第415話
「ギルド長、アルさんを連れてきました。中に入りますよ。」
そう言って受付嬢の女性はギルド長室に入って行く。その後ろをアルも付いてギルド長室の中に入る。
「おう、来たか。お前が銀級冒険者アルで合っているか?」
「はい、そうです。」
魔力の流れからして魔道具だと思われる眼鏡を掛けているのが、迷宮都市スリンカの冒険者ギルドのギルド長だろう。
「金級冒険者試験はいつでも始められる。いつ行なうかを決めたい。いつなら行なえる?」
「それは、今すぐにでも構わないんですか?」
「構わないぞ。やるか?」
「それではお願いします。」
そうして金級冒険者になる為の試験が始まった。まず最初に行なわれたのは貴族や王族に失礼のない様にする事が可能かどうかの試験だ。
この時の試験官は元貴族の三男や三女などの冒険者ギルドの職員が試験官になってくれる。
その際に横暴な貴族役なども居り、演技なのだと分かっていてもかなり苛つく事になった。
次の試験は筆記試験だ。モンスターの問題や採取物の問題それにクリスタル王国だけじゃなく、クリスタル王国周辺の簡単な法律などもあったりするので、この試験は難しい試験だったが、こう言うものを冒険者育成校で習う事や図書室にも法律関係の本はあるので思い出しながら書いていく。
そうして最後の試験は戦闘試験だ。この戦闘試験の試験官は冒険者ギルドのギルド長が行なう。
ギルド長は元ミスリル級の冒険者だった為、年老いていてもかなりの強者だった。
魔法と格闘技を組み合わせて戦う戦法は思ったよりも苦戦する事になるが、それでもすぐに対処をする事が可能だったのは年老いていたからだろう。
最初の方は振るう剣の刃の側面に触れて軌道を変えるなどの戦い方をギルド長は行なってきた。
それが終盤になれば濃密な魔闘気を纏った拳で剣の刃を弾いていたほどだ。
これが全盛期だった場合は試合の決め手になった一撃を捌く事が可能だったはずだからだ。
そうしてギルド長に勝利した事でアルは金級冒険者になる事が出来たのだった。
「ふぅー……これでもミスリル級だったんだけどな。実績さえ積めばミスリルには今の実力でもいけるだろう。」
「そうなんですか?」
「ああそうだ。まあ実際にミスリル級になるには貴族や王族からの推薦も必要になる。」
貴族や王族か、あんまり関わり合いになりたくないな。貴族や王族からの頼み事をされれば断る事が難しいし。
「まあ、頑張る事だ。」
「はい。」
「それでこれからどうするんだ?」
「水晶大王蟹の試練鍵を使って試練に挑戦しようと思います。」
一瞬だけだがギルド長は難しい顔をする。だが、すぐに元の表情へと変える。こう言う技術がギルド長クラスの権力者には必要なのだと思う。
「アル、お前さんなら可能だろう。だが、今の時期なのが問題だ。」
「そうなんですか?」
何か最上級ダンジョン水晶大王蟹の試練に関係する事があったのだろうか?
「今年は王族のある方が水晶大王蟹の試練の攻略に向かう。その方は横暴な方ではないが、その周りの護衛はどうなのかは分からない。充分に気を付ける様にな。不敬罪を気を付けなければならないぞ。」
「分かりました。」
面倒な事になるのは嫌だな。だけど、それで予定を変えるのも困る。会わない様にしないとな。
それを最後にアルは冒険者ギルドを後にした。そうして冒険者ギルドを離れて大きな広場へと出ると、その広場で自由にバーベキューなどを行なえる場所へと移動した。
「ここなら広さも充分だな。」
周りに人の気配は少ない広い位置へと移動したアルは、そこでユキたち召喚獣をぬいぐるみサイズで召喚する。
「じゃあこれから上級ダンジョン攻略と金級冒険者になる事が出来た事。この二つを祝うパーティーの開始だ!」
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新しく作り直した作品があります
・怪異溢れる世界
以上の一作です
時間がある方は読んでくれると嬉しいです
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