第5話 底
それから一年くらいたった頃だったと思う。
友人から、件の激カワ風俗嬢が亡くなったという聞いた。俺はその時いた、居酒屋で、「嘘だろ!?」と叫んでしまった。
友人によると、ボーナスをもらったから、その子を予約しようと思って、久しぶりにお店に電話したそうだ。「もういません」と言うから、「どの店にいるんですか」と食い下がると、「亡くなりました」と言われたそうだ。しかも、殺害されていたそうだ。急に店に来なくなって、飛んだと思っていたら、1年くらい経って警察が来たそうだ。殺人事件だということだった。週刊誌とかにも出てますから言いますが・・・ということで、色々教えてもらったらしい。
遺体は某湖の底に沈められていたが、日照り続きで水が干上がって、発見されたらしい。本来は見つからないはずだったが、警察曰く、仏さんの執念で奇跡が起きたようだ。そこから、DNA鑑定などをして、捜索願が出されていたAさんにたどり着いたらしい。
犯人も逮捕されていた。男女の三人組。団地の幼馴染みで、人の男を取ったということでトラブルになり、Aさんは恐喝されていたそうだ。
団地の屋上に呼び出され、処刑されそうになったが、女と揉み合いになって、突き落としてしまったそうだ。
それから、暴行を受け、金を無心されて、風俗で働いて金を作っていた。稼いだ金はすべて吸い上げられていて、3人は働かず遊び暮らしていたとか。しかし、他人に秘密をバラしたことが知られてしまい、殺害されたそうだ。
きっかけは、交際相手からのメールで、『警察行けば』という一言だったという。前々から、誰かにバラしているんじゃないかと疑われていたが、三人は確信が持てずにいた。メールなども監視されていたが、俺のメールで、彼女が喋ったことがバレてしまったのだ。彼女はリンチに遭って、彼氏に相談したことを吐いてしまった。
俺は内緒で付き合っていた彼氏ということになっていた。たまに出会い系もやっていたが、基本は気晴らしでやっていたようだ。
彼女はお母さんに俺と結婚したいと漏らしていたとか。俺は胸がいっぱいになる。彼女の声や笑顔が脳裏に蘇る。あどけない笑顔と、舌っ足らずの喋り方。
「前田さん、今大丈夫?」
毎晩、掛かって来た電話。
でも、無理です。ごめんなさい。
重すぎます。
それにしても、かわいい子だったなと今も思う。
(注)底辺というのは、湖の底という意味です。
湖底の女 連喜 @toushikibu
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