第四話
スターレット資格取得後にやらなければならない事があった。それはバイトの許可である。自分の通う県立東戸塚高校は就職希望者がほとんど居ない。大学進学率六〇%、短大進学率五%、専門進学率二五%で残りは浪人である。と言っても大学進学者含めて進学先はニッコマがやっとという感じである。それが高校受験偏差値六〇の高校の現実でもあるのだ。こういう学校を別名「自称進学校」とも言う。そしてこういう自称進学校はバイト禁止なのだ。特別な家庭の事情が無いとバイトなど学力低下の原因として禁止され、ばれたら停学である。拓哉の場合家庭の事情というものがあるので許可は得られると思っていた。問題は普通のバイトではなく聖職者資格スターレット資格を持って働くという部分にある。拓哉は校長室に入った。
「失礼します」
「入りたまえ」
拓哉は緊張して校長室に入った。
「まあそこに座って」
拓哉は座ると父の離職票とスターレット資格証を見せた。
「たしかに」
「別にね、高校生の聖職者のバイトは前例がないわけじゃないの。仏教寺院のお手伝いをするといった子も居た」
「それでは」
「ただし!」
「一つ、学校内で宣教を一切行わない事! 一つ、宗教上を理由に修学旅行へ行かないと言った反学校的行為を取らない事! 一つ、学業に専念する事!」
「……」
「君は八景学院大のスカラーシップ希望だね? まことに結構な事だ。うちの高校からも毎年四〇人規模で進学する学校だ。そこはいい。問題は宗教だ。本音言うとね、君のバイトを認めないとそれはそれで宗教団体から抗議を受ける。それはそれで避けたいんだよ。私も後1年で定年だしね。言っていること分かるね?」
「はい」
「じゃこの紙にサインして。判子も」
拓哉は言われた通りに署名して判子を押した。
「何も、問題を起こさないでくれよ……」
「はい……」
(何が教育者だ。サラリーマン公務員め!)
拓哉はにこにこ笑った。
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