第十五話

 八景学院の入学式がMM二一にあるホールで始まった。入学式を終えると懇談会が始まる。神学部はどこの教会の洗礼を受けたかなどの話題一色になるなど他の学部とは明らかに違っていた。八景学院の中でも偏差値こそ一番低いが入学後と卒業後では全然違う。なにせ北部バプテスト派の中核を担う牧師養成学部なのだ。ゆえにギリシャ語にヘブライ語が当たり前のように課せられるのだ。スパルタのため中退率は四年間で約三割と高い。生半可な覚悟で神学部に入ってはいけないのだ。もちろんギリシャ語とヘブライ語の無料補習塾は八景学院側が用意する。このほかに旧約、新約の知識は当たり前のように詰め込まれる。そして牧師になるには六年も掛けないといけない。つまり学部卒では牧師になれないのだ。北部バプテスト派の牧師は最低でも修士号を要求するのである。だから大学院入試の方が受験者数が多いくらいだ。いったん大学出て牧師になると決めた大卒者の方が多いのだ。しかも神学部だけ戸塚にある。他の学部生との交流など無いに等しい。

 オリエンテーションで司書資格も取れることが分かった。司書資格は高卒じゃ取れない。幸いにもスターレット資格を持っている二人は聖書の知識はあるので余裕があった。

スターレット資格受験者のための図書館の必要性を切実に感じていた二人は土曜の司書課程受講を決意する。というかそうでもしないと大学に言った意味などない。もう聖職者の資格はいくら下位のスターレット資格とはいえ既に持っているのだから。

 それだけではなかった。


 「空家を改造して教会の隣に教会図書館作ったら地域創生になるんじゃね?」


 「本当。最近空き屋が多すぎ」


 彼らのこの発想がさらに町おこしにつながっていくとはこの時想像できなかった。


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