第14話 元Fクラス生の集い(佐咲寧々)

「お待たせ」


 私集まってるメンバーに声をかけると、茶化すような声が帰ってくる。


「Aクラスの空気はどうだった?」


「Fクラスの時より不味かったわ」


「うわ、余裕の態度。でも才能は優れてるんじゃない?」


「いえ、あの感じだったら直ぐに木下秀行君や秋庭幸人君も上に来れるわね」


 あの時の生き残りのクラスメイト三名+一名が今の私のパーティメンバー。

 木下君に、同じクラスだからと誘った秋庭君。

 ゴブリン討伐にまではご一緒しなかったが、

 

「私たちはー、無理かな〜?」


「ねー、才能も扱いづらいし?」


 紅林なおさん、岡本美樹さんの両名が頷き合う。

 どちらもSランクの才能と才能ランクこそ高いが、ピーキーすぎて使い道が非常に困難な類だった。


「でもなおちゃんのキャッチで二階層のトレント戦はいい稼ぎ場になってるじゃない?」


「それは前で木下君が守ってくれてるからだよぉ」


 と、この様にのほほんとしてるがダンジョンに入れば自ずとスイッチが切り替わる。


「まずはコア拾いだっけ?」


「Aクラスの座学では毒消しとしての役目もあると知れたわ。上の学年に上がってもまだ知れることがあると思うの」


「あれ、マジでクラス毎に内容違うのな。教科書から差別するとかマジで徹底的なんだな?」


「上位クラスに上がれないとろくに探索者として名を残せないのもクソだよね」


「ただのイジメだけじゃないというのも考えものよ。でも六濃君、全然余裕で捌くのよね? 私たちの攻撃」


 クラス対抗戦で徹底的に狙われるのにも関わらず、元クラス生に講釈を垂れながら余裕で回避するのだ。

 クラス毎の優位とか知ったこっちゃないとばかりに。


「あれ、上位クラス生の攻撃は下位クラス生に特効とかいう意味わかんない縛りもあるじゃん?」


「命中補正にも差があるのよ? なのに当たらないの。偶然を装うのにも無理があるわよ? 逆にこっちが自信無くしちゃうわよ」


「なのに全然上に上がんないんだもん。あれ、きっととっくに才能覚醒してるよね?」


「してると思うわ。Aクラスに比べてポイント変換レート95%OFFなのによくやるわってくらい稼いでるし」


「あれ、やっぱりレートにまで差があるんだ!?」


「私のクラスでスライムコアを交換するとTP100になるのよね」


「CだとTP50でも美味いと思ってたのにさらに倍とか舐めてんのかって感じだよな」


「それ言ったら六濃君、交換レート1/20であのポイントなんだよね?」


「ほんと、すごい人だよ」


 軍手をつけて毒草を引き抜き、スライムを寄せる。

 集まってきたのをスプレーで凍らせて釘バットで叩く。

 全て六濃君に教わった作業だ。

 

「そういえばこれ、どの授業課程にも載ってないのよね」


「あ、やっぱりそうだよね? 知っていたとしてもやりたがる人って相当限られるよ」


「ゴブリンの討伐法も画期的だよねー」


「元Eクラスの子に聞いたけど、穴掘ってスライムでプール作ってゴブリン落として石投げるやつも準備に時間がかかるけど、効率の良さだけはダンチだって聞くよ?」


「例のFに格下げされた子達ね? Cクラスに編入したんだ?」


「二階層を肉盾にされずに進めたのが新鮮だって言われて笑っちゃった」


「彼は今もそんな感じなのね」


「二学期が始まる頃にはDクラスとEクラスが消滅するんじゃないかって噂だよ?」


「あの人、教えるの上手なのよね。ライバルばかり増えて困るわ」


「思ってもないくせに」


 木下君の言葉に返事はせず、一定数のコアを集めて二階層に降りる。日課のトレントの果実のキャッチを終えたら三階層。

 三階層は長丁場になるのでコアの確保は必須だった。


「あった、月光花だ」


「幸先いいわね。蜜にする分はありそう?」


「コボルドを倒す方が早いかな?」


「シャーマンは手間なのよね」


「投擲のキャッチなら任せて!」


 紅林さんのキャッチは、投擲武器すらキャッチ可能だ。

 相手にとっては必殺攻撃なのに、武器を奪われるのだから、隙を作るのに貢献した。


 私達は六濃君の知恵で二階層すら武技すら使わず攻略して見せる。

 なおのキャッチはパッシブスキルなので回数の制限はないのだ。

 手間、というのは武技、魔法を封印して討伐するのが手間という意味である。如何に才能を扱わず対処できるかを優先させる。

 それが余裕につながるのだ。


「へへーん、なおの稼ぎのおかげで武器新調したんだぜ?」


 秋庭君が自慢するようにナイフを見せた。

 視界にキラリとナイフの刃先が光を照り返す。


「マチェット? こんな狭い場所で?」


 二階層は足場も見えないくらい光源となるモノがなく、洞穴が奥まで続いている階層。

 アリの巣と言われた方がしっくりくるくらい。

 所々に地盤を穿つ穴が開き、そこから漏れる月の光の場所に咲く花が月光花と言うわけだ。

 そんな場所でマチェットを振り回すと言って見せた秋庭に寧々は不安を寄せた。


「まぁみてなって」


 ナイフというには大振りなサイズ。

 秋庭君の才能は暗黒剣士。

 影を操り、体力を犠牲に致命ダメージを与える術と武技のハイブリッド。攻撃の隙は大きいが、活躍の機会は多かった。


「影縫い!」


 月明かりを背に、マチェットをかざして影を作り、それを進行方向にいるコボルドシャーマンに向けた。


「今だ、目を狙え!」


「成る程、そう使うのね!」


 私は石を拾ってこちらに向けて目を見開くコボルドシャーマンの目を狙う。Aクラスになった事で入った補正のおかげで安易ヒットさせられた。


「グァッ!?」


「ほいっ!」


 木下君のシールドバッシュ。

 後方に押しのけるのではなく、真上から叩きつけた。

 ジャンプしながらの攻撃である。

 上から叩きつけるのと、地面に叩きつけるので二重ダメージが入るので最近はこの使い方が多い。

 バッシュ系は武技でありながら回数系ではない。

 盾さえあればいつでも使用可能だ。その代わり、使用直後の硬直のデメリットがあった。


「せい!」


「ー〜〜〜!?!?!?」


 トドメはコボルドシャーマンの口に大量に投げ込まれた毒々しい料理。

 岡本さんの才能はポイズンクッキング。

 才能ランクこそBと低いが調合、料理の際に毒物が出来上がるデメリットの塊でしかないのだが、それらを保存することができる食糧庫があり、ポーター代わりに使えた。

 それ以外にも今の様に毒物を使ってのトドメなどに使える。

 相手が動けない状態ならば、美樹でも十分にレベル上げができた。

 クラスによっては見向きもされない才能だが、このパーティにおいて最重要視されていた。何せ重量制限なくアイテムを持って帰れるのだ。


「さっきの影縫いだっけ? 回数制限はないの?」


「ないぞ。あったら迷惑かけるじゃん。あとこれ、縛れる時間短すぎて戦闘に使いにくいんだよな」


「Cクラス生の中でならそうでしょうね」


「そ、だから今日という日にお披露目を残してたんだ」


「今後もお世話になりそうね」


 寧々達は順調にダンジョンを進んだ。

 その日獲得したポイントはAクラス生になったのもあり30万ポイントと大きく進み、追い抜き宣言したその日に凛華と並ぶ事になった。

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