第十六話

 加藤は所得に関するプレスリリースを行ったが、この収入の九割は宿坊からの収益から給料に廻したものである。したがって宿坊の空きが生じるとどんどん赤字が生じてしまう。宿坊は一泊素泊まりで二五〇〇円である。しかし特定の切符を持っている方は会計の場で現金キャッシュバックを行うことを加藤は提案した。その切符とは『青春二二きっぷ』当日有効券を持っている人には一泊につき二百円をキャッシュバック、ジャパンレールパス、北海道・東日本パスを持っている方は1泊につき百円のキャッシュバックを行うというものである。

 素泊まり1泊二五〇〇円である。宿坊はお金に余裕がない者が利用するのは明白である。しかも宿坊利用促進のためにサイトで値引きするのではなく、有効券を持っている方に即日キャッシュバックをするというものである。少子高齢化で人口減に苦しむローカル線を救うために鉄道利用を推進するという意味も持っていた。逆に駐車場料金は一泊千円を取った。

 障害者手帳を持っている者にもキャッシュバックを行った。キャッシュバックは1泊につき百円となる。つまり『青春二二きっぷ』当日有効券を持つ障害者は一泊につき三百円のキャッシュバックを受けることが出来、実質一泊二二〇〇円で泊まることが出来た。

 もともと超少子高齢化に苦しむ日本の切り札は「観光立国」である。長期滞在でお金のない外国人観光客に対しては特に好評だった。また「二二きっぱー」にとってもこの料金は魅力的である。また、駐車場代を取るという事はなるべく車での利用は控えてくださいと言う意味にもなる。これは墓参り客にも同様の事が言えた。

 加藤神父の案は仏教界の宿坊でも採用され、宿坊におけるサービスのスタンダードになった。格安素泊まりとすることで既存のホテルや旅館との棲み分けも行った。

 加藤神父の提案は鉄道業界にとってまさに福音となった。また長距離移動の二二きっぱーは特急・新幹線が原則使えないので普通列車グリーン車に乗る傾向が強かった。このため主要路線だけでなく様々な路線にグリーン車が連結されるようになり、交通革命をも起こすことになったのである。

またキャッシュバックをきっかけに会計はもちろん業務を適正に行っているかどうかの巡回調査員も配置することとなった。ペット霊園兼宿坊管理者の業務が楽な業務である事をいいことにサボる輩が残念ながら少数であるがいる。不正会計もまれにある。そこで巡回調査員を配置し、業務を適正に行っているかどうかをチェックする。残念な事に巡回調査員の調査結果で懲戒解雇に至るペット霊園兼宿坊管理者は少なからずいる。ペット霊園兼宿坊管理者へ懲戒解雇を言い渡すのは加藤をはじめとする神父の仕事である。

 また一発退場というほどではないが悪質なサボりを神父が警告するときもある。警告するときは悪魔の絵が入ったカードと誓約書を渡すことになる。悪魔の絵は悪魔が便器に座った絵という変わった絵であり、この悪魔をベルフェゴールと言い怠惰を司る悪魔である。この「ベルフェゴールカード」を三年間以内に三枚をもらった時点で懲戒解雇となる。

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