第十八話
拓哉と洋子の次の仕事はペット火葬場とされた。場所は横須賀で芝浜電機横須賀事業所跡地に作られた火葬場である。芝浜はカニーの比ではないくらいの規模を誇る総合電機メーカーである。しかし「失われた三〇年」の間に業績はじり貧。とうとう粉飾決算に手を染め、ばれて資産や子会社を次々売却し一時は東証二部に転落した。芝浜電機横須賀事業所は買い手が付かない場所を寄贈してそこをペット火葬場にしたものだ。しかし、ペット火葬場も私立から公立(市営)に移行することになる。したがって、拓哉たちが私立にして宗教立最後の火葬場職員である。
スターレット資格すら要らないこの資格は淡々とペットの居た遺体を運んで火葬にして骨壺に入れる。失礼は絶対に許されない。骸骨を拾うので耐えられない人間は辞めていく。しかし、人と会話しないので「ボッチ」にとっては最適なバイトとなる。拓哉も洋子もボッチだったので最適なバイト先だった。やがて公立化の時がやって来た。十字架を取り外し宗教に関する物も全部取り外す。ペット火葬場の法律が施行されたのだ。移動ペット火葬車も禁止された。拓哉と洋子はとうとうバイト先を失ってしまった……。川本牧師は次にスターレット資格受験者の塾講師バイトをあっせんしてくれた。一コマ三千円。今度は自分の資格を活かせる仕事のうえに神学の復習にもなるので大いに役に立った。川本牧師はこの二人の姿を見てこう言う。
「ねえ、君のお父さんも塾講師のバイトをしてみない?」
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