第33話 自由を手に入れて


 ◇



 コルデーやレイア達聖堂騎士。ユート達「黒曜の剣」が王都に旅立った後。


 念願だった「自由」も手に入れて異世界生活満喫中。見送りに行った時に女性陣から謎の圧をかけられたのは未だにトラウマだが。


 アレなんだったんだ?


 そんな俺はカールじぃのところに顔を出していた。ちなみに今は病院から退院して「日の園宿屋」の一室を借りている。前まで住んでいた部屋を残していたとのことで助かっている。


「来たかボールス。頼まれていた例のもの出来ておるぞ」

「お、本当かありがとう!」


 カールじぃにある物の制作を頼んでいた。それが出来たと知らせが来たので朝一番で顔を出した。朝一番と言っても住んでいる「日の園宿屋」から5分もかからない距離なのだが。


「これがお前さんが言っていた「スライムゼリー」を加工した衣服だな。わしは鎖帷子の方が良いと思ったが」


 カールじぃは愚痴を言いながら自分が作った艶がある藍色の衣服を台に置く。


「そうそうこれだよ。流石カールじぃ!」


 注文通りに作ってくれたカールじぃに称賛の言葉を伝えるとその衣服の手触りを確認して最近手に入れた【鑑定】で確認する。



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 ・スライムの肌着


 スライムの素材である「スライムゼリー」をふんだんに使った一品。着用者の魔力によって打撃と魔法耐性を上昇する。


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 簡素な説明だけどこれを待っていた。着用するだけで後は自分の魔力の有無で打or魔の耐性が付くのはどう考えても最強。


「カールじぃありがとな!」

「いい、いい。お前さんにはこの街を救って貰ったしお得意様だからな。また作って欲しいものや武器のメンテナンスがあれば言ってくれ」


 そう言うとそっぽを向いてしまう。耳が少し赤らんでいるので照れているのだろう。


「わかった。何もなくてもまた来るよ」

「おう」


 代金は既に支払っているのでお礼を言い衣服を受け取るとそのまま宿屋の自室に戻る。


 ・

 ・

 ・


「…肌触りも完璧だな。カールじぃはいい仕事をする。流石」

 

 さっそく自室で着替えた俺はスライムの肌着の着心地を確かめていた。ベースはコルデーから貰った藍色の衣服を使っている。


 下級モンスのスライムからゲットできる「スライムゼリー」を防具にしようとした理由は…起きたら何故か「スライムゼリー」が机の上にあったから。

 勿論、その後調べてわかったスライムの体の構造にもある。スライムの体はゼリー状に構成されている。その体は大抵の「打撃」と「魔法」を跳ね返す。唯一の弱点がスライムの心臓である「核」を破壊すること。

 諸説は知らないがスライムの「核」近くを攻撃するとスライムの体は軟くなりダメージは通る。その代わりそれ以外の場所を攻撃しても無効化されてしまう。


 スライムから手に入る「スライムゼリー」は防具になれるのでは?と考えた。コルデーにスライム救世主が虐殺されてから一度も倒したことがなかったのでこれも何かの縁だと思い試してみた結果、今に至る。


「うし。武器も防具も揃えたしダンジョンにでも挑みますかね」


 腰に吊るされている灰色の棍棒を軽く叩く。シノと戦った際に棍棒は折れてしまい使いものにならなくなってしまった。そのことをカールに伝えたら新しく壊れにくいものを作ってくれた。デザインは前と同じなので気に入っている。


「ステータス」


 最後に今の自分の「ステータス」を確認する。目の前に現れた反当面の画面を注視。

 


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ボールス・エルバンス 29歳 男


L v.42→46

種族:人種

ジョブ:性技

サブジョブ:戦士


魔力:4946→8900

筋力:1050→1320

防御力:621→730

魔防御力:320→400

素早さ:1350→1800

運:50


加護:なし


スキル: 剣術lv.2 体術lv.2 身体強化lv.5 氷魔法lv.0(開花してない)性技lv.7 絶倫lv.9 性欲lv.10MAX 棍棒術lv.5 繁殖 悪食 鑑定lv.1NEW


ユニークスキル:強奪lv.4


属性:氷・無


状態異常:正常


持ち物:なし


所持金: 90万ベル


 

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「スキルレベルの変化はなし。新たなスキルを獲得。今回は療養していた期間もあるからそこそこ。ただ魔力だけを見たら「A」ランク冒険者と遜色ない、らしい。一度冒険者組合ギルドでステータスチェックを受けたらその場に居合わせた全員に驚かれたっけ」


 ちなみにジョブに関してはボールスのけじめということで変えていない。今回の事件の活躍費も貰い借金の返済も少しだけできた。お金も白金貨を「50枚」貰ったのに少なくね?と思うかもしれないが自分の借金とは別に「ルクセリア」の街に全て寄付した。その時に街長に感激されたのはまた別のお話。


 ジョブと借金に関しては地道に進めようと思っている。ちっぽけなプライドが邪魔をしてね。


 

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 ・鑑定lv.1


 触れたものの情報を掲示する。


 ※使用魔力:50


 

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 【鑑定】はその名の通り。レベル表示があるのでレベルが上がれば効果が変わるのやもしれない。


「防御面が心配だったけど優秀な防具も手に入れた。まずはスライムの肌着の性能チェックだな」


 「ステータス」確認を終えると初ダンジョンと防具の性能チェックをついでに行う為に支度をして宿屋を出る。


「あ、ボールスさん。おでかけですか?」


 外に出ようとした時ちょうど配膳をしていた宿屋の娘のミリナさんに声をかけられる。肩までの茶髪に赤色のエプロンを着用する若くて美人な女性でこの宿屋の看板娘。


 常連客のボールスは他のお客さん(男)からアプローチをされているの彼女の姿を時たまに見る。それほど人気のある看板娘だ。


「あぁ。今日からダンジョンの攻略を始めようと思っていてね」

「そうなんですね! 頑張ってくださいね!!」

「ありがとう」


 元気よく応援してくれるミリナさんに俺も元気をもらったので頑張れる気がした。


「あ、でもちょっと待っててください」

「ん?」

「直ぐに戻りますから!」


 それだけ言うとミリナさんはテテテと小走りで厨房の中に入って行ってしまう。


「何だろうか」


 まぁ別に急いでいるわけではないので近くにあった椅子に座って待つことにした。

 少しすると藍色の布袋に包まれたものを持ってミリナさんがかけてくる。


「ぼ、ボールスさんこれ!」

「え、あぁ、うん」


 ミリナさんが手渡してくるものを勢いで受け取る。その布袋に包まれた物体はズッシリとしていて少し重たかった。


「もしかして、お弁当?」


 沢山ある選択肢の中からお弁当をチョイスした理由。形状。そして厨房から持ってきたことから食べ物関連だと予想できた。


「そ、そうです。ボールスさんは街のためにいつも頑張ってくださるので体力をつけるために! あの、よかったら食べてください!」


 目を瞑りしどろもどろに話すミリナさん。そんなミリナさんに俺は笑みを返す。


「ありがとう。美味しく頂くよ。あ、お金だけど――」

「あ、あの、お金とか大丈夫です!! 本当に私の気持ちなので。それに今料理を勉強しているので…感想をいただければ!!」


 お金を出そうとしたら止められた。ミリナさんがそう言うならと思い俺はありがたく頂くことにする。人の善意は受け取っても罰は当たらないだろう。


「そ、そう?」

「はい!」


 うん。とてもいい笑みだ。


「なら、帰ってきたら感想を伝えるね」

「はい。楽しみに待っています!」

「あぁ、じゃあ」

「いってらっしゃいませ!」


 ミリナさんに見送られながら俺は外に出た。少しむず痒い気持ちはあったけど人の善意と優しさは良いものだなぁ。


 ほっこりとしながらも持っていたバックに丁重にしまいダンジョンに向かう。


「さ、何が待ってるやら」


 「自由」を手に入れた男は期待を込めて初めてのダンジョンに挑む。




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      ボールスの現状


【ネガ要素】


・異世界ラクシアに転生

・「ボールス・エルバンス」というクズ男の体に何故か憑依

・ジョブ『性技』からの解放皆無

・多額の借金「2000万ベル」※「1500万返済済み」

・仲間無し

・聖女という危ない輩に目をつけられている

・女性達が怖い

・『闇ギルド』のシノに狙われている

・女性陣に「お願い事」を軽く承諾してしまった


【ポジ要素】


・異世界ラクシアに転生

・性○が治った(コルデーの【上位治癒ハイヒール】のお陰

・ルクセリアの街の住民から信頼・信用回帰

・「更生者」から解放された

冒険者組合ギルドと仲直り

・ボールスに課されていた罰が解除

・ユートとも仲直りできた

・過去を振り返り一歩前進

・使命は一応なし



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