奴隷解放会議①
ミリアと準備を始めて1か月、俺は今、領主の館の会議室にいる。準備が整ったので父に頼んで奴隷関連の産業の関係者に対する説明会をセッティングをしてもらったのだ。正直な話この説明会でうまく説得できないと反発が強すぎて奴隷解放の方は不可能だろう。実際、南北戦争も奴隷が不要だった北部が奴隷制度をなくそうとし、それ対してに奴隷が必要だった南部が反発したことが原因で起こっている。内戦のようなことを起こさないためにも理解を示してもらうことは大切なのだ。
仮にこの問題を解決したらこの異世界でリンカーンとなるのは俺に違いない。まあ仮に失敗したとしても「異世界のルーズベルト」の名はもらおう。まあ異世界人にルーズベルトとか言っても理解されないだろうが。
そんなことを考えていると、父の導きで今日の会談相手達が部屋に入ってきた。明らかに皆俺に対して怪訝な目を向けているがいきなり「奴隷解放だ」とか言い出されただけでも迷惑なのにそれの説明会にこんな子供がいるのだ。怪訝な目を向けるのも仕方のない事だろう。
「皆さん本日は説明会にお集まりいただきありがとうございます。それでは早速「ちょっと待った。」はいなんでしょうか。」
説明会に参加していた商人の一人が割って入ってくる。
「商業ギルド代表のベンだ。まさかとは思うがその子供が説明するわけじゃないだろうな。」
「いや今回は俺の息子であるヒースにやってもらうよ。なんたって今回の発案者はほかでもないヒースだからな。」
やっぱり子供が話すのは信頼感が足りないよなぁ。でも父に頼んでも「将来の練習だ。お前がやれって。」言われるし。
「皆さんできれば最後まで聞いてから判断してください。もし最後まで聞いて奴隷解放に反対するのであれば諦めますので。」
「わっかたよ。最後までは聞いてやる。ただしこっちも商人としてそう甘い判断は出来ないからな。」
正直この段階で「帰る」と言い出す人もいるかと思ったが、どうやらいないようだ。ひと安心である。
「まず皆さんに共通していることから話します。まず今回の奴隷解放の一番の目的は経済の活性化です。」
「経済の活性化って。どうして奴隷解放が経済の活性化につながるんだ?」
「まず領地の裕福さはその領地の総生産量に依存します。たとえば総生産量が増えればそれだけ民に多くのお金が回り商人の皆さんの商品は多く売れるようになるでしょう。」
「総生産量が増えれば収入が増えるってことは分かった。しかしそれと奴隷に何の関係がある?」
「奴隷は無理やり仕事をさせられています。そんな状態でやる気が出ると思いますか?やる気が出ればそれだけ生産効率も増えます。つまり奴隷解放は商人の皆さんの収入アップにつながるのですよ。」
「分かった。」
「それだけではありません。奴隷制度を廃止することで皆さんの商品の運搬の安全性も増すことが出来ます。」
「どういうことだ?」
「現在の盗賊の資金源の一つに捕まえた人間を奴隷として売りさばくものがあります。当然これは違法だし、本来であれば奴隷商が管理しなければならないのですが一般人に化けられたら盗賊かの判定も困難です。しかも奴隷であることを望むような人物もいないので奴隷に攫われたかを聞けばどのような経緯で奴隷になったかに関わらず「はい」と答えるでしょう。ですから現行制度で現状、奴隷商が攫われたものかを見極めるのは困難を極めるでしょう。そこで、そもそもの奴隷制度を廃止することによって盗賊の資金源の一つを潰し盗賊の勢力拡大を防ぐのです。」
「なるほど。確かに普通の商人にとっては奴隷制度はない方がいいかもしれんな。」
「ちょっと待てよ。鉱山を経営しているウィルだ。商人にとってはいいかもしれんが奴隷解放なんぞしちっまた鉱夫がいなくなっちまう。鉱山はどうするんだよ!」
「ちゃんと考えてあるので。安心して下さい。」
正直に言って奴隷がいるからこそ成り立っている産業は多い。そんな彼らには多少今までとやり方を変えてもらう必要がある。そんな彼を説得できるかが奴隷解放のカギを握っているといっても過言ではない。1番大変なのはここからだ。
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