第305話

 三年生の生徒たちすべてにボス戦の攻略を手伝ったアルは、思いの外に時間が掛かったが、ようやく目的のクウの戦闘の番がやって来た。


 「クウ、頑張って来いよ。」


 『うん!やくそくもちゃんとまもるからね!パパ!!』


 クウは魔法陣から召喚されたばかりのレッサーキッズドラゴンの元へと飛んで行く。


 そんなクウを見ながら、クウとしたレッサーキッズドラゴンとの戦闘で行なう約束を思い出す。


 それは簡単な約束だ。


 ここまで戦ったモンスターとの戦闘では回避を三回してから攻撃に移って貰ったが、今回のレッサーキッズドラゴンとの戦闘は五分間の回避を行なうこと、それが一つ目だ。


 ブレス攻撃をされたら同じ威力のブレスを放ち相殺し、物理攻撃を伴う咆哮された同じ威力の咆哮で相殺すると言うのが二つ目。


 そして、三つ目の約束は十回の攻撃以内でレッサーキッズドラゴンを倒すことだ。それも今のクウならそれも可能だろう。


 この三つの約束をしたクウが早速レッサーキッズドラゴンと戦闘を開始した。


 「ガァアアアアアアアア!!!!!!!」


 「クゥウーーーーーーー!!!!!!!」


 レッサーキッズドラゴンの召喚直後の咆哮に合わせてクウも咆哮を放ち、闘気の込められた咆哮同士の相殺が起こる。


 アルが何回も行なった戦闘を観戦していた為、どれくらいの威力の咆哮をレッサーキッズドラゴンが行なうのかは分かっていただろうが、咆哮途中や咆哮後にはレッサーキッズドラゴンを倒していた為、ここからはクウに取って初見の戦闘になるだろう。


 「ここまで順調そうだ。」


 『クウはレッサーキッズドラゴンよりも全体的な能力が少し高いですからね。まだ余裕だと思います。』


 「もう少しハンデを付けた方がよかったと思うか、シェーレ?」


 『どうでしょう。クウは初めて戦います。クウが全力を出せない状態ですと、レッサーキッズドラゴンに負ける可能性があるかと思います。』


 レッサーキッズドラゴンが行なう攻撃を余裕を持って回避するクウを見てシェーレと話をしていると、レッサーキッズドラゴンの魔力が高まりブレス攻撃をクウに向けて行なった。


 レッサーキッズドラゴンが放つゴォオオオオオオオオと言うブレス音が起こる中、クウからもブレスが放たれる。


 レッサーキッズドラゴンが放つ収束されたブレスに合わせて、クウも同じようなブレスを放ち相殺していく。


 それからお互いのブレス攻撃の相殺を行なってからレッサーキッズドラゴンとの戦闘は激しい戦いになり始め、レッサーキッズドラゴンが纏っていた闘気から放出された闘気が漏れ始める。


 闘気の消費量が増して消耗が激しいが、より強化されたレッサーキッズドラゴンの身体能力にクウが押され始めた頃、アルはようやく五分経過したことをクウへと伝えた。


 「クウ!五分経ったぞ!!」


 『パパ!!こうげきしていいんだね!!!やっちやうぞー!!!』


 苛烈になるレッサーキッズドラゴンからの猛攻を躱し続けたクウはようやく反撃に出る。


 振り下ろされる爪の一撃をヒラリと躱すと、クウはドラゴンアーマーの翼の装甲に魔力を送り刃を展開すると、その刃の部分に闘気を纏ってレッサーキッズドラゴンの首の真横を通り過ぎて切り裂く。


 「グガァッ!?」


 『いっかい!!にかいめだよ!!!』


 浅くはないが致命傷にはギリギリならない深さでレッサーキッズドラゴンの首を切り裂いたクウは、反転し先ほど付けた首の傷を狙って続けざまに爪に闘気を纏わせて引っ掻く。


 引っ掻く攻撃でより切り傷が深くなり、首から流れる出血が多くなる。


 そうなるとレッサーキッズドラゴンも首を気にして戦い方が変わり、闘気を首の切り傷へと集中させて、少しでも回復しようとしていた。


 『さんかいめ!!!』


 だが、クウ自身に纏う闘気の量を増やして移動スピードを上昇させると、レッサーキッズドラゴンへと突っ込んで行った。

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