第24話 テストの成績
翌朝にはベルティナは元気な笑顔を見せた。セリナージェの進言でエリオはベルティナに謝ったりしなかった。
それから三週間は別荘で過ごした。釣りをしたり乗馬をしたり買い物をしたり。
二度ほど泳ぎにも行ったがベルティナとエリオは岸辺で充分に楽しんだ。
イルミネが冗談で始めたピッツ語限定日や大陸共通語限定日はセリナージェとベルティナの語学力を大いにアップさせた。
こうして夏休みは五人でティエポロ領で過ごしベルティナから見てもクレメンティとセリナージェは大変よい雰囲気となっている。
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夏休みが明けた。夏休み前のテストの結果クラスは変更なしだった。
「え? まさか、俺、八位? うそだろう!!」
イルミネがショックで頭を抱えていた。
「そんなに自信あったの?」
ベルティナとセリナージェはもちろんピッツォーネ王国での三人の成績は知らない。
「イルは確かにあちらでは五位以下になったことはなかったな」
クレメンティが落ち込むイルミネに視線を落とした。セリナージェがイルミネの背中をさする。
「私も順位を落としたわ。イル。気にしないで」
「イルは負けず嫌いすぎだよ。勉強はレムに勝てたことないくせに」
「セリナとエリオはいくつだったんだよ」
イルミネが立ち上がった。
「私は今回は四位よ」
「僕だって五位なんて始めてだよっ!」
「なんだよ。やっぱり二人とも俺より上じゃないかっ」
クレメンティがついでに答えようと口を開ける。
「レム! お前のは聞きたくないっ!」
イルミネは片手の手のひらをクレメンティに見せてクレメンティをストップさせる。
「たぶん、予想外れてるよ……」
クレメンティは両手の手のひらを上に向けてびっくりのポーズをした。
「まさか? ベルティナ?」
エリオが先程から何も言わないベルティナの方を見た。ベルティナは平然としていた。
「ベルティナが一位以外取るわけないでしょう?」
セリナージェが両手を脇にして胸を反らして威張った。セリナージェにとってベルティナはいつでも自慢の幼馴染なのだ。
「でも、三教科もランレーリオに負けたわ」
ベルティナは大きくため息をついた。
「僕も三位なんて始めてみた数字だよ」
クレメンティもベルティナに負けないため息だった。クレメンティはピッツォーネ王国では常に一位だったのだ。
ちなみに六位キアフール、七位ロゼリンダである。
「学力ではピッツォーネ王国は負けてるってことかな?」
とてもがっかりしているエリオの姿はまるで国を背負っているようだ。
「それは違うと思うの。上位だけを見て判断するのはおかしいわ。もし気になるのなら両国の生徒百人ほど集めて共通テストをしなくてはならないわね。そうでないと何とも言えないわね」
ベルティナがとても大きな提案をした。
「さすがにそれは無理だよねぇ」
イルミネが苦笑いで即座に答えた。
「そうでしょう。だから私達の成績で国の優劣を語ってはいけないわ。ピッツォーネ王国は優秀な国だとあなた達を見ればわかるのだから。だって、テストはスピラ語なのよ。
三人共本当に素晴らしいわ」
エリオに微笑んだベルティナはエリオが個人のこと以上に気にしていることに気がついていたのだ。それに、ベルティナは『実は3人はスピラ語、ピッツ語、大陸共通語以外にも、話せるのではないか』と思っていた。それほど、他国語であるはずのスピラ語が流暢であった。
「そうだね。でも、やっぱり個人としても悔しい思いはあるよ。な、イル?」
エリオは頭をかきながらイルミネに振った。
「俺には聞いてくれるな!」
イルミネが口を尖らせて横を向いた。いつも笑いの中心であるイルミネの拗ねた姿を始めてみたベルティナとセリナージェは、少し驚いた。それと同時に、なんとなく安心して笑ってしまった。
ベルティナとセリナージェは今まではイルミネはいつも余裕があってすこしだけ大人な感じを受けていた。それがやっぱり同じ年なのだと感じられたのだ。
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