第10話 妹のお見舞い

 新しいクラスメイトを全員Cクラス相当に押し上げて一ケ月。

 俺のTPは遂に1000万を超えた。

 正確には2500万。超えたのは1500万の壁である。

 初回踏破ボーナスに比べて二回目、三回目は俺向きじゃなかったからお上に献上したのだ。能力者の魔法威力向上とか、ダメージ倍化とか俺にはどうすることもできないしな。

 誰かに譲るのもお門違い。

 ありがたくTPにさせてもらった。


 あんまり目立たないように溜めてたが、誰がどう見てもポイントランキングの一位は俺であり、謎のハイランカーの噂が浮上しつつある。明らかにポイント量が多すぎる事が問題視されている。

 しかしポイント量が多いことは学園にとっては誇れることであるので咎められない。

 問題は二位と一桁違うってところだな。

 学年のトップ様か、はたまた同学年のトップ様かは知らんが俺の爆走についてくれる猛者が居るなんてなかなかやるじゃないの。

 でも四階層の荒稼ぎスポットは未だバレてないようで今んとこ俺がトップを独走し続けていた。


 そんなこんなで夏休み。普段学園の寄宿舎で過ごす我らが学園生が帰郷、又はダンジョンに居残り授業して羽を伸ばすかポイント稼ぎに勤しむかの選択肢が課される。

 俺以外のほとんどムキになってがダンジョンの探索に熱を出す中、俺の足は妹の入院する病院へと向かっていた。

 すでに病院側に電話で普通病棟への移動は伝えてある。今日はその確認と振り込みを兼ねての顔出しだ。

 月々1000ポイント引かれる計算だが、俺が最終学年まで生き残れなくても余裕で支払いできるポイントがある。なんせ俺は一切の装備の新調もなくダンジョンをクリアするだけでパワーアップするからな。


 ダンジョン踏破回数は実に五回。

 今まで獲得した能力はクリアする事に【攻撃無効】【恐怖耐性】の蓄積。既にどちらも<A>まで上昇済みだ。Aクラス生に因縁つけられても怖くないぜ!

 ジョブ補正ではランク別モンスターをコンプリートする毎に全く別の報酬がある。

 F【忍耐】、E【状態異常耐性】、D【自然治癒】、C【魔法耐性】等だ。

 これらがクリア字の状況に応じて蓄積。

 状態は獲得した時のランクからスタートし、今の俺なら

 【忍耐<C>】【状態異常耐性<B>】【自然治癒<A>】【魔法耐性<A>】って感じか。

 どうも上限はAのようで、実際にAランクからの攻撃を凌げるだけで御の字なので言うことはない。


 ただこれらは生徒手帳に記載されない俺だけに許されたスキル。それとも攻撃系、サポート系のスキル以外は登録されない仕組みなのか、そこら辺は謎のまま。

 おかげさまで度重なるイジメにも涼しい顔して投稿できる。

 あいつらが1番堪えるのは虐めた相手がピンピンしてることだからな。その無駄な努力がいつまで続くか見ものだぜ。


 それとBランクモンスターは二回目以降のボスモンスター、Aランクに至っては初回のみのボスモンスターだったのでこれらのモンスターは集めきれそうにない。

 枠に対して出現率が低すぎるため、そこら辺が埋まらないのだ。これが地味にしんどい。なので現状はこれで我慢している。

 そりゃ、使役者がモンスター頼りなのは仕方ないっちゃ仕方ないことなんだが、もっと前に出て力を振るうタイプが良かったぜ。

 それでも稼げるだけ御の字ではあるが。


 ◇


「おにぃ!」


「具合は平気か、明海あかり?」


「うん」


「本当は面会謝絶だけど無理言って面会させてもらったんだ。兄ちゃんな、学園でなんとかポイントを貯めてな。明海を一般病棟に移せることになったんだ。けど病気が病気だから個室で悪いな?」


「ううん、あたしは平気。でも無理してない? 個室はすごく高いって聞いたよ?」


「大丈夫、兄ちゃんの才能は稼ぐ上では最強だからな!」


「本当?」


 妹からの疑いの目。俺は肩をすくめて見せた。

 頭に手を置くと、随分と毛髪が薄くなっている。そういえば魔石が額にある為か何度も頭部を切開してるらしい。

 魔石は怪しく光るばかり。治療費はポイント換算して一億。

 まだまだ稼がなきゃいけなかった。


 それに「妹の無理してないか」は、食費を切り詰めてまで入院費に回してないか? って事だ。それを安心させる為に病院でもネットに繋げられる専用Wi-Fiと携帯端末を渡す。「俺も持ってるんだぜ、お揃いだな」と言えば、恥ずかしがりながらも受け取った。

 地味に嬉しそうだ。


「待っとけ、直ぐに兄ちゃんが特効薬を投与できるようにしてやるからな!」


「でも凄く高いって聞くよ?」


「なぁに、みんなには秘密のいい稼ぎ場があるんだよ。今んとこ俺しか知らないぜ」


「おにぃが言うんなら嘘じゃないんだろうけど……」


「六濃様、お時間です」


 外で待機してた看護師に呼び出され。

 こうして無理を言って頼んだたった五分だけの面会は終わった。

 妹に挨拶を済ませ、聞こえるように病院側に悪態をつく。


「病院ていうのは堅苦しくていけないね。家族の団欒を邪魔することしかしやしない」


「聞こえてますよ?」


「聞こえるように言ったんだ。TPは払った。次来た時も妹を今まで通りの実験動物扱いしてたら許さないからな?」

 

 俺にはポイントを稼ぐ能力があるんだぜ? と脅してみせる。

 しかしそれを人に向ければ捕まるのは俺の方。

 探索者が一般人より優れていようと、法の前には無力なのだ。

 それを知ってか知らずか看護師の声は淡々と事実を述べる。


「治療には誰かの犠牲が付き物なのですよ」


「そのから妹は外れたって訳だ」


「……貴重な存在でしたのに」


 お前ら人の妹をなんだと思ってんだ?


 手放すのは惜しいとばかりに妹をモノのように扱う病院側の態度にムカムカが治らない。

 何かに当たり散らしたい気分だが、残念なことに俺の体に攻撃的なスキルは何もない。


 そんな訳でゲームセンターでストレス発散。


 フルダイブ型のゲームでプレイヤーは探索者となってモンスターを狩る。ゲームセンター内でイチオシのゲームだったので遊んでみた。

 マップからあらゆる情報が入ってくる。

 ゲーム情報はモニタリングされており、周囲の客層にバッチリみられてるよも知らずに俺はいつも通りに動き出す。


 当然順位はビリッケツだ。

 さっさと変われと場外から野次が飛ぶくらいにお粗末なプレイに見えたらしい。悪いけど俺はスロースタート組なのよね。

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