第309話

 スケルトンメイジとの戦闘の後、アルたちが次に遭遇したモンスターはハイドヤモリだった。


 ハイドヤモリは本来ならその隠密性能で気付かれずに奇襲を行なって攻撃をするモンスターだったが、それもアルの行なった複数の探知系の魔法により居場所が気付かれてしまった為、逆に奇襲を受ける形になって戦闘が始まった。


 サフィから高威力の水弾が、洞窟の壁に姿を見えないようにして隠れていたハイドヤモリたちに命中し爆発するように水が膨れ上がり、ハイドヤモリたちにダメージを与えると共に膨張した水に吹き飛ばされていく。


 『今がチャンスなのです!!』


 『ユキ先輩、少し待ってください。まだサフィの攻撃には続きがあるようです。』


 すぐにハイドヤモリたちに飛び掛かりそうになったユキをシェーレが止めると、シェーレの言った通りに、サフィが放った水弾の膨張した水が独りでに動き出してハイドヤモリたちを包み込んでいった。


 『……これで、終わり。』


 大量の水に包まれて踠くハイドヤモリたちだったが、包まれた水が水圧を掛けて圧縮していき、そしてハイドヤモリたちは潰れて死んで行く。


 『……倒した。』


 「お疲れさま。」


 『……んっ。』


 サフィを褒めて撫でると、ハイドヤモリのドロップアイテムと魔石を拾って収納空間に収納する


 『次は私の番なのです!!もっと戦いたいのです!!!』


 『ユキ先輩。私だったそんなに戦闘を行なってません。次は私に譲るべきです!』


 『……次も、ぼく。』


 三匹が言い争いをする中、アルの探知範囲にモンスターが入ってきた。


 「次のモンスターが来るぞ。次はシェーレが戦え。」


 『分かりました、あるじ様!!』


 自身が選ばれたことにシェーレが喜んでいると、ユキとサフィはお互いに次は自分の番だとアルに伝える。


 そして、アルが次はユキでその次はサフィの番だと言ったその時、お互いに接近していたアルたちとモンスターとがお互いを視認した。


 「コイツはコボルトバーサーカーだ。攻撃を受けても怯まないから、そこには注意が必要だぞ!」


 『そうですか。情報、ありがとうございます、あるじ様。』


 コボルトバーサーカーの情報をシェーレに伝えている間に、コボルトバーサーカーは遠吠えをあげて洞窟内に響き渡らせると、血走った目をして纏った闘気を超えて闘気を放出しながら先頭のシェーレへと走り駆けて行く。


 一匹だけだが、コボルトバーサーカーは二メートル行くか行かないかくらいの身長をしており、石で作られた棍棒を振りかぶりながらシェーレへと肉薄し、石の棍棒を振り下ろして来た。


 『これは防御するのは拙そうですね。』


 シェーレは最短での回避をする為に脚を動かして行き、切れ味の鋭いハサミに魔闘気を集中させてコボルトバーサーカーの腕を切断しにかかる。


 「ガァアアッ!!!!!」


 『なかなかの速さですが、それでも私よりは遅いです!!』


 コボルトバーサーカーからの攻撃が当たる瞬間に魔闘気を纏った鋭いハサミでコボルトバーサーカーの腕を切断しながら、シェーレはコボルトバーサーカーからの攻撃を躱す。


 「うおっ!こっちに飛んできた!!」


 『ここは任せてくださイ、マスター!』


 アルが何も言う前にラティアが前に出ると、ラティアは石の棍棒を握り締めたままの腕にローズウィップを巻き付けると、アルたちに被害が出ない場所に放り投げる。


 その間にもシェーレとコボルトバーサーカーとの戦いは続いており、シェーレはコボルトバーサーカーの腕を切り落とすと、すぐに次は厚いハサミをコボルトバーサーカーに叩き付けて、ダンジョンの洞窟の壁に打ち付ける。


 身体を打ち付けられた一瞬は動きを止めたコボルトバーサーカーに向けて鋭いハサミを向けると、勢い良くハサミを閉じて魔闘気を乗せた斬撃の衝撃波がコボルトバーサーカーを半分に切り裂き倒すのだった。

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