宿題は家でやってきましょう。
@haman7
7人
「ああ、お前たちがクラスにこうして放課後残された意味が分かるか?」
バシーンと教科書でたたかれた教卓が激しく音を立てる。
僕らは息をのむ。
僕ら7人はこの教室で昨日の国語の宿題と向き合っている。むろん宿題をやってこなかったからだ。三沢、河野、緒方、鹿島、ぼく、女子の中村、田中。7人。
「宿題を忘れたからだと思いまーす」
三沢は調子ものだから、こういうときも空気は一切読まない。
こわもての教師、野沢はこういうふざけた態度を最も嫌うのに。
「怒られるとわかっていたということか?それは?」
予想通り再び罵声が飛んだ。
「先生はコウネンキってやつですか?」
三沢には怖いものというものがないのだろうか。
「ふざけるなキサマ!!」
再び憤激が飛び、端っこに小さくなっている中村が泣きそうになっている。
それを見て、野沢はふっと息を吐いた。
「今日は終わるまで帰さないからそのつもりで宿題をやれ!全員が終わるまでだ!連帯責任だ!!」
「ええ!それじゃファンファンイカ娘がリアタイできない」
アニメ好きの緒方が焦った様子で口にする言葉を、野沢はスルーした。
そのまま黙って椅子に腰かけ、こちらをにらんでくる。
「お前たちは、俺のクラスでもほぼ下の方の成績だ。このまま見過ごすわけにはいかない。必ず今日の国語の宿題、たった1枚だけだぞ?4問だ」
「4問って小さい問題入れたら10問以上あるじゃないですか」
三沢少し黙ってくれと思うが、こいつには読める空気がないから仕方ない。
「とにかくこれが終わるまでは絶対に帰れないからな!だいたいこれは昨日の宿題だぞ!」
「先生!僕は昨日たまたまひいばあちゃんの葬式だったから・・・」
「鹿島!葬式じゃなくてもいつもお前は宿題をしてこんじゃないか」
鹿島はばれたかという表情で、問題をじいっと見た。
なんとか終わらせようと僕は宿題のプリントをじっと見る。
そこに内線が鳴った。
野沢がとる。
「え?ガラスが割れた?1年ですか?、ああ、わかりました!!いますぐ」
受話器を置くと、こちらをじろっとにらむ。
「お前ら!ちょっと離れるが絶対に終わるまでに帰るなよ!帰っていたら明日も居残りだからな?」
急いで出ていく野沢を見送ると三沢が急に笑い出した。
「よっしゃ!帰ってゲームしよう!」
「冗談言わないで、三沢!あんたのせいで明日も居残りだなんて絶対嫌だからね!」
田中は女子の中でも頭はいいはずなのに、国語は超苦手だ。
「あたしの友達待ってんだから!はやくやってよ!」
「そうだよ・・・」
中村も小さい声でいう。
「くそ」
三沢はめんどくさそうに再び座った。
「あのさ、一番のこれ漢字でしょ?誰か黒板に書いてくれないかな。僕漢字苦手なんだ」
ずっと黙っていた河野がふいに声を出した。
「嫌だよ、野沢帰ってくるぜ?」
三沢がそういうと、河野はふんと笑った。
「ガラス割ったの、1年の角屋だろ?アイツ絶対にげてっから。見つからなくて野沢きっといつまでも帰ってこないよ」
「そうね。じゃあ私がここ書くわよ?」
田中がつかつかと進み出て黒板に「封筒」「女装」と続けて書いた。
「ちがうだろ!草を抜くほうだろ?庭の除草をするだぞ?」
鹿島がふふっと笑う。
「あ、そっか、私ホントに漢字苦手なのよね。言葉ってほんとにわからないのよ」
「数学はお前この前の中間98点だったろ?」
河野が聞くと
「そうなの。でも文章問題が出るとものすごく時間がかかる」
と田中は頭をかく。数学の成績がいいことは否定しないのか。
「嫌な奴!このガリ勉」
「仕方ないじゃない。うち開業医なんだから、しかもつぶれそうな開業医。私しか跡継ぎいないんだもの。医学部って難しいのよ?」
「知るかよ!頭のいいヤツはいいこって!」
三沢が毒づくが、田中はしらんぷりを決め込んだようだ。
「ガラスって理科室かな?」
三沢が急に言い出す。
「音はしなかったよな?割れる音」
「そうだな?でも理科室って怖いよな?」
河野が少し低い声を出した。
「なんだよ…噂?お化け?ばっかじゃねえの?」
三沢がけなしてくる。
「なんだっけ?理科室の奥の幽霊?噂でしょ?」
「そうだけど、気持ち悪いっていうよね?」
鹿島がめんどくさそうに答える。
「あの・・・やめてくれないかな。わたしオカルト苦手なのよ。フィクションでしょ?そんなの誰も見ていないし、証拠もないわ信じる価値もない」
田中が言う。
「ああそうだな。うん。理科室か」
三沢は何か知っているようだ。
「この物語のやつさ。1番だよ。ほんとに意味わからないよな」
緒方が突然口を開く。
「有名な話じゃないの。ごんぎつねよ?」
中村がいうと、緒方は「そうじゃないんだよ」という
「ごんは、食べ物をずっと運んできててさ、最後撃たれたんだろ?」
「そうだよ。悲しいよな」
三沢が笑いながら言う。
「違うんだよ。ごんは結局、自己陶酔じゃないか?って思うんだ」
「緒方、お前伊達に図書館のラノベほとんど読破しただけあるな?すげえ自己陶酔とか!よく言えるな?」
三沢がさらに茶化すが緒方は気にも留めない。
「俺なら、なんだこのきたねえきつねってなるけどな」
すごい発言にみんな「えっ」となる。
「こええよ、サイコパスかよ緒方」
鹿島がたまらず声を出す。
「だって食べ物をもらって喜んでもらえる前提なんだぜ?こっちには知ったことじゃないじゃないか」
「だよなあ?よし、ここの気持ちは、きもちわるいって書くか!」
三沢が本当にそう書いている。
しかし、さすがにまずいと思ったのか、しばらくぶつぶつ言って、その答えを消してしまった。
「まあでも、受験ってさ?求められる答えを書くってことだからさ?ここは常識的なことを書くのが正解なんだよ。世渡りってやつ?」
鹿島がふふんと笑う。
「さすがに忌引きで親戚をほとんど死滅させただけのことはあるよ!鹿島!」
三沢が茶化すと、鹿島は黙り込んだ。
「次のこの説明文?意味が分からないわ。こういうの大嫌いなんだけど。これやるのが嫌で今回忘れてきたようなもんだわ」
田中はぐりぐりと回答欄に書いたものを消しゴムで消す。
「この作者?斉藤?誰なんだろうな?すっげえよな?えっらそうにさ、国際社会においてのなんとかかんとかって言われても、俺には関係ないっての」
三沢がガハハハと笑う。
「関係ないことを学ぶのが、勉強じゃないのよ…」
中村が小さく言うが、三沢には聞こえたろうか。
「だいたい、作者の言いたいことを20字以内とか?指定するくせに、たまに答えは10字くらいの時あるでしょ?もうちゃんと文字数は指定してほしいわ」
数字にこだわる田中にはこのあいまいさも我慢できないらしい。
「とにかく埋めとけばいいんだよ!今日は宿題をするのが大事で、答えをきちんと出せとはいわれてないだろう?」
鹿島がいうと、中村は「それもそうね」と再度さっき書いていた文字を書き始めた。
「でた!古文!!」
「古文ってなんでこんな、わけわからない言葉を理解させようとするのかしらね?」
田中はもう疲れた表情である。
「でもこれで一応終わりだよ。漢字、物語、現代文、古文。今回は漢文がないだけましだよ」
鹿島がそういうと、田中はひらひらと手を振った。
「漢文はなんだかプログラムみたいで面白いわ。レ点とか面白いじゃない?あれだけは私わかるのよ」
「俺もアニメになったのなら古文は得意だぜ?平家物語とか」
緒方はどこまでもアニメ中心だ。
「源氏物語とかはエロいところは出てこないから、わりと絞りやすいぜ?」
エロ…女子が少し嫌な顔をする。
「いや、ごめんそんな、、ハハハ」
「三沢?進んでる?ちゃんとやれよ?」
隣をみると三沢はふーとかはーとか言っている。やる気がまるでない。
まあいいか。全員とにかく解けばいいんだから。
しばらくすると、野沢が帰ってきた。
「お!お前たち!まじめにやっているな!」
「角屋すぐ見つかったんですか?」
三沢がまた茶化してくる。
「今回は角屋は関係な…お前たちには関係ない・・・だろう」
「終わった!!先生」
黙々と解いていた河野が最初に終わったようだ。
プリントを野沢に見せる。
「ああ、よし、お前はバスケ部だったな?」
「もうすぐ新人戦なんですよ!早く行きたいんで部活!」
「そうか、よし、お前はもう帰っていいぞ」
「よっしゃ!!」
「もう宿題はしっかり家でして来いよ?」
「は?嫌ですよ」
空気が凍る。そこは「はい」でスルーしたらいいじゃないか。なんでそこで突っかかるんだ河野。
「俺は、こんどの新人戦にかけているんです。必ず優勝して、来年の中体連でも優勝して、必ずバスケの選手になるんです!高校だって強いところから推薦受けないと。だから宿題なんてしてる時間ないですよ」
「宿題は宿題、部活は部活だろう?」
「何言ってるんです?部活ですよ。部活で頑張れば高校に行けるんですよ?俺は勉強とかできないから、部活で頑張るしかないです」
「お前なあ・・・」
「俺は毎日部活終わったら家で筋トレして大変なんですから」
「だが、もし足をケガしたら?運動に情熱を失ったらどうするんだ」
「そうなったらそのときでしょう?でも中学校のうちはそんなケガとかしませんし、俺、誰より練習してスリーポイントうまくなったんすよ」
「だから宿題はしなくてもいいと?勉強はおろそかでもいいと?」
「そうですね。だいたいこんな、古典とか何の役にもたちません」
「何の役にもか。逆に言わせてもらえば、バスケのシュートの技術なんぞ社会生活にはほとんど役に立たないぞ?」
「そんなことはありませんよ。脚力、瞬発力、なんだって役に立ちます。そうだってコーチが言ってましたもん」
「ああ、そうか、まあいいか。だがお前が目指しているバスケの名門、南高の偏差値は高いからな?その無駄に思える古典でも頑張って点数を上げないとな?」
「う…。」
すっかり言いくるめられてしまったが、河野はぶんぶんと首を振る。
「いいんです。僕はちゃんと決めたんです。部活を頑張るんだって。部活で活躍して高校に推薦もらうんだって。だからいいんです」
「推薦も学力がないともらえないんだがなあ」
「でも僕には…僕の家にはそんな塾に行く金もないもん。部活っす。母も応援してくれているし、僕が頑張らないと」
「話の途中で悪いんだけどさ?」
田中が急に口をはさむ。
「河野さ?ごんぎつねの最後の問題、ごんを撃ち殺した時の茂吉の気持ちって何て書いたの?」
「え・・・俺は・・・やりきったな!だよ」
僕は絶句した。
「やり切った・・・ハハハすごいな河野!」
三沢が嬉しそうに笑う。
「ああもういい、部活に行け、河野。とりあえず頑張れよ」
河野は嬉しそうに走っていく。
残り6人。
次に立ち上がったのは、鹿島だ。
「祖父はちゃんと死んだんですよ?葬式にはちゃんと行きましたからね?」
「わかっとる。和歌山だろう?事務室でお前、列車の学割もらってたじゃないか」
「祖父とはほとんど会ったこともなくって、なんかラッキーだったですけどね」
「・・・ラッキー?休めてか?」
「そうですよ。なっかなか、ずる休みってできないから。ラッキーでした。旅行もできたしね。うちこんな感じでずっと不幸続きだから、なんか慣れっすね。もうなんか家族あんまいないから、もう使えない手ってのが悲しーかな」
鹿島は笑う。
「じゃあ、そんな鹿島の答えは?」
田中がにやにやしながら聞いてくる。
「ラッキーだなんて書かないよ。かわいそうなことをしたって書いたよ」
「へえ、あなたらしいわね。本音はすっかり隠して、わかりやすく表面をとりつくろう」
クスクス笑う田中に、鹿島はわかってないなあという感じの顔をした。
「うまくやって何が悪いんだよ?この世の中は不公平ばっかりなんだぜ?うまくいくと思ったらいきなりころっとさ?じいちゃんだって、いきなりあの世だよ。やってらんねえよな、ほんとマジそれ。努力してもなんになるんだろう」
「それはお前次第じゃないか?・・・よしいいだろう。お前は部活はしていないんだろう?」
「いーっす。河野みたいに頑張るとか無理っすよ。僕は楽にうまくいきていければいいんです。うまいことやって、ずるでもなんでもやったら楽なんだからいいじゃないですか?」
「そうか、そうだな・・・気を付けて帰れよ?」
次に立ち上がったのは中村だ。
「終わりました」
「…よし、これで十分だ」
「あの」
「なんだ?」
「いえ…あのさようなら」
席に戻ってまごまごしながら荷物をまとめる中村。
「お前も同じように書くんだな。かわいそうに」って。
ごんぎつねの答えは鹿島と同じだそうだ。
「は、はい。でも、あの」
「でも?」
「報われないのはいいと思います。報われなくたっていいんです。だからかわいそうですけど、ごんは満足だったと思います」
「報われないけど満足?」
「はい。あの次の説明文の問題も…国際社会において先進国が発展途上国から労働力や資源を搾取しているこれではいけない、みたいな内容ですよね?でもそれで正しいんだと思います」
「正しい・・・」
「世界はそれでうまくいくんですよ。誰かが我慢していれば、大多数が幸せなんですから。ごんは最後は報われなかったけど、茂吉の役にはたちました」
「大多数の我慢か」
「あの、私、これから弟を迎えに行かなくちゃいけなくて。昨日も…あの・・・お母さんがずっと荒れてて、うちお母さんと弟だけなので、その…ずっと荒れてるときはずっとじっとしとかないといけなくて、すみません宿題できなくて」
「重いよ!!中村!!」
三沢がからかってくるのを野沢はにらみつけて黙らせた。
「そうか。今日は宿題できそうか?」
「あの、はい、母は今日、はい、多分、病院に行くって言ってたし」
「気をつけて帰れ」
野沢は見送りながら少しため息をついた。
次に立ち上がったのは三沢だ
「おいおいまだおわらないわけ?」
田中は高らかに笑いながら野沢にプリントを見せる。
「ああ、ちゃんと書けているな。三沢」
「あたりまえじゃないっすか。俺サッカー部なんで…補欠ですけど、もう行かないと」
「お前はちゃんとできるのにな、なんでやらないんだ?」
ふいに野沢の質問に、三沢の表情が消える。
「関係ないっしょ?なんだよ偉そうに」
ぶつくさいう三沢に、野沢はあきらめたような表情をする。そして例の問題を見る。
「…お前の答えは…空欄じゃないか」
「だってわかんねえし。気持ちなんて。っていうかこの話気持ち悪いんですよ」
「気持ち悪い」
「他人の気持ちとか考えろってわからないですね。何言ってんの?ってなるっす」
「そうか」
野沢は腕組みをしてじっと三沢の顔を見る。
「あ、今更白状しますけど、あのガラス割ったの俺っす。先生にチクったのどうせ角屋でしょ?割れてますよーって」
「なんだと?」
「昨日、角屋とふざけてて割ったんす。でも誰も気づかないから、カーテンで隠れるところだったし。隠しとけばばれないなって」
「なんで今、いう気になったんだ?」
「ごんの気持ちってやつですよ。俺がやったんだって、言ってみたらどうかなって」
「なるほど。で?今どういう気持ちだ?」
「なんかどうでもいい」
「どうでも?ちなみにいうとな?あれがバレたのは角屋がばらしたからじゃない。あのガラスで怪我をした生徒がいたんだよ。お前の弟だ」
「え・・・うそでしょ?マジ??卓也が?」
「そうだよ。幸い軽い切り傷だったからばんそうこう貼っておしまいだったがな」
「卓也…のケガって俺のせい?」
「そうだな、昨日報告に来ていれば少なくともけがをすることはなかったな」
「あ、あの・・・卓也は俺の大事な弟で」
「弟だから困るのか?他人だったらなんとも思わないんじゃないのか?」
「弟は違うよ?だって弟だぜ?アイツは、ずっと病気して、ケガってほんとにたいしたことないのかよ!?」
「大丈夫だよ。そうか、じゃあ、帰ったら弟に謝るんだな。あと、お前はまっすぐ職員室に行きなさい。わかるな?本気にならないのも、何もかも茶化してしまうのもお前の勝手ではあるが、大事なものは大事にできるようにしないとな?」
「は・・・はい」
三沢は顔を青くして出ていった。
「終わったわ」
田中が終わってしまった。いよいよ僕だけになった。
「やっぱり国語って嫌い。数学みたいにきちんと答えが出ないの嫌いだわ」
「答えが出るのがいいのか?」
「そうですよ。数学は…円周率みたいにあいまいなものもあるけれどほとんど答えが出るでしょう?」
「なるほど。だから、この・・・答えもわからないなのか?」
「ゴンが目の前で死体になってて、その気持ちなんてわかりませんよ。でも銃をどの角度で狙ったのかとかそういうのは興味がありますね。あと火薬とか」
「お前は、美術部だったか?」
「ええ、でも幽霊部員ですよ。スポーツは嫌いだし、楽器はできないから、選択肢がなかったんです。でも医学部に入るには内申点とか?気にしないといけないでしょ?」
「だから美術部」
「美術って言っても絵とかほとんどやんなくていいから。友達が待っているので帰ります」
「ああ、だが、レオナルドダヴィンチの絵とか、俺もよく知らんが調べてみたら面白いかもしれないぞ」
「なんですか?それ詳しく」
「なぜ知りたいと思うのに国語は苦手なんだ」
「だって、物語とか、フィクション作り話ですよ?そんなもの意味がないもの」
「現実がつらすぎる?」
「はー?つまんないの。そういうのかっこいいんですか?大人って。上から目線で、うちの親みたい。いっつも上から上から。お医者様だから?先生様だから?」
「さあな。自尊心とかそういうのは俺にもよく説明できないな?」
「じゃあ、答えがあるのだけでいいです。まだ答えがあるものがあるうちは生きていけるわ」
ひらひらとさようならをして帰っていく田中。
「さて・・・お前は名前を何と言ったか?」
「僕ですか?もうちょっと待ってください、あとちょっとで終わるので」
「ごんぎつねの答えはどうしたね?」
「いなくなって悲しいと書きましたよ」
「そうか。じゃあなんでお前は泣いているんだ?」
「泣いて・・・・」
「俺は昔からな、霊感があってな?見えるんだ。いろんな見たくないものも何もかもな。だからわかるんだ。お前が誰かもわかるよ。俺は…この学校は実は2回目でな」
「悩みは人それぞれだろう?みんな悩んでいる。家のこと、自分のこと、何もかも嫌になることもある」
「うん」
「そういうことをちゃんと周りに話さないとな。後悔してもどうにもならんよ」
「うん」
「帰り道はわかるかね?」
「うん。この問題が終わったら帰ることにするよ」
「そうだな。それがいいな」
プリントがどこからか来た風で宙を舞った。
野沢はふうっと息を吐いて
ゆっくりと立ち上がった。
「もうああいうのは嫌なんでな。ちゃんとあいつらと話さないとな。ああ、明日、そうだな個別に詳しく聞いておかないとな、特に田中はあまりよくないな、あの子によく似ている」
教室には誰もいなくなった。
僕は、教室からは出られない。
宿題は家でやってきましょう。 @haman7
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