第4章

4-8

 碧のお誕生日なので、皆で食事にいってお祝いしようとなったけど、私は、お肉買ってきて家でやった方が゛安く済むし、お肉がいっぱい買えるわと言って、家でやることになった。碧もその方がいっぱい食べれるからそれでいいよと言っていたので。


 その日は、お母さんと買い物に行って、ステーキ用のお肉を、お父さんとお母さんは赤身が良いというので、あえてランプ肉を選んだ。それから、私は、碧の好きなポテトグラタンを作るつもりだった。


 お肉は焼肉用のコンロで、最初に碧のとお父さんのを焼いて、とりあえず、おめでとうの祝杯をしてから、私達のを焼いていた。先に、食べていた碧が


「うまい! 肉はうまい」と、ほおばっていた。お父さんもビールを飲みながら、ゆっくりと食べていた。



「碧 野菜サラダも食べるのよ」と、お母さんが言うと、しぶしぶなのか手を出していて


「お母さん もう1枚あるんだろう 焼いてよー」


「あのねー 味わって食べてよ 高いんだからー さきに、ポテトグラタン食べる? ミミちゃんが碧の為にって、作ったのよ 直ぐ焼けるようになってるわ」


「えぇー うーん 肉 先じゃぁーダメかなー」


「いいわよ お好きなように・・ 碧は私の愛情なんか どうでも良いんだからー」と、私は、少し、スネたように言うと


「ミィ姉 そういう追い詰めたような言い方すると 嫌われるぞ」


「誰によー この偏屈がぁー どっちにするのよー」


「うぅー グラタン」


「よぉーしー じゃぁ 可愛げのない弟の為に焼いてきてあげる」


 焼きあがったグラタンを食べながら、碧は私のほうを伺って


「おいしいよ グラタンだ」と


「でしょ? 愛情 感じた?」


「あっ あぁー 胸に突き刺さるようだよ」と、その時、私はレタスを碧に投げつけていた。


「おいおい 美海 乱暴だなー」と、お父さんがお母さんにビールを継ぎながら


「だってぇー なんか 碧って 私には、素直じゃないからー」


「まだ 甘えてるんだよ お姉ちゃんに もう二人とも大きくなってしまったからな ところで 美海は大学はどうなんだ?」


「うーん オンラインばっかーでね つまんない」


「だろうな 美海の将来の目標は何だ?」


「私ね 農業とか漁業関係の人達に役に立つこと 例えば、システムで効率的な作付けを決めるとか、あと畜産でも日本は高い飼料に苦労してるでしょ。だから、ロボット機械を使って、遊んでいる野原とか河川敷とかに牧草を植えて安い飼料を作るとかさー そんなのが夢なんだぁー ねぇ お父さんの会社は工業機械の部品でしょ 農業用のは、やってないの?」


「うーん 今のところは お得意様の指定のものだけだよ まぁ 依頼があれば農業用でも考えるけどなー」


「そうなんだー だけど 工業もいいけどね 私は・・ 日本はもっと農業、漁業のこと考えなきゃぁ 先行き 不安なんだよネ もっと そういうこと考えて、やってくれる人が増えると食べ物も安くなって日本人の生活も楽になると思うんだよねー そういう技術があるんだよ 日本には だけど、農業系はお金になんないからやらないんだよ」


「ミミちゃん ちょっとー 批判してるのー? お父さんの会社」


「いゃ いいんだよ 美海がそんなこと言うのって初めて聞いた いいんじゃぁないか そういう夢って だけど、美海のは まだ 漠然としているから、もっと、具体的になったら、お父さんにも教えてくれ いっぱい勉強してな 美海の目指しているものは素晴らしいことだと思うよ」


「お父さん ありがとう 私 頑張って・・今は、学校にも行けないけど」


「そうだ でも、これからのが学生には頑張ってもらわないとな 碧もな」


「うわぁー- こっちに回ってきたかぁー 肉 もう1枚焼いてよー」


「お前は 真面目な話をしてるのに 聞いていたのかー」と、私は、またレタスを投げつけていた。


「聞いてるよー だから この肉も畜産農家の人に感謝しながらネ」


「そういいながら 碧は いつも、一気に食べてしまってー」と、お母さんが責めてると


「ちがうよ 肉は冷めないうちが一番うまいんだ ミィ姉のグラタンだって、そうだよ 一気に食べるのは、作り手に応えるためだよ だからネ 熱い料理は日本とロシアの貴重な文化だよ できるだけ温かいものをと工夫してきたんだ」


「へぇー また 碧の勝手な理屈が始まった」と、ようやく残った半分の冷めたステーキを食べたけど、やっぱり、碧の言うのもわかったのだ。

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