第七話

 スターレット資格の提唱者加藤神父は史上最年少の聖職者誕生の報道に驚き、そして怒りを覚えていた。なぜ父が働かず子が働くのか。重大な問題だとして資格運営委員会に問題提起した。


「スターレット資格は子供をダシにして親が楽をするための資格ではない!」


 「高校生にしかできないことに専念すべきである」


 加藤神父が言う。資格運営委員会は大いにもめた。川本牧師が即座に反論する。


 「父親だって働けない人がいるんです!」


 そうだ、そうだという声が広がった。


 「聖書研究会の成果を見たいという受験生だっていっぱいいるんですよ。あなたは高校生の努力を無駄にするつもりですか!」


 委員会はもめにもめ最終的には選挙となった。その結果……。


 「二票差でスターレット資格の年齢引き上げは否決とする!」


 この声にプロテスタント側は歓び、カトリック側は戸惑った。


◇◆◇◆


 初夏のある日、川本は伊藤に伝えた。


「拓哉君。君は聖職者高校生のまま働けるよ」


「それと育休代替臨時職員に移行したから。はい、雇用契約書」


「ありがとうございます!! 川本牧師!」


 二人は抱き合って喜んだ。


◇◆◇◆


 翌週、伊藤拓哉の洗礼を受けることに全会一致で決まり、八月の雨の日に伊藤拓哉は洗礼を無事受けた。


 「これで大学、大学院と進学したら君は北部バプテスト派の中核を担う牧師となる。期待しているよ」


 「はい」


 「受験勉強も手伝うから」


 「ありがとうございます」


こうして夏休みが終わって行った。


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