第304話

 レッサーベビードラゴンとの戦闘にクウが勝利してから、アルたちは順調に進んで行き、正午前には三十階層のボス部屋の前にたどり着く。


 ボス部屋の前には卒業も近付いて来ている為か、多くの三年生だろうと思われる生徒が集まっており、集団でレッサーキッズドラゴンと戦うのだろう。


 その集団の一部はアルとその召喚獣たちの接近に気が付いてざわめきが起こり、それは集団へと広がっていく。


 『どうやら挑戦する者が多いようですね。あるじ様。』


 「(そうみたいだな。結構俺たちが挑戦するまで掛かりそうだ。)」


 『えーーー!またないとだめなのーー!』


 『……クウ……我慢も、大事。』


 仕方なく待つことになったアルたちだったが、その集団の中から一人の生徒がこちらに向かって来た。


 「アル副会長ですよね。お願いがあるんだけど良いかな?」


 「なんですか?」


 「俺たち三年なんだけど、卒業する為に必要な下級ダンジョンの攻略がまだなんだよ。だから、その攻略の為のボス戦に副会長に協力して欲しいんだ。頼むよ。」


 どうやらやはり卒業の為に必要な下級ダンジョンの攻略の為に集まっていたようだ。


 「なるほど。でも、ここまで来たってことはボスのレッサーキッズドラゴンを倒せる人は居るんだろう?なら、俺の力を借りなくても良いんじゃないのか?」


 「確かに居るんだ。でも、その人たちが副会長の力を借りれば早く倒せるからって言うから、どうしても駄目か?」


 「少し考えさせてくれ。」


 この人たちに力を貸せば確かにレッサーキッズドラゴンとの戦闘が早く行なえるが、それだとクウの戦闘が観察されて見られてしまう。


 俺自身の戦い方はクリスタル王国トーナメント大会の選手を選ぶ選抜戦や決闘などで観察されているが、召喚獣たちの戦闘は未だに見られていない為、悩んでしまう。


 だが、一つ思い付いたアルは三年生たちの相談に了承することにした。


 「分かった。俺も参加しよう。」


 「おお!!!良いのか!なら早速みんなに話して来るよ!!!」


 アルが了承すると、目の前の三年生は一団の中へと戻ってアルが了承したことを伝えにいった。


 それからしばらくしてアルはレッサーキッズドラゴンと戦うことになる三年生の戦闘班と、レッサーキッズドラゴンとの戦闘はどうするのかを話し合いを行なう。


 その結果、レッサーキッズドラゴンとの戦闘ではアル一人で戦い、三年生の卒業試験を未だに達成していない生徒たちを護衛するのは三年生の戦闘班になった。


 そして早速レッサーキッズドラゴンへ挑戦する物たちを選び、アルたちはボス部屋へと向かった。


 「本当に一人で大丈夫なのか?俺たちも参加した方が良いと思うんだが?」


 「大丈夫だよ。レッサーキッズドラゴンくらいなら俺一人で充分だからな。貴方たちはしっかりと守っていてくれ。」


 アルは戦闘班の者たちにそう言うと、魔法陣から召喚され咆哮をあげるレッサーキッズドラゴンへと、魔闘気を纏い足に魔闘気を収束させて向かって行く。


 そして、一瞬でレッサーキッズドラゴンとの距離を縮めたアルは剣身に魔闘気を纏わせ振り上げると同時に剣に魔力を送って剣の剣身を延長し伸ばすと、レッサーキッズドラゴンの首を両断して切り飛ばす。


 それを見てボス部屋の入り口で見ていただけの生徒たちは口をポッカリと開けて惚けていた。


 灰へと変わるレッサーキッズドラゴンを見て、慌てたように向かって来る生徒たちを尻目に、アルは今回の報酬である宝箱を開いて確認する。


 すると、宝箱に入っていたのはアルに取って必要なアイテムでは無かった為、今回の宝箱から得られるアイテムは戦闘班の生徒たちに譲ることにした。


 それからアルは三年生の生徒たちが一人残らず居なくなるまで協力すると、いよいよ今度はクウの戦う番になる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る