第22話 湖畔遊び
そこには女神のように立つ女性が二人いた。
エリオも動けなくなった。エリオの脇から顔を出してイルミネが二人を見た。
「あっれぇ? 二人ともいつ着替えたんだよ?」
「ふふふ、びっくりさせようと思ったのよ」
セリナージェがかわいい舌をペロッと出した。
「実は別荘から下に着てきたの。びっくりした?」
ベルティナも珍しくいたずらっ子の顔をしていた。そんなベルティナも眩しい。
「こいつらを見てよ。びっくりしすぎて動けなくなっちゃったよ」
「ふふ、ベルティナ。作戦成功ね!」
「そうね。アハハ!」
『パチン』
ベルティナとセリナージェは片手をハイタッチした。
「こいつら放っておいて行こう!」
イルミネが二人の手を掴んで湖へと向かった。そのまま水に入る。くるぶしまでも届かないほどの近くでパシャパシャと音をさせた。
「気持ちいいわねぇ!」
「ええ、とっても気持ちいいわ!」
イルミネが二人の手を離さないまま三人ではしゃいでいると、我に返った二人が走ってきた。
「イル! それは許せないぞ!」
「レム! イルを捕まえるんだっ!」
三人は追いかけっこを始めて随分と遠くまで泳いでいってしまった。セリナージェとベルティナは足を水につけたまま岸置いた丸太に座り、メイドから日傘を受け取りクルクル回しながら三人の様子を見ていた。
戻り途中で二人の様子に気がついたイルミネが手を振ってきたのでセリナージェもベルティナも手を振る。それを見たクレメンティがブクブクと沈んでいき、エリオがクレメンティを助けてイルミネが笑っていた。
復活したクレメンティはイルミネを沈める。エリオはクレメンティを手伝っていた。
その様子を見ていたベルティナは少しだけ気が遠くなった。
だが、三人が岸まで戻ってきた水音で我に返った。
「喉乾いちゃった。メイドさんにもらってこようっと!」
イルミネがとっとと岸をあがってしまった。クレメンティがセリナージェに手を伸ばす。セリナージェは日傘を持ったままクレメンティの手を取り二人で膝上ほどのところまで入って行った。エリオはベルティナの隣に座った。
「三人とも泳ぎが上手なのね」
「ああ、子供の頃から泳いでいるからね。ベルティナは泳げないの?」
「試したことがないの。顔を水につけることが怖くて。セリナは少しだけ泳げるって言っていたわ」
ベルティナは足を水にバタバタさせていて水音をさせた。ベルティナもエリオもなんとなくそれを見ている。
「そうなんだ。ピッツォーネ王国の王都は湖の側なんだよ。王城は湖を背にしているんだ」
「まあ! ロマンチックなのね」
ベルティナは目をキラキラさせてエリオを見た。
「ハハハ、そうだね。朝日の時間はとても美しいよ」
「エリオは朝日の時間に王城と湖を見たことがあるのね。きっと雄大なのでしょうね」
「え! あ、うん。湖から見たら雄大だよ。夕日もキレイなんだよ。湖も真っ紅に染まるんだ」
少しだけエリオは慌てていたがベルティナは気が付かない。
「ステキねぇ」
「あ、あのね、ベルティナ」
「うん?」
「今日のベルティナもとっても、その、ステキだよ。似合ってる。うん、かわいい」
「う、うん。ありがとう」
ベルティナも水着を褒められるのは照れてしまう。
「そろそろお体を冷やしすぎてしまいます。一度お上がりになってくださいませ」
「わかった」
メイドに声をかけられてエリオがすっと立ちあがるとスッとベルティナに手を伸ばす。ベルティナは頬を染めたままその手をとった。ベルティナが立ち上がってもエリオはその手を離すことはなく二人は手をつないだままメイドの用意してくれたシートまで戻った。
〰️
昼食に合わせて屋敷から温かいスープとサンドイッチが届いた。少し冷えた体に染み渡る。
「私も少し泳いでみようかしら?」
「セリナが泳げていたのっていくつの時なの? 本当に大丈夫?」
ベルティナはとても不安でセリナージェの腕に手を置いてセリナージェの目をジッと見た。
「七歳よ。お兄様に教えていただいたの」
マイペースなセリナージェはケロッと答える。ベルティナの心配があまり伝わっていないようだ。
「俺たちがいるから大丈夫だよ。少しだけやってみたら?」
「でも、笑うのは禁止よっ!」
セリナージェは一番笑いそうなイルミネを睨んだ。
「セリナを笑ったりするもんかっ!」
セリナージェはもちろんクレメンティが笑うなんて思っていない。
「セリナ。変な前振りやめてよ。俺、もう笑いたくなっちゃったよ」
イルミネは本当に笑い出した。
「もう! まだ、何もしてないのに!」
セリナージェの頬が膨れるのを見てみんなが大笑いした。
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