第八話
九月に入ると恐怖の体育祭がやって来た。拓哉はクラスメイトから「ばーか!」と罵られながら四百メートル走で最後にゴールインする。ボッチで陰キャの彼ら・彼女らにとって体育祭と言うのは地獄のイベントでしかなかった。そんな中に佐藤守は居た。佐藤はもっとひどかった。あらゆる場背が浴びせられた。彼は無理してこの高校に入学し、そして見事に落ちこぼれたのだ。佐藤は拓哉や洋子と友達になった。佐藤は写真部員である。しかもいまどき珍しいフィルム写真も撮る。星空、風景、電車……さまざまなものを撮る。
「すごいね」
「すごいでしょ!! ねえ、入部だめ?」
「でも、ぼくらはもう聖職者のバイトもあるし……」
「月一~二回でいいんだ。お願い!!」
困った二人は担任に相談した。
「我が校は本来全員部活動加入。写真部いいじゃないか。二人とも入りたまえ。顧問は山本先生だからな? 化学準備室にいる。さっそく訪ねて来なさい」
化学準備室に入ると白衣の山本が居た。写真部入部の意思を聞くと「本当かいな!?」と飛び上がるように喜んだ。
「来月文化祭あるんだ。ぜひ、写真撮ってくれないか!!」
「あの……僕たち一眼とか使ったことないんですけど」
「もうコンパクトカメラでいいでしょ、この際」
「こんなカメラ装備で大丈夫なの?」
「大丈夫だ、問題ない」
白衣の姿でベタすぎる回答する山本。
「すみません、どっかで聴いたセリフです」
「気にするな」
文化祭の日が近づいてくる。拓哉たちのテーマは「常識を疑え」だった。その写真は狛犬ならぬ駒キジなのだ。京浜東北線南浦和駅前にある氷川神社の駒キジである。探せばあるもんだ。洋子はインターネットで調べて日曜日に上野東京ラインで赤羽まで行き、そこから京浜東北線に乗って南浦和までやってきた。逆に土日が仕事の拓哉は近所の神社を撮りまくった。
こうして文化祭の日がやってきた。先生たちはうなる。
「これはすごい……」
ただ凄いのではない。キリスト教聖職者はもっと宗教的に不寛容だと思っていたのだ。だからいろんな意味で「常識を疑え」というテーマにしたのである。
「お前たち才能あるな。いっそのこと写真コンテストに応募してみないか?
「え?」
「もちろん、暇な時でいいの、けっこういい線行ってると思うからこの写真とこのテーマ」
三人は困惑した。
「セミプロ高校生に勝てるわけない」
拓哉は当然の意見を言った。だが……。
「大丈夫だ、問題ない」
三人はこのセリフに何も言い返せなかった。
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