第10話

教室に入ると、既に何人か来ていた。

黒板に貼ってある座席表を確認して、自分の席に座る。

まだ時間が早かったので、スマホを弄っていたら隣に誰かが座った。

見てみると、隣の席の人は茶髪の綺麗な女性だった。

「おはよう」

挨拶をしたが反応が無いのでもう一度挨拶をすると、ようやく気付いてくれたようで、こちらに顔を向けた。

「はい、おはようございます」笑顔で返してくれたので、安心した。

HRが始まり、担任の先生が入ってきた。

「えー、今日から1年間皆さんの担任をする事になった、宮下です、担当教科は数学全般、よろしくお願いします」

簡単な自己紹介の後、プリントが配られた。

「早速だが、今から進路希望調査用紙を配布します、各自書いて明日までに提出してください、以上」

そう言って、先生は出て行った。

「なあ、瞬ってもう大学決めたのか?」

「当たり前だろ、一応国立志望だからな」

「そっか、俺はどうしようかな」

「何かやりたいことないのか?」

「特にないかな、瞬はどうするんだ?」

「俺は普通に国立の理系に行こうと思ってる」

「そっか」

俺は高校入学したばかりで進路なんてまだ考えられない。

「瞬は、将来どんな仕事に就きたいとかも考えてるの?」

「うーん、あんまり考えてはいないな」

「そうなのか…」

「瞬は、何か夢とか無いの?」

「俺は……分からない」

「そうか」

それから、俺達は一言も話さずに授業を受けた。


***

放課後、俺は阿久戸と二人で帰っていた。

俺は、さっきの事を考えていた。

将来の事、自分が何をしたいのか分からず、焦っていた。

自宅に着いてから瞬に連絡を入れた。

「瞬、明日空いてるか?」

明日は土曜日で学校は休日だった。

「うん、予定は無いけど」

「じゃあさ、ちょっと付き合って欲しい場所があるんだよね」

「どこに行くの?」

「それは秘密」

「分かった」


***

次の日、いつもより早めに支度をして、待ち合わせ場所に急いだ。

集合時間よりも20分程前に着いたが、

既に瞬は待っていた。

「早いな」

「前の予定が早く終わったから」

「そういえば、今日はどこに行くんだ?」

「さぁな、でも楽しみにしててくれ」

「了解」

電車に乗り、1時間掛けて目的地に到着した。

着いたのは新しく出来た、大型のライブハウスだった。

受付を済ませて中に入った。

中には、沢山の人が居て、かなり賑わっているようだ。

俺達が会場に入ってすぐにある人物を見つけた。

その人物は俺達に近づき、声を掛けてきた。

「久しぶり、元気にしてた?」

「あぁ、奏こそどうなの?」

「私はいつも通り」

そこに居たのは奏だった。

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