審者達だが攻撃をした際に手応えがあまり感じられなかった。
「――くぅ。舐めた真似を」
「我らの話を盗み聞きをした鼠め。生かしては帰さんぞ」
黒ローブを纏う不審者達は纏っているローブのあちこちが切れてはいるが見た感じダメージを負った様子はない。その場でローブについた埃を払いこちらを睨め付けながら立ち上がる。
簡単には倒れてくれないか。それにあれは、【
不審者達を守るように半透明の光の膜が展開されていた。コルデーが使っている場面を見たことがあるので自分の攻撃を防いだ技がそれだと直ぐに見てわかった。せめて一人は落としたかったなと思いながら声をかける。
「貴様らは何者だ。こんな場所で何をしていた」
目前の二人に注意を払い祭壇の周りを見る。
どうやら他の仲間は居ないようだな。
他に仲間がいないことを目を通した魔力で確認。先制攻撃が失敗したことを臆面も顔に出さず油断なく問い掛ける。
「ふん。知れたことを。どうせ貴様も我らの崇高な行いの邪魔をしにきた自分達があたかも「正義」だと思い込む連中――『
「そうだ。我々の敵対者に教えることなどなし。我ら主から賜った
不審者達はボールスの質問に答える気はないようでこちらに向ける杖に魔力を貯めるのが目を通してわかる。
『
「あくまでもしらを切るのなら無理矢理吐かせるまでだ」
右手に持つ棍棒を構える。
「戯言を。貴様はこの場で消し炭になるのだ。炎よ、我が敵を射抜く弾丸となれ、【
「無知とは愚かなものよなぁ。我々の前に現れたことを嘆き後悔の念に潰れろ。風よ、球体となり、敵を撃て、【
不審者達はボールスに杖を向け炎の弾丸と風の玉を放つ。迫り来る攻撃魔法に込められた魔力は高い。まともに当たればボールスとて無傷ではいられない。ただしまともに当たればの話。
「はっ」
俺は迫り来る魔法を見て「無駄撃ち乙」と鼻で笑い右手に持つ棍棒に魔力を通す。すると棍棒を包むように薄らと淡白く光る魔力の膜が形成されていることを確認。
「ふんっ!」
目と鼻の先に迫る魔法に向けて魔力を纏った棍棒を無造作に横に振るう。「パシュッ」という陳腐な音が鳴り不審者達が放った魔法はボールスに到達することは叶わず掻き消される。
「なぁ!?」
「なんだと!?」
二人は今起きた現象に面白いように驚く。
この技も「スキル外スキル」。ダンジョンで修行し、極端に増えた魔力をどうにかして戦闘に使えないかと試行錯誤した末に完成したオリジナル。前回シノと戦った際の反省から生まれた副産物でもある。
過剰に増えた魔力が勿体無いと思い【身体強化】また「目」以外にも強化できないかと試していたら体の内にある魔力を体外…外側に放出して部位に籠められるようになったんだよな。名前をつけるなら安直だが【魔力強化】ってところか。
体全体に籠めれば【身体強化】を上回る力を。その過程で普段微弱だが体全体に魔力を流している。着用しているスライムの肌着に魔力が波紋のように浸透し、並の攻撃なら無傷ですませる。正直、先程の不審者達の攻撃魔法は無防備でも防げたが自分の手札を簡単に晒すのもどうかと思い棍棒にて防いだ。
他にも一点集中に籠めるやり方が強力だ。「腕」に籠めれば普段の何倍もの腕力を。「脚」に籠めれば人離れした脚力を。その過程で「武器」にも魔力を纏わせるようになった。「目」だけはどうしても【
「さて、次はこちらの番だ。我。力を求む者。心身共に強くあらん、【
【
「ヒ、ヒィ!? い、いと慈悲深き主神よ。か弱き我らを、どうかその御加護でお守りください、【
風魔法を使っていた不審者Bが危険を感じたのか直ぐに【
「ふんっ!」
一瞬で不審者達の元に近づいたボールスは【
(阿呆が!! 【
(馬鹿が。先程の攻防で貴様の攻撃など効かないと理解しなかったのか)
不審者達は【
『ぬぁっぁぁ!?』
不審者達は互いに驚愕する。
「馬鹿なのはテメェらの方だ。いまさっき魔法を消されたことを学習しやがれ!!」
【
「グフゥ!?」
棍棒の直撃を受けた不審者Bはその身をくの字に曲げて吹き飛び壁に叩きつけられる。
「……」
手応えあり。
不審者Bは地面にうつ伏せに伏せたまま動かなくなる。
ま、当てる直前に手加減したから死んではいないだろう。骨の何本かは折れたかも知れんがな。
「あとはお前一人だ。怪我をしたくなければ潔く負けを認めろ」
不審者Bから視線を外し、残る不審者Aに棍棒を向ける。
「ふ、ふふふ。ふははは!!」
「……」
不審者Aは突然笑い出す。その姿を見たボールスは眉を顰める。
とうとう頭がおかしくなっちまったか。所詮厨二病を拗らせたイタイ大人だからな。
それでも気が狂った人間ほど恐ろしいものはない。なので変わらず気を張る。
「――貴様を…いえ、貴方を『
何やら語ると自身が纏う黒いローブのフードを外す。顕にされた顔は40代後半であろう男性だ。髪は燻んだ茶髪でこちらを濁った瞳で見てくる。
「私達と対等に立ち回るその強さ。貴方はどうやら幹部クラスのようだ。だが私を侮ってもらっては困る。私は『アーク教』の第二関門…『信徒』である!!」
自分のことを『アーク教』の『信徒』(笑)と名乗る不審者Aは自慢をするように告げる。恐らく漫画とかだったら背景に「ドン!」又は「ドヤっ!」と擬音または文字が浮かぶだろう。
「ほ、ほう。『アーク教』の『信徒』か」
内容が厨二すぎて笑いそうになっていたがなんとか平静を保ち話を合わせる。聞いた話だと誰かに構って貰うと厨二病はペラペラと自分語りをするらしい。その話を信じて少しでも情報を手に入れる。
「如何にも。私は教団を通し「悪魔王」様から
思っていた通り不審者A改め第二なんちゃらが自分語りを始める。
お、おう。次は「教団」にあ、「悪魔王」ですか。もうお腹一杯だよ。
内心笑いすぎて腹筋が壊れそうだった。
「第一関門から上の階級の皆様には遠く及びませんが幹部如きこの私――「名前持ち」である『悪魔付き』のウィルソンがお相手しよう」
『悪魔付き』のウィルソン(笑)と名乗る中年が待っていた杖を地面にトンと立てる。
「『悪魔付き』の真髄しかと見よ。【
その言葉を告げた瞬間ウィルソンの右腕に巻かれた包帯が淡く発光し一人でに解ける。包帯が解かれた右腕には幾何学な紋様が描かれておりその紋様が黒く光り周りをドス黒い網目状の邪悪な魔力が覆う。
「これは…」
【
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