14-おかしくなっていた

 私はこの時を待っていた。

 初狩りが終われば待っている事。

 以前ルルとナナが私に見せてくれたアレだ。

 そう、アレを授かる時がやってきたのだ。


 生活魔法を!!


 そのために私は領都リーベルにある教会へと向かっているところだ。

 教会といえば高い尖塔やステンドグラス、頂点にある鐘だろうか。

 宗教自体が違うので十字架はないだろうが、何か他の物がモチーフとなっているかもしれない。

 はたしてパイプオルガンを弾いて賛美歌を歌うのだろうか。

 それとも教義に関して突き詰め、静かに教えを説いているのだろうか。

 私はそれらを想像しながらワクワクと街を進む。

 どうやら到着したらしいが、どの建物だろうか?

 首を巡らせるが、それらしきものは見当たらない…。

 …ここらしいのだが?


 え?これなの?


「30年前くらいに暴動が起きてね。一度取り壊しになったんだよ。アイが思うような教会は他領のものだね。説明したいけど僕もキッドマン領から外には暫く出てなくて…。ごめんね、余りよくは知らないんだ」

「そうなのですね。お父様」

「どうしたの?アイ、緊張してるの?大丈夫よ!お姉ちゃんが付いてるんだから!!」

「手、つなご」


 本日ルリシャナとシルビアは別に用事があるため同席していない。

 そんな訳で私はルーズベルトとルル、ナナと共に領都リーベルの教会の門を潜る。

 どうやらルルは教会の外観を不思議に見ていた私に「これからの事に不安を抱いているみたいだ」と思ったようだ。

 それを見たナナが不安を和らげようと私の手を握ってくれた。


 私はナナと指を交互に絡ませる。

 優しく、されど決して解けないようきつく絡ませる。

 …どうして恋人繋ぎなのだろうか?

 あと、やった本人が空いた手で髪の毛をソワソワといじっている。

 思うにやったはいいが、気恥ずかしいのだろう。

 しかし、私は「恥ずかしがるならやらなければいいのに」とは口には出さない。

 乙女心がわかる男性でいたいのだ。


 それと単純にナナが可愛いし私も嬉しいからね。


「キッドマン領での教会は他領とは違う」とルーズベルトは言う。

 確かに先程も疑問に感じた平屋建ての建物だ。

 全くといえる程に教会という感じがしない。

 私は「教会は華美な見た目か清廉なもの」と思っていたが、潜り抜けた先にある今目の前の建物はどちらでもなかった。

 いや、目の前の建物自体は他の家屋とは違いかなり大きい。

 だが、何というか小学校の体育館のような感じが近いだろうか。

 大きい。

 大きいが厳かな感じはしない。

 ちょっとした大きい建物だ。


 こんなの教会ぽくないよ…。

 世界残念遺産みたい…。


「かつての教会はね、金の亡者、既得権益の塊だったんだよ。宗教はやっぱり力がある。とっても酷かったんだ。だから建て直しの時に土台から特別扱いはしないようにした訳だね」


 教会は救護院を兼ねている。

 大森林ジュマを抱えるキッドマン領においてそれは切っても切り離せない存在だった。

 教会から派遣される治療師のおかげで助かった兵士の命があった。


 だからこそ増長した。


「治療を受けたければ魔物素材で得た金銭を喜捨しなさい。でなければ我が信徒達の治療はどうなりますかね…、ねぇ?」と。


 当時の領主は教会のその言葉をそのまま領民に伝えた。

 まあ、他にもいくつかの話を混ぜたようだが。

 領民の感情が爆発するよう用意周到に選びたくなる蜜を設置した。

 得たい感情を手繰り寄せた。

 つまり言い方が悪くなるが「罠」にかけたのだ。

 それにより教会は言い逃れの仕様がない程に追い詰められた。

 領民の命を天秤に賭けた脅迫が明らかとなったからだ。

 薪を与え、マッチを近づけると簡単に領民は燃え盛った。

 元々、司祭の横暴な姿勢に大多数の領民は距離を取っていたのだ。


 神に身を捧げると言いながら大森林ジュマによりもたらされる莫大な治療費。

 本来は崇高な行為に対する謝礼である。

 また、それを用いて次の患者のための設備や利用者への信仰の教えに使うもの。

 だが、宣教師は着服した。

 腹が膨れ、指には宝飾品を。

 贅にふける下卑た姿を晒す。


 領民はそれを見ていたのだ。

「バカにするんじゃない」と。

「何も知らないと思うでか」と。


 領民はその激情を行動で示した。


 教会はその日のうちに陥落し火に沈んだ。

 領主側として幾人か桜を仕込んでいたが「こんなにも上手くいくのか」というくらい容易く教会は殺された。

 そう、領主にとって教会は邪魔だったのだ。

 この領の現実を一切見ていないバカみたいな妄想を垂れ流す。

 民を洗脳しようとする教会が目障りで仕方がなかった。

 そんなおりに先の妄言だ。

 まさに教会のバカげた言葉は絶妙のタイミングだったのだ。

 矛盾する教えの穴を突き、攻勢に出られる機会を自ら生み出してくれたのだ。


 これらに関して領主側の動きだというボロは一切出さなかった。

 領主側の人間は忠誠を誓い元々教会を嫌っている者を使った。

 それに教会側は二度と唄えないよう黙らせられた。

 加えて最終的に破壊したのは領民という形だ。

 まあ、誰が最終的な扇動していたかの事実は知らないようだが…。


 私はこれらの領主側の工作について後日教えてもらった。

「清濁併せ呑む」という事だろう。


「守りたいのならば手段を選ぶな、悪魔になる事を恐れるな、そしてそれを絶対に悟られるな」


 この教訓を私に教えたかったらしい。

 最後に「ナイショにするんだよ」と言ったルーズベルトの目がいつもと違っており少し怖かったのは内緒だ。


 現在キッドマン領の教会は領主によって運営されている。

 外部を排斥して運営している事で教会としても出来る範囲がった。

 治療だけに留まらず初等教育の場としても開放しているとの事。

 さらに魔法薬関連の生産も担っている。

 これを領軍に必要量無料配布し冒険者にはほぼ原価で販売しているのだ。

 また、領民の治療に関しては治療費を領主預かりでほとんど無料にした。

 これを可能としたのは大森林ジュマの恩恵が大きく、他領では真似しようとしても出来ないらしい。


「たとえ出来たとしても金にうるさい領主共はやらないだろうね」

「そっか。人間らしいね」

「…そうだね、アイ。それが人間だね」


 そう、欲望が人の内には満ちている。

 どう取り繕ってもそれは事実だ。

 私の中身も…。


「うぇ?どうしたの?お父様」

「…何でもないさ。アイが可愛くて、ね」


 何故か私はルーズベルトに抱き上げられる。

 そして抱きしめられた。

 何でもないらしいのだが、少し苦しい程に締め付けられる。


 …暖かいから別にいっか。

 うーん?何か考えてたような…。

 …それもどうでもいいや。


 私もルーズベルトを抱き返した。


 件の事件より領民から領主への好感度をさらに高める事が出来た。

「領主は領民の安全を第一とし金儲けに命の天秤を用いない慈悲深い方だ」と。

「キッドマン家の方々はまさに神の御使いだ」と称賛されている。

 それによって領民は領主の事を疑わなくなり領の運営をかなり強行に進める事が出来るようになった。

 これに不満を唱える少数の領民は盲信する大多数の領民により排斥される。


 かつての教会は上手く使えなかったようだが、神の教えとは人の心を掴むのに非常に都合がいいのだ…。



――――――――――



「アイ、よく来た」



 教会の敷地の入り口にあたるアーチを抜けたところで声をかけられた。

 そちらに目を向けると父であるルーズベルトによく似た青年が出迎えてくれていた。

 彼の名前はクリス。

 私の伯父にあたる人だ。


 クリス・グルダ・フォン・キッドマン


 リリーの母であるリーナの夫だ。

 ルーズベルトと同様の銀糸の髪に太陽のような瞳、中性的な顔立ちで王子様ぜんとしている。

 だが、その印象は真逆だ。

 ルーズベルトがにこやかで暖かいのに対して少し冷たいか。

 例えるなら月のような雰囲気がある。

 憂いたような瞳で少し影を感じさせるのだ。

 口数はそれ程多くなく、声も静かだ。


「クリス伯父様、来ていたんだ。久し振りだね」

「やあ、兄さん。準備をありがとうね」

「今日はアイの事をお願いします!」

「ん。ありがと」


 しかし、その見た目と性格はほぼ真逆だ。


「わ!?ク、クリス伯父様、少し苦しい」

「すまない。久しぶりだったから。つい」


 挨拶を交わして直ぐに私はキツく抱きしめられた。

 すぐに力を緩めてくれたが、クリスは解放してくれない。

 仕方ないので私はされるがままにしておく。

 だが、ルルとナナはご機嫌ナナメらしくクリスの足をポカポカと叩いていた。

 

 どうやらクリスは息子がほしかったらしい。

 娘の事はもちろん愛しているが、それとこれとは別との事。

 私は「将来家族となるのを今か今かと待ち望んでいる」と本人から言われた。

 恐らく魔力の性差で男性が弱者となるこの世界では息子は可愛がられる傾向が強いみたいだ。

 前世との男女の違いがこんなところでも出ているらしい。


「直ぐに終わらせて、とっとと帰ろう」

「そうだね。シャナにカタリナ殿、リリーにシルビアが待ってるからね」

「そうね!このあとはアイが魔法を得たお祝いがあるもの!」

「パーティー」


 そう、この後は私のためにパーティーが開かれる。

 初狩りを終え、親和性の高い場合はさらに教会で神に生活魔法を授かる。

 生活魔法を授けられた後はそれを家族で祝う習慣があるのだ。

 これらの準備のため今回ルリシャナとシルビアは付いてきていない。

 私は知らされてなかったが、リリーとリーナも城塞都市グルダからお祝いに来ているそうだ。

 普段城塞都市グルダの教会に勤めているクリスもそれに付いてきた形らしい。


 ルーズベルトとクリスは回復魔法を使える事により教会に所属している。

 そこで教区長の立場となっている。

「アイの祭事なら私がする」と昨日やって来たらしくクリスは気合が入っているみたいだ。

 本当はルーズベルトが執り行うのだが、クリスが懇願したそうだ。

 私は「いいの?」とチラッとルーズベルトを見る。

 役割を取られたルーズベルトは苦笑していた。


 …まあ、教区の違いは余り気にされないみたいだし、いいか。


「アイ、ここに」


 外観は小学校の体育館だが、流石に中身は教会らしく整えられている。

 吹き抜けで高く取られた天井には少し濁りがあるが、ガラスがはめられて光が全体に差している。

 並べられた長椅子はきれいに整頓している。

 これに何とも言えない厳かさを印象付けられる。

 それらにより全体には静謐な空気が漂っていて大きな声を出すことがはばかられた。

 奥には1段高いステージが設けられて中央の台座の上に神像が座していた。


 ゼリミアナだ。


 私がゼリミアナに会った時に見た人外の美しさと神々しさは流石に表現しきれてないが、そうだと認められる。

 出来るなら直接会ってこの5年間の出来事を話し感謝を告げたい。


 まあ、そんな事起こりようはずもないね。

 この儀式に心よりの祈りを捧げる事で満足しようか。


 私は指示されたとおり神像の直ぐ前の場所に跪く。

 クリスが祝詞を唱える。

 生まれ、ここまで健やかに育った事。

 初狩りを終えて神より生活魔法を授かれる奇跡に感謝を捧げる言葉だ。


「アイシャを今、創造神ゼリミアナの御前へと」


 クリスが最後の言葉を述べる。


 その瞬間私の意識は暗転した。



 ――――――――――


 暖かさに意識がまだろんでしまう。

 柔らかく、いい匂いがする。

 もっとこれにくるまっていたい。


 私はその思いに逆らわずより一層それに近づこうと体を押し付ける。

 それも私に答えてくれる。

 私を慈しむように包み込んでくれた。


「ぅうん…」

「は〜い、私のアイちゃん〜。ママですよ〜。よ〜しよ〜し」


 …酷い猫なで声だ。

 なんだか先程までの気分が下がってしまう。

 声の調子がとても心地よいだけに残念でならない。

 体の芯から温めてくれるだけに本当に残念でならない。


 むぅ、いいから抱きしめるだけにしてほしいなぁ。


「…これはもしかして…、おっぱいの時間かな。ママ、頑張れば出せそうな気がするの」


「よいしょ、よいしょ」という掛け声と共に衣ずれの音がする。

「どういう状況だ?」と意識が覚醒しかけていると何かが私の口に含められた。

 人は寝ている時に口に物を入れられるとそれを嚥下しようとするらしい。

 という訳で私はそれをもごもごした。


「あっ、これすごい…。癖になりそう…」


 …ん?なかなか口触りのいい…。


 最初は柔らかかったが、口で遊んでいると段々とコリコリと質感が変化してきた。

 それと同時に聞こえる声に高い音が混じり始める。

 それによって私の意識が浮上してくる。


 ん?私は何をしてる?


 透き通るように白くきめ細かくて柔らかい、今の私の顔程の大きさのある球体。

 それの桜色の突起部分に私はしゃぶりついていた。


 はい、胸ですね。


「…何をされてるんですか、ゼリミアナ。思考が暫く停止しましたよ」

「だって〜、ルリシャナさんやリリーさんにシルビアさんが羨ましくて…。私だってママなのに!!」

「…ママ…、ですか…。まあ、容姿が似すぎているのである程度の想像はついてましたが。そういう事ですか」

「…えへへ。はい!私がアイちゃんのママです!!」


 やはり作為的に私の容姿はゼリミアナに似せられていたらしい。

 含むところがありまくりだったようだ。

 とはいえ別にそれが嫌という訳ではない。

 何故なら男というのはこの世界では弱い生き物だからだ。

 それの容姿が優れないというのは…。

 …残念だが、前世以上に待遇が悪い。

 しかし、私は魔法が使え、さらに容姿が見た事がない程整っている辺境伯家第3子だ。

 非常に女性に大人気であるのは領軍の兵士や屋敷の使用人の態度から察せられる。

 いわゆる「アイドル扱い」が的を射ているだろうか。

 これに胡座をかくバカをしなければ将来は安泰であろうな。

 まあ、婚約者達がいるため誰彼構わず関係を持つつもりは全くないが。


 あと、見てたのか。

 そうか、見てたのか…。


 私が結局拒否出来ずにズルズルと続けてしまっているそれ。

 知識のない少女を搾取し卑猥ととれる行為をしている。


 それを知っているのか…。


「…ゼリミアナ。私がシルビアとリリーにされている行為…。いいえ、私自身が受け入れている別の行為もご存知ですね?」

「…ええ、知ってるわ」


 やはり知っているらしい。


 私が少女の年のシルビアとリリーにその性を誑かすような行為をしている事。

 自らの性的欲求のために諭す事が出来ないでいる事。


「…情けないのですが、他者からの意見を教えていただきたいのです。…私はどう―」

「別にいいんじゃないかしら?」

「すれ…、は?…そ、それはどういう…?」


「いい」とはどういう事だろうか?

 こんな事は許されないはずだ。

 前世でいう児童ポルノ法にはっきりと抵触している。

 シルビアとリリーを性欲で見てしまっている。

 そんな事をする自分が恥ずかしい。


 恥ずかしいのに拒否出来ないでいる。

 求めてもらえる事の「幸せ」が私を支配している。


「シルビアさんもリリーさんも自分の意思でしてるのよ?そしてアイちゃんにもそういう目で、態度で接してほしいと思ってるわ」

「…それは…、…その…、わかりますが…。…それでも私の精神は大人として成熟しています。性を自認しており彼女達をおもちゃのようにするべきではありません」


 そう言うくせに何もしないでいる私はなんだろうか。

 醜い欲望に支配されてしまっているクズなのか。


 自身の都合で大切な人達を振り回している最低な男。


 直視したくない内面に俯く私にゼリミアナは自愛の籠もった笑みを向けてくれる。

「一体何を?」と訝しげに思う私の頬に手を当て至近距離で目を合わせる。


「ねぇ、アイちゃんは私にドキドキする?」

「え?その、流石にこれだけ距離が近いとしますし先程の胸の件でもそうですが?」

「それってルリシャナさんと同じ感じ?」

「え?」


 …確かに母であるルリシャナに抱く気持ちと似ている。

 それはシルビアやリリーに対する気持ちとは異なる。

 だけどそれは…。


「それは当たり前では?ルリシャナは私の母ですから。それに言い換えればゼリミアナも私の母と言えます。気恥ずかしいのはありますが、性的なものは感じませんよ。それは当然ですよね?」

「うふふ、それは少しおかしいわよ。普通、前世の記憶、それもかれこれ20年以上も成熟した精神を持っていながら欲情しないの?生みの母とはいえ単なる大人の女性と思うはずよ。それに私は女神様ですからね!とっても綺麗なんですよ!!」


 …。

 コホン、最後は少し戯れていたが確かに言われてみるとおかしい…。

 ルリシャナもそうだが、ゼリミアナに至っては人外の美しさだしね。

 これ程の美を前にしてそれでいてあのように胸を吸わされる行為の前で欲情しないの?


 はっ!!まさか!私は真正のロリ―


「アイちゃんがそう思うような相手はね、相手自身もアイちゃんにそういう対象として見てもらいたい相手なの。愛して愛されてのベクトルが男女として。互いの心を覗いて理解してほしいの。最愛の人としてね。それでいて彼女達もアイちゃんも互いに誠実に対応してるでしょ?」

「え?…ああ、そうですね!確かにそうかもしれません!!」


 危なかったーー!!


 思わずヤバい性癖を自認してしまうところだった。

 私はノーマルです。

 絶対な誠実さを持って相手に対応しています。


「誰でも彼でもいいなら…、他にもアイちゃんにちょっかいを出してる女はいるわ。…憎たらしい売女共め…。こっちに来たら消してやる。その魂を…、コホン。だからね、アイちゃんはそのままでいいのよ。とっても素敵な男性だわ!出来るならママにもいやらしい視線を向けてね!!」

「…えっと、努力しますね」

「うん!ママはいつでもね!いつまでもアイちゃんを待ってるわ!!」


 そう言いゼリミアナは私をその豊か過ぎる胸に掻き抱いた。

 絶妙な力加減で息が出来る隙間を残す事は忘れない。

 …これがプロの仕事なのか。


 あと、前半は聞かなかった事にしよう。

 触れたらきっとまずい。


 確かに私に対して色目とも言える行為をしてくる女性は多い。

 軽い肉体的な接触だったりだとか。

「少しどうかな?」と誘ってきたりだとか。

「お姉さんの事好き?私はアイシャ君の事好きかな〜」等だ。

 この程度のものならば私も流せる。

 相手に私を思いやる気持ちがあって私が拒否すればすぐに「ごめんね」や「そっかありがとう」と返してくれる場合がほとんどだ。


 問題なのが、ごまかしているが目の奥が笑ってない女性がいる事だ。

 私が気を抜けば「無理矢理にでも自身の性欲の捌け口に使おう」という気が満々なのだ。


 それに私が気付けたのは相手が幼稚だったからだ。

 どれもが子供だと見くびりその目的の隠蔽が杜撰でいる。

 そんなもの近くで見ている私にはバレバレだった。

 何度私がそのゲスなこ―

 私には「お前らは5才児相手に何性的興奮してんじゃ」という場面がたった2年でそれなりの数あったのだ。


 顔がとんでもなく整ってるってすごいのね。

 こういう事の対象にされるってめっさ恐ろしいよ。


 そういう日はシルビアに抱きついて眠るくらいだった。

 シルビアはいつもは自分から抱きつくのにその日に限って私から抱きついてくれるためすごい顔だった。


 まあ、その人達はいつの間にか見なくなってるのだが。

 さすがにシルビアらが外している時を狙ってそれらの女性陣は来てたが、おそらく私につけられている影の者がいるのだろう。


 うん、怖いよ逆に。


 それに比べてシルビアとリリーに対してはどうか?

 愛してほしいという感情を向けられているのはわかっている。

 シルビアもリリーもガッツリでいてもろで一切隠そうとしていない。

 そして私はそれを嬉しいと感じている。

 それに答えようとして行為に参加している面も確かにある。

 うわ言のような声を挙げてくれるのに喜びを感じている。


 先の女性達は皆容姿が整っていた。

 それは精神的に律せれる、もしくは言い方は悪いが気後れする容姿の女性はそのような事をしないためだろう。

 不誠実そうでいて自分に自信がある女性が近寄ってきたのだろう。

 それでも男性であれば鼻の下を伸ばすような女性達だった。

 が、私はまったく相手にしなかった。

 軽く受け流して直ぐにその場から去るようにしていた。


 私はシルビアが男女の愛情を向けてくれていたのがわかっていた。

 そして直ぐにリリー、ルル、ナナと共に婚約者となった。

「他の女性にそのような感情を抱く事などありえない!」というのがいつの間にか当然となっていた。

「その感情をあなた達に答えるのはありえない」と。

「私がそれを抱いていい女性はもう決まっている」と。


 私に「愛」を教えてくれる大切な人達はもういる!!


 でも、怖くて…。

 それでも進みたくて…。

 私…。


「…もう答えは出てるのかな…」

「…あら、ちゃんとわかったみたいね。いい子いい子。いいのよ、アイちゃん。ゆっくりでいいの…」


 私の独白にゼリミアナが満足げに頭を撫でてくる。

 それに答えるよう私はゼリミアナの目を見て告げる。


「…その、私は、…愛しています。心から。シルビアにリリー、そしてルルとナナ。彼女らが男女としての行為に答えてほしいとするなら私も答えます。されている訳ではなく私自身がそれに返したいのです。…まだ、踏ん切りがつかない部分もありますが…」

「そうね、まだそれでもいいわ。アイちゃんはちゃんと歩んでいる。ママはそんなアイちゃんを愛してるわね」


 ならこれ以上ウジウジと悩む方が不誠実だ。

 愛情をもって返答するのが正しい答えだろう。

 少しキョドってしまうのは許してほしいが。


 この想いを信じてみたい。



 ――――――――――


「あっ、遅れましたが、お礼を言わせてください。…思うところはあります。それでもこの容姿に関しては助かっています。ありがとうございます、ゼリミアナ」


 先の事で忘れていたが、この内容にも見切りをつけておこう。


 私の容姿ゼリミアナに似すぎ問題だ。


 まあ、言葉のとおり助かっている面がある。

 その逆に良すぎるが故に巻き込まれた事もあるためトントンな感は否めないが。

 だが、それに関して文句を言うのは余りにも恩知らずのため言及はしない。

 容姿に関して礼を述べるのは変だが、感謝しないも失礼だと思う。

 そのため私はなるべくへりくだらないように頭をさげた。


「ママよ、アイちゃん」

「ん?はい?どうしましたか、ゼリミアナ?」

「ゼリミアナじゃない。「ママ」。マ マ、と呼びなさい私のアイちゃん」


 …。

 おい。


「私、不満です!」という顔で訂正を促すゼリミアナ。

 なんだか精神年齢が下がっていないか?

 あなたは神様では?

 それでいいのだろうか?


 …そして私を「自らの息子だ」と譲らないゼリミアナとの攻防は私の敗北で幕を閉じた。


 だって話が通じないんだもの。


「ゼリミアナお母様、どうして私をここに呼んだの?」

「もちろん!アイちゃんに会いたかったからですよ!!ママね…、5年も会えなくてすっごく寂しかったの!!」


「ゼリミアナお母様」と呼ぶ事でなんとかママ呼びは回避出来た。

「話口調も換える」との要求は受け入れる事になったが。


 ゼリミアナの談によれば私は息子らしいので5年会えないのはそれはそれは寂しかったろう。

 という事で全身で「寂しかったの!」と表現するゼリミアナのおもちゃになる私。

 先程言ったとおり授乳プレイもしっかりと見られてたようでここでも強要された。


 …どうして私の周りの女性は授乳プレイをしたがるのだろうか…?

 そしてそのハードルはリリーも参加した事により確実に下げられてしまったな…。


 ちなみに何とは言わないが出た。

 頑張ったらいけたらしい。


「ママの愛が成せた力よ!!アイちゃんに出されたの!!」


 …はぁ…。

 転生してもらいさらに外見も非常に似ているね…。

 確かに母と言えるのか?


 あと、私は出せるようにしていない。

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