18-新たな参入

 前世の追い詰められている時に鏡で見た私の目。

 クララの中にそれがあった。

「まだ頑張ろう」と。

「自分なら耐えられる」と思っている。

 だけど助けてほしいんだ。

 自分をちゃんと見てほしいんだ。


 この痛みを知って、救ってほしいんだ。


 私はゼリミアナに救ってもらった。

 彼女は私の事を全て見ていたから私の痛みを知ってくれた。

 ならクララは?

 誰が?どうやって?はたして救えるのか?

 ここまで追い詰められても誰にも話してないのに?

 私も同じだったよ。

 誰にも言えずに抱え込むしか出来なかった。

 周りの全てが敵で怖くてたまらなかった。

 クララはとても強いのだろう。

 だからこそ周りを騙せている。

 母であるリーナも気付けないほどだ。

 だけどいつかはパンクする。

 知ってるんだ。


 それが私だったから。


 私は別にヒーローじゃない。

 自分を犠牲にしてでも誰かを助けたいなんて思えない。

 まるで物語の登場人物のように異世界に転生してもその気持ちは変らない。

 変える事なんて簡単に出来ない。

 私は私だ。

 ゼリミアナに救ってもらった今も人の視線に敏感だ。

 怖がりでいて愛に飢えている自分を認識している。

 顔にかかる靄は消えたが、そんな自分がまだいるのを否定出来ない。


 でも、クララは家族だ!


 前世で私は失った。

 それでも恋焦がれた。

 怖くても傍にいたかった。


 もう元には戻れないとわかっていても愛していた。


 そして今生に再び手に入れる事が出来た家族だ!!


 傷付けさせてたまるか。

 泣いてもいい涙を我慢させてたまるか。

 自分を押し殺させてたまるか。


 だから救うんだ!!

 他の誰でもない!!

 私が救うんだよ!!


 アイシャになった今なら出来るんだから!!


 動けよ!アイシャ!!

 変わってくれよ!アイシャ!!


 こんな私を前に進ませてくれ!!



 ――――――――――


 クララ。

 否定するのは簡単だよ。

 私も否定したんだ。

 否定し続けていたんだ。

 そして落ちた。

 だけど私は幸運にもゼリミアナに拾ってもらった。

 私には奇跡が起きてゼリミアナの暖かさに触れた。

 自分の心をやっと、ほんの少しだけど見れたんだ。


 ほんの少しだけど受け入れて次を目指す事出来たんだ。


 ねえ、目を背けないでよクララ。

 諦めたらだめなんだよ。

 それじゃ死を選んだ私と同じになっちゃうんだよ。


 奇跡は何度も、誰にでも起きないんだよ。


 クララの心をちゃんと見て。

 その気持ちだってクララの一部だ。

 見たくないよね。

 知ってる。

 だって惨めだからさ。

 苦しくなって涙が止まらなくなるんだ。

 …知ってるよ。

 だから見ないで蓋をした。

 どこか遠くに追いやって強くなったと勘違いするんだよね。

 私の場合はそこで止まっちゃったんだ。


 でも違うんだよ。

 捨てたと思ってもずっとここにあるんだよ。

 逃げられなんてしないだよ。

 だってクララの心なんだからさ。


 でもさ、それは決して弱い心なんかじゃないんだ。

 認められなくてだけどそれでも進もうとしたんでしょ?

 それは絶対に弱い心なんかじゃない。

 一人で立ち上がれなかった私とは違う。

 …支えてくれてたのにごめんね。

 君がいなく…。


 …私は何を…。

 ううん、今はクララだ。


 だからもう一回ちゃんと見てほしいんだ。

 今のクララならきっと大丈夫だから。

 だって誰かのために頑張れるクララは絶対に強いから。

 弱いと思い込んだ心を受け入れて自分を認められるくらいに強くなったんだからさ。

 クララならもう逃げなくても大丈夫だから。


 ほら、大丈夫だよ。

 私が側にいるよ。

 側にいるからね。


 …あの子みたいに…。



 ――――――――――


 そんな事を伝えたかった。

 しかし、逆に胸は凶器になると教えられた。

 最初は苦しかったけど途中からは柔らかさといい匂いの中でストンと意識が落ちた。


 少し癖になりそうな危ない誘惑だったよ…。


「ご主人様、お目覚めですか?お体は大丈夫ですか?」

「…うん、起きたよ、シルビア。心配してくれてありがとう。問題ないよ」

「ふぅ、それは良かったです。ご主人様に何かあれば生きていけません」


「大げさな」と思うが、シルビアは私が生まれた時から常に一緒いた。

 言葉の重みが違う。

 その気持ちは私も同じだ。

 だからこそより強く伝わってくる。

 こちらも負けないように伝えようとするが分が悪い。


 授乳プレイを筆頭にした行為で勝てないから、ね。

 …受け入れると決心したけどまだまだ恥ずかしいよ。


 というのもシルビアの外見にも関係している。

 キッドマン領の地域の人は人種的に成長が早いらしい。

 13歳のシルビアの外見は日本人に取ってみると15、6歳程に見える。

 シルビアはとても綺麗になった。

 ついで胸も大きくなった。

 キッドマン家の血を引くリリー程ではないがその年にして十分な大きさだ。

 そんな彼女が胸をはだけ咥えさせてくる現状。

 なかなか直視に耐えないのだ。

 今でも若干うろたえてしまう。


「おっぱいの時間ですね。どうぞ、ご主人様」

「あっ、はい。いただきます」

「うふふ、はい。さ、お召し上がりください」


 そんな事を考えてたら始まった。

 それよりも一体、おっぱいの時間とはなんだろうか?

 …まあ、検討は付くが。


 ええ、胸部を露出しますよね。


 シルビアの部屋は私の部屋に備え付けられている個室から移っておらず今も共に過ごしている。

 寂しがり屋なシルビアは一緒に寝たがる。

 結果ほぼ毎晩授乳プレイをするのがセットだ。

 リリーがいる時はここに乱入してくる。


 …これの事を言っているのだろうな。


「おいしいですか?」

「…うん、おいしいよ」

「うふふ。うれしいです」


 シルビアの味しかしないよ、出ないんだから。

 …なんか変態チックな感想を吐露してしまった。

 なんだシルビアの味って。

 はぁ…、私はどうなるのだろうか…。


 シルビアの気持ちに答えようと覚悟はしたが、やはりまだ慣れない。

 リリーもいるし月に一度はゼリミアナからも加わった。

 愛情深いからこその行動であるから答えるのもやぶかさではない。

 しかし、どこか方向性が間違っている気がしないでもないのは何故だろうか?


 …とにかく愛する行為なら受け入れるだけだ!!

 相手もそれを望んでくれてるんだから私も愛をもって答えるんだ!!

「体を許す」っていうのはとても尊い事だから!!


 そうじゃないとだめだ。


「シルビア、わたくしですわ。入ってもよろしくて?」

「リリーですか。はい、どうぞ」


 どうぞちゃうやろ今何してんねんうちら。


 思わず私の心の関西弁が出てしまう。


 誰か他の人に見られたらどうするのさ!?

 あっ!?ちょっと待!ぶっ!!


「んぁ…。ご主人様、少し強いです…。…はぁぁ…」


「失礼しますわ」とリリーが入ってくる。

 目を向ければどうやら彼女1人だけらしく私は安心し…、安心するのもおかしくないか?


「まあ!もう始めてたのですわね。ちょっと離れただけでしたのに〜」

「早いもの勝ちですから。約束したでしょう?リリー」

「くぅ〜。わたくしがアイシャ様にお目覚めのおっぱいをあげたかったですのに!」


 どうやらリリーだけが入ってくるとわかっていたらしい。

 だからといって私が離れないようガッチリと押し付けるのは違うのではないか。

 思わず強く吸ってしまったしそれに艶のある声で反応しないでほしいのだが…。

 気持ちを自覚したからかそれに私も少し反応してしまうので。

 あとお目覚めのおっぱいの約束とは何だろうか。

 流石に頭を抱えたくなる。


 まあ、抱えられて吸ってるのは私だけどさ…。


「もうよろしいでしょう?代わってくださいまし、シルビア。おっぱいがうずいてますの」

「しょうがありませんね。はい、ご主人様。リリーのおっぱいにいきましょうね」

「うふ、やりましたわ!アイシャ様〜、わたくしのおっぱいですわ〜。大きくなってくださいまし〜」


 私は5歳なので子供に対するような態度を取られるのは承知している。

 わざわざ異を唱えてシルビアやリリーに訂正させる事でもあるまいし行為の最中以外にこの言葉使いはしない。

 気分の問題もあるのだろうな。

 何故なら授乳プレイであるし。

 それにちょっと悔しいが胸の魔力には逆らえない。


 ん?いや、待て、ここは魔力がある異世界だよね。

 本当に胸の魔力のせいでこんな状態になってる?

 …ありえるな。


 私はリリーの胸を吸いながら推理を展開する。

 アホみたいな名推理だ。


 …やっぱり、その可能性はないですね、はい。

 私がただシルビアとリリーの胸を好きなだけです。

 あとゼリミアナも追加されましたね。


 そんなくだらない事を考えていた罰が当たったのか?

 この状況下に新たな爆弾がやってきた。


「アイシャ、私。クララだけど入ってもいい?」


 …もう、次から次へとぉ…。



 ――――――――――


「…あなた達…、何してるのよ」

「見てのとおりですわ、お姉様。アイシャ様におっぱいをあげてるんですの。」

「ご主人様はおっぱいが大好きですからね。私が毎晩育てたのですよ」


「お姉様お1人ですの?」とリリーが扉の向こうに問いかける。

 リリーの声で返答されたクララが少し驚きながらも「そうよ」と返す。

 シルビアが扉を開きクララを招き入れた。

 そして「これはあかん!」と私が格好を直そうと身じろぎするのをリリーが食い止める。


 え、何故に?

 さっきからなんでやねん。


 クララに見られるのも構わず胸に押し付けられる私。

 こうなればもうヤケクソで「さっきも同じ事があったな…」と現実逃避するしかないのだった。


「え!?出るの!?リリーにシルビア!?」

「まだ出ませんわ。アイシャ様に将来出せるようにしてもらいますの」

「私もです。今は予行演習中ですね。その時にまたご主人様に吸ってもらうための」

「…意味がわからないわ…」


 私もわかりません。

 というか気にするのはそこ?

 正直、軽蔑されると思ったのだが、なんだか雲行きが怪しく感じるけども…。

 …まさかな。

 もう、何も考えず胸を吸おう。

 リリーに対して失礼だしね。

 それがいいよ、それでいいや。

 あー、癒やされてきたー。

 問題を未来に投げ捨てるのってさいこー。


「アイシャは嫌がってないのね?無理やりはさせてないって事でいいかしら?」

「アイシャ様はわたくしのおっぱいが大好きですわ、お姉様」

「ええ。ご主人様はおっぱいが大好きです。情熱的に私のをお吸いになられてますよ」


 語弊があると言いたいが、型なしである。

 今もリリーから交代したシルビアのを再び吸っている。


 どうにでもな〜れ。


「…私もあげるわ…。その…、おっぱいを…、ね」

「まあ!お姉様も仲間ですわね!素敵ですわ!!」

「クラリーベル様。よろしくお願いします」


 ペコリと頭を下げるシルビアに「クララでいいわ」と返す仲良しの図。

 授乳プレイ仲間が増えるのに喜ぶリリーとシルビア。


 …おい。

 どうにでもなれと周りの様子を気にしてなかったらとんでもない事になったぞ。

 これ、やばないか?


 悟りを開きそうな私にクララが胸を晒してくる。

 少し恥ずかしげに片手で飽満なそれの頂きを隠している。

「ならばしなくてよいのでは?」と思うが本人はやる気らしい。

 ついに隠していたそれを勢いよくさらけ出した。


 ルリシャナやリーナのものとほぼ同等、これはでかいな…。

 じゃあ、もう、やるか。

 うん、やるしかないね、あはは。


「アイシャ。おっぱいの前に、ね?」

「?んむぅ…」


 頬に両手をあてられる。

 ゆっくりと近づきクララの瞳が閉じられる。

 残念だな。

 クララの美しいピンクゴールドの瞳をもっと見たかった。


「「ん」」


 そんな事を思っていると気づいたら唇にキスを落とされてた。

 その事実に私は思考が混乱する。

 キスはシルビアにルル、ナナ、リリーから何度もされている。

 ルリシャナやルーズベルト、リーナやクリスからは額に、頬にされる。

 昨日はゼリミアナに顔中にされた。

 唇にも例外なく。

 キス魔ばかりなので正直言って慣れている。

 が、だからといって初めてのクララからのはやはり驚く。


「んむ。ぷはぁ。…はぁ、キスってすごいのね…。それとも好きな人だからかしら?」

「もちろん!大好きなアイシャ様だからですわ!!まあ、他は知りませんけど」

「私もご主人様以外を知らないのでわかりません。今後知る事もありませんが」


 頭がフラフラするよ。

 どうして、クララとキスしてるんだっけ。


 足りない頭だが、とりあえず目の前に差し出されたクララの胸に口をあてがう。


 …あぁ、なんか落ち着くなぁ…。

 いつもより大きくていつもどおり柔らかくていい匂いがするね…。

 クララは婚約者ではないけどシルビアにリリーが許してくれるならいいのだろうなぁ…。


「…うふふ、本当に赤ちゃんみたいね。いい子よ、アイシャ。いっぱい、おっぱいしましょうね」

「…うん…」


 私は考えるのを止めた。


 目の前の事に集中せねば無作法というもの。

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