17-認める事
初狩りと生活魔法を授かった事を祝福するパーティーがある。
当事者の彼の名前はアイシャ。
私の従弟。
男性の立ち位置は難しい。
こんな世界よ、さもなんね。
歴史とともに安定化してきたとはいえまだ魔物の脅威にさらされているのだから。
そんな世界でひ弱な男性は守られる存在よ。
キッドマン領の効率化されている安定した狩りを知っていると外の現実に驚く。
なんて非効率で練度の浅い連中なのかしら。
外の領軍は魔物の討伐に否定的で専ら冒険者達の仕事となっているそうよ。
まとまりのない冒険者に任せれば散発的となり効率的な領地の守護など出来ないというのにね。
「そんなのは命知らずの野蛮人である冒険者にやらせろ」という事みたい。
まあ、怖いのでしょうね。
彼女らの目は勢いだけの子供のよう。
だけど力の差を理解しつつ認められない愚か者のよう。
魔物は一撃でその命を刈り取れる存在。
彼女らが行う遅れた教練では安全な狩りなど出来ないわ。
だから狩りという魔力容量を底上げするのに最も適した行為を拒んでる。
その傾向は社会的地位が上位に近づく程高いみたい。
フッ、これは冒険者に舐められる訳ね。
自らを舐め腐っている存在が自らよりも弱いのだもの。
このどうしようもない暴力的な世界で、ね。
その下地があるため中堅どころの冒険者には粗暴な者が多くなるわ。
ある程度の騒ぎなら電波する事を恐れた兵士が目をそらすから。
怪我人が出るような場面でも相手のランク次第で、巻き込まれた者の階級次第で対応しない時もあるそうよ。
だからある程度いるクズ冒険者は小さな世界の王様になる訳よ。
そんな暴力が暗黙の了解で認められる世界で力ない男性は生きづらい。
酒場のウェイター、店の売り子、受付等はある程度見目が良いと大概が性的被害にあうそう。
言葉だけでなく肉体的にも。
案外閉鎖的で互いに監視が効き、村八分にされると生きていけない村内の方が被害が少ないと聞くわ。
そんな世界でその子は男の子として生まれた。
しかも魔法使いの才能を持ってる。
「力付くでもほしい」と想像するだけでなく行動に移すに値する存在よ。
父や伯父の時も周りがうるさかったみたい。
早々に元々繋がりのあったキッドマン家に助けを求めたらしいわね。
そこでお母様とお父様は出会った。
別に婚姻を強制したのではないと言う。
キッドマン家は今もだけど当時も人格的に優れていたそう。
まあ、見目がよく、その性格も好ましい男女で両親同士が「結婚するのもありかも」と言っている訳よ。
獲物を逃すような人達じゃないものね。
そうなるのが必然だったのよ。
だけど婚姻の発表の際バカが暴れたみたい。
そのバカのせいでとんでもない事態を引き起こされた。
そんなバカがこの世界には溢れている。
その当時のバカもまだ生きているためかなりの確率でまた面倒事が起こるでしょうね。
だってバカなのだから。
「はぁ〜。リリーにルルとナナ、あとシルビアだったかしら?婚約者になったらしいけどどうなるかしらね?今は近しい人にしか話してないらしいけど…」
リリーから幸せでたまらないという惚気バツグンの手紙が届いた。
「…私へのあてつけか」と思ったから破り捨てそうになったけどね。
手紙によるとアイシャは見た目は天使で頭も賢いそう。
性差が目立ちにくい子供といえども女の子にしか見えないらしいわ。
男の子だと知らされてない周りも只々その可愛すぎる見た目でイチコロになっているそう。
…昔から少しズレてると思っていたけど少し酷くなったかしら?
もしそんなに可愛いなら私も婚約者になろうかしら?
…一応、一応よ。
お母様からの打診は来てたから考えておきましょうか。
…私もそういう事に興味があるし…。
――――――――――
馬車が静かに止まる。
まだ目的地には遠い、…何かが起きたようね。
漂ってる空気からわかるわ。
「面倒くさいやつ」ね。
私は馬車のドアを開けた兵士に応じる。
「報告しなさい」
「はっ!街道脇の林より5名から包囲されております。左に2、右に3。10分前より継続中のため間違いないかと。現在馬車本体を端に寄せ、休憩を装っています。相手は右の1人が離脱、4名が継続中。兵士を1人、気取られないようにして、離れた者の尾行をさせています。ご判断を!」
どうやら盗賊の先遣隊と思われる小集団に目をつけられているみたいね。
私は魔力を薄く伸ばして探知魔法を発動する。
…確かに4人が周囲を取り囲んでいるわ。
魔力の濃さ、それから自然発散の具合により大した事ない相手と判断付く。
ここでは襲ってこないでしょう。
流石に街に近すぎるわ。
街に入り、出、私達が再び出発したら、でしょうね。
「こんな場所で監視なんて盗賊で間違いないわ。休憩を5分、その後一斉に突撃。左の2人は捕縛しなさい、尋問よ。その後の行動は情報次第ね」
私が乗る馬車は貴人が乗るものとしては派手ではないわ。
堅牢な作りをしてはいるけど装飾がほとんど見られない作り。
おそらく大店の商人が契約のために移動していると考えているはずね。
貴族に手を出せばどうなるかなんて流石にわかっているはずよ。
ここには強い魔物は出ないから護衛の実力も侮っているのでしょう。
それらから魔獣の事をただの馬と思ってる訳ね。
ただの移動に大貴族でもこんなに数を揃えられないし見た目も少し大きい馬だもの。
だから盗賊らは魔法使いがいるだなんて思ってもいないわ。
そこをつくだけね。
戦闘は一瞬だったわ。
そもそもバレてないと思っている相手。
奇襲すればなんて事なかったわ。
「てめぇーら!仲間を殺しやがって!絶対に許さねぇぞ!ぶっ殺してやる!!」
「うるさいから早く始めなさい」
「はっ!連れていきます!」
捕縛した片方が凄んでくる。
魔物なら言葉もなく殺しに来るのにそんな脅しに驚くとでも思ってるのかしら?
聞くに堪えない言葉を喚き散らすそれを兵士が2人で林へと連れて行く。
そうすれば直ぐに悲鳴が聞こえてきた。
生かして情報を聞き出す必要はないものね。
「あなたはどうするの?」
「な、何でもいいます!どうか!どうか!!」
特に聞く必要もないので連れて行かせる。
暫く経った後兵士がそれぞれ2人ずつ出てきた。
そこに盗賊の姿はない。
…これでいいのよ。
――――――――――
なんて事なの。
尋問した2人の内容に私は呆れてしまうわ。
「かなり大きいわね…。これを今まで放っておいたの?」
「ここ半年は活動していたようですし気付いてなければおかしいかと。…無能ですね」
「ええ、そうね…。どうしようかしら…」
おそらく報告しても討伐は遅い。
最悪他領に移られる。
キッドマン家が襲われたため兵は起こさないといけないわ。
数を集め、装備を配備、情報の精査。
それをしている間に盗賊団は移動しているでしょうね。
それくらいの脳は半年活動出来ただけにあるはずよ。
その間に隠れるための物資補給という襲撃を行う。
防御機能の薄い村が狙われるかしら…。
それでもこれがキッドマン領に来る事はないわ。
我が領軍が盗賊討伐を血眼で行ってるのは広く知られているもの。
我がキッドマン領には関係がないのよ。
関係はない、けどね…。
「恩を売れるわ。ここはキッドマン領の移動に使える。領民もキッドマン家への恩義を感じるでしょう。代官は苦々しく思うでしょうけどね」
「よい考えかと思われます。キッドマン家が補給に寄る際にすくないでしょうが便宜を図ってくれるでしょう」
ここは領を出てから王都に向かうまでの補給地点に選べる。
「仕方なく用意してくれる」のと「感謝の念からしてくれる」のとでは雲泥の差がある。
それは何ものにも替えられないわ。
可哀想では行動なんてしない。
キッドマン領、その領民の幸せを考えるのが私達よ。
そうでなければならない。
「迅速に行動する。目標地点中盤で待機。先に出た斥候と合流後作戦会議をするわ。彼女にわかるよう合図を出しておきなさい。出発しなさい!」
「「「はっ!」」」
盗賊の斥候部隊は帰ってこない。
それが知られる前に動くわ。
盗賊の拠点には36名が詰めていた。
途中で再度監視に合流しようとしていた1名を合わせれば41人の大御所。
改めて思うけどよくこれを見逃していたわね。
本当にここの代官そしてそれを任命した領主は無能だわ。
彼女達に支配者の価値はない。
領民が不憫でならないわね。
…だからこそ私達が得をするのだけれどね…。
拠点は脆い砦だった。
これなら容易いわ。
私ともう一人の魔法使いが探知をして外からの投擲でほぼ半数を討伐。
ただの木の壁など我が領軍の身体強化の前では意味をなさないもの。
一度人質を盾に出てきたけど無視して殺したわ。
人質が盗賊でない証拠なんてないしあなたの命よりここにいる12人の兵の命が大切なの。
ごめんなさいね。
本当にごめんなさい。
こちら側の死傷者はゼロで幕を閉じたわ。
いくら多くても盗賊なんてこんなものね。
大抵がそれしか出来ないから盗賊になったのだから。
「首は刎ねなさい。金品と食料品をかき集めなさい。馬車を一台鹵獲しそれに詰め込む事。首も一緒にね。記録は洗えたかしら?」
「一覧になります」
兵士の1人から略奪された村のリストが渡される。
幾人か捕縛し口を割らせた結果だ。
もちろんもう生きてない。
…かなり多い。
これだけの規模だものね。
半年も活動していればそれもそうよ。
捉えられていた男性が4名いた。
性処理用ね。
愛してもない行為なんて怖気が走るわ。
残念だけど彼らに生きる道はほとんどない。
慰み者にされた者が戻ってきても白い目が向けられるだけ。
悲しいけどそれが現実よね。
実際2名の意識がはっきりしている者は盗賊の持っていたナイフで自ら首を掻き切った。
衝動的に行動したみたい。
これは救いなの?
…悩んでも詮無い事。
考えてはだめよ、進めなくなるわ。
進めなくなるの。
正気を失っている者は放置する。
近隣の村落に連絡し引き取ってもらう。
一応獣に襲われないよう入口は塞いでおくけどね。
「終わったわね。一班は街に行き食料品と替えてきなさい。もう一班は私と共に食料品を村に再分配しに行くわ。そちらも準備でき次第合流する事。さあ、動きなさい!」
各村の人口を加味して与える。
これで冬は問題なく越せるでしょう。
ついで代官にも念を押しておく。
「お前達の怠慢が招いた。それでいて収穫品を与えた村からそれを徴収する恥は犯さないわよね?」とね。
代官には立場を再認識させる。
そして村民には恩を売れる。
これを無下にする事はキッドマン家が許さない。
偽善か。
…それでもいいわ。
それでキッドマン領を守れるものね。
私は貴族よ。
何も感じてはいけない。
私は弱くてはいけない。
――――――――――
「…話は以上ね。討伐はすぐに終わったけどその後が大変だったわ」
「そうか。うむ、よくやったな。それでこそキッドマン家の人間だ。後で報奨を兵にだそう。収獲品は全て卸したのだろう?」
「ええ。お願いしますね、シャナ伯母様」
シャナ伯母様から労いの言葉を貰う。
人の命を奪っても何も感じないわ。
だって私は貴族だから。
だからかしら?
こんなにも心に染みるのは。
話している最中からアイシャがずっと私の目を見ていた。
まるで瞳の奥を覗き込んでいるようだったわ。
突然アイシャが近付いて来、私の手をその小さな手で握ってくる。
暖かくて、冷えた心がポカポカとする。
…溶けていく。
何がかしら?
「ん?どうしたの?アイシャ。いきなりされると驚くわよ?」
アイシャは尚も私の手を握り、よしよしと撫でてくる。
本当にどうしたのかしら?
「頑張ったんだね。クララお姉様」
「えっ?」
頑張った?
何を?
先の話の事なら別に貴族として当然の事をしたまでよ。
お礼なんて言われる立場ではないの。
当然の事なのだから。
守るために人を殺すのは当然の事なの。
「ありがとう、クララお姉様。私達のために頑張ってくれて。傷付いてくれて」
…。
「心を麻痺させてくれたんでしょ?誰かが傷付かないように、守れるように。自分がその代わりに傷付くように」
「…どうして…、…わかるの…?…私…」
アイシャの言葉に次の句が告げなくなってしまうわ。
それでも否定しなければならないの。
私はキッドマン家に生まれたのだから認めてはならないの。
こんな弱い自分は切り捨てなければならないのよ。
…そういえば最初は吐いたわね。
胃液しか出なくなって。
だけどそれでも吐いて、吐き続けた。
私、涙に滲む世界でお母様に叱られたわ。
「お前はキッドマンの人間だ!そんな体たらくで何をする!!」って。
私は魔物は何体も殺していたのにそれよりも何倍も弱い人間を殺したのが怖かったのよ。
だから心を殺したわ。
そうしないと私がどこかに消えちゃうから。
そんな事許されないのよ。
だって私は貴族ですもの。
そうしないといけないの。
そういう風に生まれたの。
「…だめよ、アイシャ。そんな弱さはいけないわ。弱い私は許されないの。だって私は…」
「弱いのは悪い事じゃない!!」
アイシャが叫んだ事にこの場の全員が驚く。
それでもアイシャは止まらない。
「弱い事はいけない事じゃない!駄目なのはそこで止まる事だ!何も出来なくなって!自分の状況に自分で悲劇して!進めなくなるんだ!!諦めるんだ!!」
「ア、アイシャ、落ち着いて…」
止めてアイシャ。
あなたがそんな泣きそうな顔をしないで。
どうしてあなたが傷付いてるの?
…私なんかに…、…そんな…。
「クララお姉様は戦ってる!!誰かのために!!私達のために!!」
「わ、わたし…私は…」
弱かった私はあの時に封印したの。
止めてアイシャ。
また出てきてしまうわ…。
「自分じゃない人のために自分を犠牲に出来る人が!!許されない訳ない!!そんなの私は絶対に認めない!!」
「…ぅ…、ぅうぁ…」
涙がポロポロと出てくる。
私は強くならないといけないの。
弱さを押し殺さないといけないの。
…でも認めていいの…?
こんな私を認めていいの?
「…ありがとう、1人で頑張ってくれて。だから今度からは私が一緒にいるよ。ずっと側にいるよ」
アイシャが抱きしめてくれる。
小さな体に信じられない程の強さを感じるわ。
男の子だから?
アイシャだから?
「クララ」
「ぉ…、う、…お母様…」
「クララは私とは違うのにな。辛い事をさせた。すまない」
お母様が後ろから抱きしめてくれる。
「お姉様!わたくしがお姉様をお守りいたしますわ!」
「リリー…」
リリーがアイシャを挟むようにして抱きつく。
「うん。頑張ったな」
お父様が口数は少なくとも感情の籠もった声で頭を撫でてくれる。
こんなにも支えてくれる人がいたのね。
大切な家族がいたのね。
…私、今まで気付けなかったわ。
ううん、気付こうとしなかった。
可哀想な私。
本当はこんな事したくないの、強制されているの。
だから私のせいじゃないの。
そうやって蓋をして遠ざけた。
自分とも、家族とも。
だから私は今向き合うのよ。
――――――――――
私の心の内。
輝くような光がある中でそこだけは他と切り離されたように真っ暗だった。
「ねぇ?今なら聞こえる、ワタシ?」
…ええ…、聞こえてるわ…、…あなた…。
心の中の幼かった、弱いと切り捨ててけれども捨てきれなかったあなたが声を掛けてくれる。
おそらく今までもこうやって声をあげてくれてたのね。
私があなたに向き合う覚悟が出来たからやっと届いたの。
あなたの瞳は涙に濡れてたけど強い意思があった。
「そんな弱さがあってもいいんじゃない?人は弱いから強くなろうとするの」
そうなの?
「私はワタシよ。弱かったけどそれでも頑張ってきたワタシの心なの」
いいの?認めてもいいの?
私がそう問いかけるとあなたは途端に冷たい目となり私の事を突き放そうとする。
拒絶に驚き「どうしてよ?教えてくれないの?」という目を向けるとそれはより一層厳しくなった。
「何を認めるって言うの?私に聞かないでよ。私はワタシなんだから。自問自答したいならワタシにしてよ」
…助けてくれないの?
どうしてなのよ…。
やっと向き合う決心がついたのに…。
あなたは結局私の事を受け入れてくれないの…。
「あのね、それって私が決める事?」
…。
…違うわ。
「そうよ。違うの」
違う、違う、違う!
私よ!私が決めるの!!
私が一人で進むの!!
「…また、1人で行っちゃうの…?」
え?
私が決意を固めた瞳であなたを見ると途端にあなたはうろたえだした。
まるで親に捨てられた子供のように。
そしてあなたは嗚咽の混じった声で早口に私に懇願する。
…ううん、違うわね。
あなたの瞳の光は死んでなんかいない。
宣言するのよ。
「捨てないで!一緒にいさせて!私も!私もワタシと一緒に強くなりたいの!!もう弱い私は嫌なの!!強くなるの!!」
涙に濡れてる震えた瞳、震えた体。
それなのにとっても強い力を感じる。
弱かった事を認める。
蓋をしないで、見つめて、向き合うの。
だから強くなれるの。
だから。
「何勘違いしてるのよ。捨てたりなんてしないわ。あなたは私なんだから。捨てる事なんて出来ないでしょ。あなただって知ってるでしょ?」
私は泣きじゃくるあなた、いいえ、私を抱きしめる。
「ありがとう。今まで1人で頑張ってきてくれて」
辛かったの!寂しくて!暗くて!怖かったの!!1人は嫌だったの!!
強く。
ただ強くその体を抱きしめる。
こんなになるまで私を1人にさせたのね、私。
だったら言う言葉は1つだけよ。
「おかえりなさい、私」
その瞬間抱きしめた私が大きく目を見開く。
そして涙に濡れた瞳でそれでも溢れんばかりの笑顔を魅せてくれる。
私は震える唇を動かす。
…ただいま…、ただいま、ワタシ…、ううん、…私…。
私の体が私の中に入ってくる。
苦しい、とっても苦しいわ。
無視し続けただけその体は傷付いていたのね。
こんなになるまで私を支えてくれたのね。
だけどもういいの。
もう、1人になんて絶対にさせないわ。
たった数秒だったのか、それとも数時間だったのかわからない時をかけて私が1つになった。
受け入れた瞬間に私の中の何かが確かに軽くなった。
それと同時に力が湧く。
魔力が湧いてくる。
大切な人を、愛する人を守るための魔力が湧いてくる。
もう、ここに暗闇はなかった。
――――――――――
「…わ、私…、皆を、守るわ…。…絶対に…、守るの…」
「ああ、守ろう。私達全員で守ろう」
「わたくしも一緒ですわ!」
「うん」
私は私を受け入れる。
受け入れて強くなる。
ありがとう、私。
そしてその私に気付かせてくれた素敵な人がここにいるわね。
私は自身の胸にある確かな温もりに意識を向けた。
ふふっ、こんなちっちゃくて男の子なのに女の子みたいで。
それでいて天使みたいに可愛いくて。
…だけどすっごく強いのね、アイシャ。
リリーも好きになるはずね。
リリーは頭はちょっとアレだけど感が鋭いところがあったから。
ひと目見てアイシャのこの心の強さに惹かれたんでしょうね。
…私もね。
好きになったわ、アイシャ。
あなたが大好きよ、アイシャ。
はぁ…、まさかこんなに年の離れた子どもを好きになるなんてね。
けど、後10年もすれば大きく成長するでしょう?
それくらいなら十分に待てるわね。
ありがとう、アイシャ。
今度は私がアイシャを支えるわ。
アイシャの顔を見る。
アイシャは気絶していた。
…息が出来なかったみたいね…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます