第三話

 スターレット資格試験の日がやって来た。高校一年なのに高校三年生用の世界史をくまなく勉強した。しかし正直言って自信が無かった。史上最年少の受験生として話題にもなった。聖書百点はチャットノベルである「旧約ラノベ」と「新約ラノベ」で徹底的に勉強し、重要人物を塗りつぶして覚えることによって聖書の基礎知識をものにした。世界史出題範囲は古代史、中世ヨーロッパ史、近世ヨーロッパ史でキリスト教に関する事項だけ出題される。部活も一切せずに受験勉強に打ち込んだ拓哉は余裕であった。そして……。

 合格発表通知が来た。この時東京キリスト教新聞の取材も受けた。「史上最年少の合格者!」と大きく見出しに載った。このニュースはニュースバリューがあるのか瞬く間に一般のニュースでも伝えられた。翌日拓哉が学校に登校すると拓哉を見るたびに周りがざわついた。同時に学校の誰もが拓哉の家庭環境を知る事となった。


 「よう、牧師!」


 こうしてあだ名は牧師になってしまった。


 ある日、教会に行と史上最年少合格のパーティーが開かれていた。


 「おめでとー!!」


一斉にクラッカーが鳴る。


「ありがとう……」


牧師の川本はさらに別のものを用意していた。


「実はな、ペット霊園兼宿坊管理人の高松さんが産休に入るんだ。そこで……君に土日だけペット霊園兼宿坊管理人になってほしいんだ。史上最年少のペット霊園兼宿坊管理人になる。嫌かい?」


「はい! 喜んで!! そのためにこの資格を取ったんです!」


 「八景学院のスカラーシップ対策の事なら大丈夫。世界史はもう十分合格圏だろうから今度は英語を勉強しような。現代文も基本的な出題だから大丈夫だ。なにせ、僕も八景学院神学部と八景学院神学研究科を出た牧師だからね……。後輩の指導は全面的に協力するよ……」


 ちょうどこの時、父の失業保険が切れた。僕の収入で学費を払うことになるのである。

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