第9話高校
春、
桜舞い散る中、
周りの気分が高いのを感じたが、
俺だけは気分が全然高くなかった。
瞬と隼人は高校ではバンドをしないと言っていたからだ。
そのせいで入学式どころでは無かった。
俺は高校でもバンドをしたいと思っていたから、新しくメンバーを見つけないと行けなかった。
しかし、中々見つからなかった。
まず、この高校には軽音部が無く楽器を演奏出来る人する見つからなかった。
色んな人に声を掛けて一週間が経ち諦めていた頃、帰宅中の校門前で人だかりが出来ていた。
輪の中心には、バンドメンバー募集中と書かれた看板を掲げながら、マイクを片手に持ち、曲を大音量で掛けながら歌っている男が居た。
幼馴染の和田阿久戸だった。
俺は、その男の姿を見て驚き立ち止まった。
阿久戸は音楽が好きで、小学生の頃は良く二人で遊んでいた。
しかし、中学に入ってからはお互いバンド活動をしていて、あまり話さなくなっていた。
阿久戸は俺を見つけると、大声で呼んだ。
「おい、そこの奴ちょっと来いよ」
周りはざわつき始めた。
俺が近くに行くと、再びマイクに向かって喋りだした。
「これから、バンドメンバーを探しています、もし興味のある方は是非見学にいらしてください」
「何してんの?お前」
「見ての通り、バンドメンバー探してるんだろ」
「そうじゃなくて、何でこんな事やってんのって事だよ」
そう言うと、阿久戸は少し考えた後に言った。
「メンバー居ないから!」
そんな理由でやっていたのかと少し呆れた。
すると突然、一人の女性が話しかけてきた。
「あのぉー、私入っても良いですか?」
そう聞くと、阿久戸はすぐに答えた。
「ごめん、今バンドメンバー決まったから」
俺はさっきまで募集してたのに何言ってんだと思った。女性は残念そうにその場を去った。
「良かったのかよ、あんな断り方で」
「別に良いんだよ、それよりお前はどうなんだよ」
「え?」
「だから、バンドやりたいんじゃないの?」
確かに、バンドはやりたかった。
でも、阿久戸のやってるバンドに入るのは気が引けた。
「入りたいけど、お前がやってるバンドって、女子率高そうだし、そんな所に入りたくないな」
「そんなとこで悪かったな!とりあえず今は俺一人だから安心だな!」
「それって、つまり俺にも入れって言ってんのか?」
「そういう事になるな」
「まじかよ、まあ良いか、俺もバンドメンバー探してたし」
「よし決まりだ、じゃあ明日からよろしくな」
こうして、阿久戸のバンドに加入することになった。
翌日、阿久戸と一緒に登校していると、同じ制服を着た女子生徒二人が歩いてきた。
「あ、阿久戸君おはよう」
「おはよー、今日も早いねー」
「おう、二人ともおはよう」
二人はそのまま学校の方へ歩いて行った。
「あの二人誰?」
「クラスメイトだけど、それがどうかしたか?」
「いや、なんでもない」
どうやら、阿久戸は学校ではかなり人気者らしい。
「そうだ、昨日バンド名決めてなかったから決めようぜ」
「ああ、そうだな」
それから、俺は昨日の帰り際考えた名前を発表した。
『Lost Music』
「どういう意味なんだ?」
「昔、じいちゃんの家で聴いた古いレコードの名前なんだけど、何故かずっと残ってたんだ、それに惹かれて」
「良い感じだけど、バンド名はもう決まってます」
「なら聞くなよ」
『ACT』これが、俺達のバンド名になった。
ACTとは、英語でアクションの意味だ。
読み方はアクト、自分の名前をバンド名にするのはどうなんだと思ったが、悪くないと思った。
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