あとがき
その後、私は号泣した。
わんわん泣いた。
正直中二にもなってこんなに大泣きするとは思っていなかった。私は家族が死んでも泣かないから、なんて言って無情を気取っていた自分が、とてつもなく恥ずかしくなった。
いや、姉が怖かったというのもあるし、ずっと姉が私の弱いところに気付いていたというのもある。
悔しいとか妬ましいとか恥ずかしいとか、色々な感情が、涙と一緒に溢れ出ていった。
ぶっちゃけ一階からお母さんが来るレベルだった。うるさいと怒られた。反省である。いや嘘、姉が悪い。なんで普段あんなちゃらんぽらんなのに、一気に剣幕が強くなるのだろう。ギャップ萌えどころの話ではない。
その後は、少々喧嘩した後の気まずさを帯びていたけれど、一日寝ればいつもの私といつもの姉に戻った。
小説は――うん。
結局、最後に一作投稿してから、サイトには行かなくなった。
ちゃんと、終わらせた。
勘違いしないでほしいのは、別に姉に感化されたわけじゃないということだ
私の意志で、ちゃんと終わらせようって思っただけだ。
たた書き始めて書き終えるまで、二か月の時間を要した。
いつもは二日で終わっていたのに――二か月である。
お蔭で痛感した。
姉の言った通り、物語を終わらせる、というのはとても難しいことだった。
最後まで書いて、何度も校正して投稿した。
今改めて見てみると、稚拙極まりない、ちぐはぐで展開もめちゃくちゃ、辻褄もあるのかないのか分からない、まあなかなかどうして酷い物語にしか見えない。評価こそいくつか来たけれど、なかなかどうして酷いものだった。自分でもそう思うし、読んだ人も、きっとそう思ったのだろう。ランキングなんて届きっこない。姉には褒められた後、改良の余地がある、と言っていた。褒め言葉は素直に嬉しかったけれど、遠慮しておいた。何となく、向いていないと分かったからだ。
いや――違う。
もう少しだけ、言葉に、文章に、向き合いたい、見直したい、ちゃんと読みたい、ちゃんと知りたい。
そして手にした言葉を遣って、ちゃんと物語を書きたいと。
そう思ったのだ。
それまで、取り敢えずは、物語とはしばしの別れだろう。
プライドを失った。
自信は砕かれた。
自己顕示欲を暴かれて、承認欲求を曝け出されて、白日の下にさらされて、もう取返しの付かないくらいにバラバラになった。
でも――それでも。
ちゃんと終えられて、良かった。
今はそう思うことができる。
エンドマークを打ち、物語を終えたあの瞬間の気持ちは。
きっと私には、言葉にできない。
(了)
ものがたりの条件 小狸 @segen_gen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます