最後の手(ルーク王子視点)

 今王家は窮地に追い込まれている。


 にもかかわらず、父である現国王はこの状況を楽観視している。

 

 そもそもこの事態は全てあのヒースとかいう子憎たらしい辺境伯家の子供が仕込んだことだ。

 

 証拠としては弱いが今回の一件はあいつに都合のいいことが起こりすぎている。


 しかし、やはり決定的な証拠がなく兵を動かすには弱い、何より仮に動かしたとしても勝ちはない。


 こうなったら残った方法はヒース本人を俺が暗殺するほかない。しかし、俺に動かせる暗部はたかが知れているし、そいつらが俺を倒したヒースを暗殺の暗殺に成功する可能性は低いだろう。


 残った方法はただ一つ俺が自らの手で殺すのみだった。殺した後のシナリオはかなりきついものになるがヒースが内政を担当し始めたと思われる時期まではあの領地は衰退傾向だった、つまり今のイースル領側にはヒース以外に頭の切れるものがいない。これなら無茶苦茶なシナリオを強引に進めることも可能だろうと思っていた。


 しかし、いざ実行すると暗殺?に失敗してしまった。


 自分だけが武器を持っていて相手が何も持っていないその状況までもっていくことには成功したのだ。しかし、そこからどうやら奴のメイドに制圧されてしまったのである。


 しかもどうやらその後、会議を続けて補佐官がイースル領の自治を認めることを承諾してしまったらしい。


 あの強さのメイドがそばにいるとなると暗殺はもはや不可能だろう。


 このままでは王家の権威は地の底まで落ちてしまう。


 権威の低下を食い止めるには俺がヒースよりも優れた人間だと示すのが簡単かつ実現可能である唯一の手だ。


 つまり12歳からの学生生活でヒースよりもいい成績をとり王族としての格を示すのだ。


 今、俺に残されている手はこれしかない。

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