第13話 サンドイッチ
今日のサンドイッチはハンバーグが挟んであったり薄くスライスされた肉が挟んであったりととてもボリューム満点だ。野菜も一緒に挟んであるので全くしつこくないのでいくらでも食べられそうな気になる。
「すごい……」
「…………」
「うまっ!」
三人はそれを夢中で食べた。
ベルティナとセリナージェは三人のその様子をニコニコと笑顔で見ながらの二人はゆっくり味わっている。
三人の食欲が充分に満たされようで飲み物をゆっくりと飲み始めデザートのフルーツを口に運んでいる。
「今日のお料理はねぇ、ベルティナが作ってくれたのよっ!」
三人の満腹を待ってセリナージェが発表した。
「「「え?!」」」
当然のように料理人が作ったと思っていた三人は目をクリクリに見開いた。
『三人ともそんな顔でもかっこいいのね。美形ってすごいわ』
ベルティナは素っ頓狂なことを考えてふと我に返り自分に苦笑いした。そしてセリナージェの言葉に言い訳する。
「セリナも朝から手伝ってくれたじゃないの。料理長もね。みんなで作ったのよ」
「もうっ! ベルティナったらっ! 本当に真面目過ぎるわ。
いいじゃない。メインはベルティナなんだから!
ベルティナが作ったでいいのよ」
「いや、セリナも一緒だったんだろう。二人ともありがとう。すごくうまかった」
クレメンティはすかさずセリナージェも褒める。
「うんうん! 俺たちの好みをわかってくれてるって感じだった。ホントに美味かったよ。俺、肉大好き!」
「イルはお野菜を一緒にしなかったら、お肉だけ食べそうだものね。時々、野菜をレムのお皿に乗せているのは知っているのよ」
ベルティナがお姉さんのような口調でイルミネをからかう。
「バレてたかっ! ベルティナ。レムは気がついていないんだから言わないでよ」
クレメンティがイルミネの頭をコツンと叩いてみんなが大笑いした。
「ああ、うまかったな。こんなサンドイッチ初めて食べたよ。二人ともすごいな」
三人のベタ褒めに二人は照れる。
そうしてしばらく話をしていたがイルミネが突然立ち上がった。
「なあ! 定番そうな、あれっ! やろうよっ!」
イルミネがベルティナとセリナージェの手を取り引っ張っていく。エリオとクレメンティも慌てて追いかけた。
五人はストックの木の根本まで来てベルティナの手をエリオが、セリナージェの手をクレメンティが取った。五人で手をつないだまま木の幹を囲う。あまりの定番に五人はクスクス笑いが止まらない。エリオとクレメンティの手がつながれば成功だ。
「届いたぁ?」
「「まだぁ!」」
男の子三人が声を掛け合う。イルミネはベルティナとセリナージェの手を少しずつ離す。
「届いたぁ?」
「「もう少しぃ!」」
イルミネの手はもうベルティナとセリナージェの指先しか握っていない。
「「届いたぁ!!」」
五人は大笑いしながら手を離してシートまで戻った。まるで小さな子供になったみたいで純粋に楽しくて笑えた。
それからまたしばらくゴロゴロしたりおしゃべりしたり、ゆっくりとした時間を過ごす。
「こういう時間っていいな……」
エリオが寝っ転がったまま背伸びをしながら呟いた。
「そうだな。俺たちはあちらじゃなかなか、なぁ〜」
イルミネは座って背伸びをした。
「うーん。でもあちらでも、こういう時間がほしくなるなぁ……」
クレメンティは大きく開いた膝を抱えてどっしりと座り王都を眩しそうに眺める。
ベルティナとセリナージェは貴族子息ならではの忙しさがあるのだろうと察する。特にクレメンティは公爵令息だ。帰国すれは忙しい日々になることは当然だろう。
二人は三人にこの時間を持たせてあげられたことを嬉しく思った。
そろそろいい時間になったので片付けを始めた。まだ少し日は高いが寮の門限があるからだ。
「夕日は見れなかったわね」
ベルティナはまだ明るい王都の町並みを見ていた。
「うん。じゃあ、また冬近くになったら来ようよ。それなら門限にも間に合うさ」
エリオが隣に並んで同じ景色を見ながらそう言った。
「また一緒に見ることができるかしら?」
ベルティナはその近い未来に思いを馳せる。なんとなく叶う夢のような気がして口角を優しく上げた。
「うん。絶対だよ。約束する」
エリオはベルティナの後ろ姿に約束の言葉を投げた。
「そうね。ふふふ、楽しみだわ」
ベルティナはその時近くにいたのがエリオだけで二人で約束したなんて思っていなかった。
そして、さらに後ろから声がかかる。
「本当にいい景色ね。来てよかったわ」
「ああ、とってもいい休日になった」
クレメンティは景色でなくセリナージェの笑顔の横顔を見ていた。
「レムにとってはぁ、特にねぇ」
クレメンティはイルミネに回し蹴りをしたがイルミネがヒョイッと避けて少し離れるとニヤニヤとしてクレメンティをからかう。二人は殴ったり逃げたり蹴ったり避けたり数手のやり取りをした。
すぐ隣にいたセリナージェはびっくりしている。少しだけ離れて様子を見ていたベルティナとエリオは笑っていた。
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