11-街並みと魔獣

 シルビアとリリーはとても仲良くなった。

 シルビアが11歳、リリーが12歳と歳が近いのもそうだが、同じ男性の妻として垣根はなくそうと話し合ったらしい。

 当初シルビアが身分を理由に遠慮するのを「そんなものわたくし達の間に必要ありませんの!」とリリーが切り捨てていた。

 それに甚く感動したのかシルビアとリリーの結束は強くなったようだ。


 その結果がこれだ。


「アイシャ様、もう一つが寂しがってますわ。どうか手でお触れになってくださいまし」

「ご主人様、こちらにもありますよ。ほら、触ってください」


 シルビアは授乳プレイをリリーに話したようだ。


「妻達の間に夫に関する秘密はいけませんので」との事。

 その事を聞いたリリーは夜寝る前の私の部屋に特攻してきた。

「わたくしもおっぱいの仲間にいれてほしいですわ!」と真正面からやって来たのだ。

 真っ直ぐなリリーの性格は好ましいが、少しは遠慮も必要ではないかと思う。

 あと、授乳プレイをおっぱいと言われるとくるものがあるな。


 うん。

 まあ、吸うんだけどね。

 吸うしかなかったんだよ…。


 私が「それはちょっと…」と伝えた際リリーの目が怖かったのだ。

 小さな声と据わった目付きで「わたくしのは吸えないのですか?」と言われたら「いえ、喜んで吸わせていただきます」と答えるしかなかった。


 まだ小さい玉がヒュンッとしたよ…。

 …それだけだったよね。

 シルビアの時は最初嫌だったのにね?

 何でなんだろ?


「あぁ…。いけませんわ、アイシャ様。そんなに優しくしないでくださいまし…」

「ご主人様ぁ、早く私のも吸ってください…」


 リリーは止めてほしいのか?

 にしては胸に押し付ける力が声と共に増すのだが…。

 それとシルビアは横顔に胸を押し付けないでほしい。

 リリーもシルビアもそれなりに育っているのでサンドイッチされると若干苦しい。

 順番をお待ちくださいな。


 これ普通の3歳ならばトラウマになっているのでは?

 私は前世の記憶を持つ身なのでまだ我慢は出来るのだが…。


 はい、嘘を付きました。

 不満そうに言いましたが実際は嬉しいです。

 向こうから望んでくれてさらに喜んでくれるなんて男冥利に尽きます。

 それに私も男の子なんです。

 浅ましい欲望ぐらいはあります。

 …そう、これは私の都合だ。

「シルビアとリリーを満足させてあげたい」という自分勝手なものだ。


 前世も含めて「初めて」の感情だ。


 これが初めてだとそれだけは覚えている。

 ただ、このままでよいのか悩む部分はあるのだが…。

 あと、ドアの隙間からルリシャナとリーナが見てますよ、お嬢様方。


 リリーが来た後に「ドアが閉まってない!!」と私は焦ったが、妙な光の反射があったのだ。

 よく目を凝らせば二対の赤い瞳と目が合う。


 …子供の行動など親にはバレバレという事ですね。


 ルリシャナとリーナは私が気付いているのを知ると「いいから、いいから」とジェスチャーしてくる。

 気にせず続けろと言いたいらしい。

 一体母親達はどうしたいのだろうか?


「んぅ?アイシャ様、どうされましたの?おっぱいですわよ?」

「ご主人様、ほら、もっと押し付けてください」


 あっ、口と手が止まってましたね。

 はい、吸いますね。

 それと触らせていただきます。


 …本当にこのままでいいのだろうか…。



 ――――――――――


 リリーとリーナが帰る事になった。


 最後の晩は酷かった。


「もう眠い」と言う私を胸に押し付け「もう少しだけお願いしますわ。暫くわたくし達気軽に会えなくなりますのよ、アイシャ様ぁ」と何度も言う。


 そう、何度も。


 シルビアは最後の夜だからとリリーに譲り早々に自分の部屋で寝入ってしまった。

 そしてリリーはなかなか終わってくれない。

 横になった状態で私を年の割に非常に豊かな胸に押し付ける。


 そしてリリーは体を擦り付けてきた。


 リリーは初めてだったらしい。

 当初はその刺激に驚いた様子だった。

 が、時間が流れるにつれて慣れたのかどんどんと激しくなっていった。

 大きく肩が震え胸も震えたところでリリーは意識を手放した。

 大きな刺激の波に耐えられなかったらしい。

 それでも私の事は離してくれなかったが。


 …あぁ…、私はどうしたらよかったんだ…。


 胸を吸う事自体もそうなのだが、まさかこのような行為までだなんて想像していなかった。

 固まってしまい何も行動出来なかった。

 何かすべきだったのになにも出来なかった。

 リリーの様子から知識がないのは明白だった。

 もしリリーが今宵の現象の事を知った際にその痴態に傷付いてしまわないだろうか?

 リリーの年齢なら性的な興奮を覚えてしまうのは仕方がないのだろう。


 だが、それを私に対して行ってしまった。


 相手に見せる事。

 ましてやその肉体を許してしまう事に罪悪感や嫌悪感、羞恥心を覚えないだろうか。

 私はそれに対し傷つけずにフォロー出来るだろうか?


 結局そのまま寝てしまって私は頭頂部を口に含んで朝を迎えた。

 私は「は、激しいですわ…」とのたまうリリーに何と言っていいのかわからなかった。


 どうするのが正解だったのだろうか…。

 幼い心を上手くフォロー出来るだろうか…。


 さらに追い打ちをかけたのがシルビアも同様の行為をするようになってしまった事だ。


 最初は我慢していたリリーだが、最後の方は声を漏らすのを気にする余裕がなくなってしまっていた。

 そのリリーの声に起こされドキドキしながらドアの隙間から見ていたらしい。

「あのご主人様…、その、私も、…してみたいです…」とシルビアに恥ずかしげに言われ私は受け入れてしまった。

 というより上手く言葉が出てこず場の空気に流されてしまった。


 シルビアとリリーもそういうお年頃という事だろうか。

 リリーの行為を暗に容認した私が何か言う事は出来ない。

 そもそも胸を吸ってる時点で現行犯だろう。

 ならば黙って受け入れるしかないのだろう。


 そんな理由付けをして仕方ないと私はごまかすのだ。

 まだ少女の年のシルビアとリリーを穢してしまう。

 駄目だとわかっているのに拒否する事が出来ないでいる。


 そこまで私に心を許してくれる二人が愛しくて仕方ないからだ。


 醜い…、私はとても醜い。

 シルビアもリリーのように本能のままにやってほしかった。

 無理やりといえなくもない状況でやってくれた方が私は楽だった。

 私に了承を取らないでくれた方が助かった。


 その方が私の中にある仄暗い喜びの感情に言い訳が立ったからだ。


 美しい少女達が私のような男を求めてくれる喜びを。


 それに何の自己嫌悪も持たず身を任せる事が出来たからだ。


 …私はクズ男なのだろうな…。


 私が悪いのではなく求められるから渋々やってるのだという事か。

 最低な自己弁護だ。

 そうわかっていながらもシルビアとリリーの求めに拒否を示す事が出来ないでいる。

 授乳プレイと同様にこのままズルズルと行ってしまいそうで怖くなる。


 本当にどうしたらいい…。


 これを止めたくない私がいるのをどうしたら…。



 ――――――――――


「アイシャ様、ルル、ナナ、シルビア、またお会いしましょう。さようならですわ」

「世話になったよ、シャナ姉さん、ルーズベルト殿。アイシャにルルとナナもな。また会おう」


 別れとなるがそんなに寂しくはない。

 別に薄情という訳ではない。

 リリーとリーナのホームは城塞都市グルダである。

 大森林ジュマへの狩りの際は必ず通る場所であるため訓練の時に訪れるからだ。

 ルリシャナは「感が鈍る」との事で月に一度は必ず狩りを行う。

 それにルルとナナも同行しタリア先生に教えを乞うている。

 私も近々参加し狩り自体は出来ないが森での歩き方を教わるのだ。


 そしてその時がやってきた。


 初めて町並みを見、私は興奮した。

「これが領都リーベルか。初めての外か」と。

 街並みは日本とはまるで違う。

 前世の日本はもちろんだが、昔の日本の景色、言うなれば京都の通りがそれに近いだろうか?それともえらく違う様子だ。

 よくは知らないが、昔のヨーロッパの景色に似ているのだろうか。


 人口10万人を超えるキッドマン領最大の都市、領都リーベル。

 この都市は城塞都市グルダからやってくる大森林ジュマの収穫品の総取引所だ。

 また、中央に位置するために王都側への輸出管理をも担っている。

 キッドマン領でとれる物品が一度に集まる場でもあるのだ。

 多くの商会が軒を連ねるがゆえ非常に人々の往来も盛んだ。

 それを捌くために道幅は広くとっているためか数に反して混雑は余り見られない。

 都市自体の面積も大きいのがあるのだろう。

 町は白を基調とした石材が目立ちそこに補助として木材を用いている。

 建物の隙間は小さい。

 くっついている建物同士も多いか。


「石材は我が領の物を使っていてな。白い美観もそうだが、耐熱性が強くて熱の籠もりも少ない。隙間が少ないのはなるべく脇道を無くす事で犯罪率の上昇を抑制しているからだ。警邏の本数も減らせるしな」

「そうなんだね。場当たり的じゃなくて計画的な建造なんだ」


 未開発領域を切り開き領地を広げていく。

 その段階で領都リーベルは段々と奥に遷移していったらしい。

 それを利用して都市開発計画を立てたために理路整然としており猥雑さや継ぎ接ぎ感は見られない。

 京都の町並みと似た「碁盤の目」といったところか。

 領都リーベル以北の町も立て直しを随時しており綺麗な町並みだという。

 また、これらを領主主導で行うことで公共事業とし仕事を産んでいるそうだ。


 そしてこれは領民のためだけでない。

 正確な都市内の地図が手に入る事で警備はもちろんだが、災害発生時の避難経路の把握が出来るのだ。

 これは自然災害だけではなく大森林ジュマの魔物が溢れた際というのが大きい。

 その場合には前線が城塞都市グルダに移る。

 同時に領都リーベルが後方支援地となる。

 これらの際起こる混乱を抑えるために都市計画は非常に綿密にされているみたいだ。


 …話しを聞く前と後では町の見え方が180°変わってしまったよ。

 ただ単に綺麗な町並みという訳ではないようだね。

 なる程ね、これが人の命を預かる立場というものか…。


 腰掛けで領主など出来ないものだという事。

 私はルリシャナの知識に覚悟というものを見た。

「これが私の今生の母だ」と思うとなんだか奮い立つ自分がいる事に気付く。

 私も領主一家としてその振る舞いを身に着けなければならないのだ。


 私は「ルリシャナの息子」として生きていくのだから。


 もう、私はそうなったのだから。


 強く、それでいて美しい「母」の横顔を眺める。

 私がそうしていれば「何だ?恥ずかしいぞ、アイ」とルリシャナは言い髪を優しく梳いてくれる。

 

 こんな幸せを私は得た。

 得る機会を与えてくれた。

 

 二度は起こり得ないだろう「奇跡」が。


 私のために「夢」を見せてくれた。


 らしくなく熱くなった思考を頭を振る事で逃がす。

 話を戻そうか。

 気になる事はまだまだある。


「石材も取れるんだね。本当に外からの必要物資の輸入が少ないね」

「そうだな。外への依存が少なくてとても助かっている。豊かである子供は素晴らしいが、同時にそれを狙う敵も多くなるからな。まったく、ダンジョン様々だよ」

「へー。ダンジョンがあるんだ。…ダンジョン?」


 どうやらダンジョンという空間が存在するらしい。


 ダンジョンの立ち位置は「資源の宝庫」というものだ。

 ダンジョンは存在する限りその内容物資を生み出し続ける。


 だが、人類が上手く利用出来るのは少数らしい。

 魔力濃度が低くて利用価値の無い魔物素材だったり。

 ただの洞窟であったり。

 逆に魔物が強すぎて上手く運営が回らない事もある。

 余りにも内部の魔物が増えすぎると外へ出てこようとする場合もあるために扱いがまた難しい。

 それをどうにかしようにも危険過ぎて行ってくれる者が少ない。


 前者の場合は早々に潰してしまって奥の「ダンジョンコア」のみをとる。

 もしくは冒険者ギルドに新人教育用として完全に譲り渡す。

 後者の場合は潜れる冒険者が少なくなってしまう。

 上位層のそこでも活動が可能な冒険者は儲けられる。

 が、それはともかくとして領主側の旨みは低くなる。

 収められる税金は数に比例して低くなる。

 されど警備はしなければならなくなるので脅威度と共にそれは跳ね上がる。

 それゆえ丁度いいバランスのダンジョンは非常に貴重となるのだ。


 キッドマン領に現在あるダンジョンは魔物は出ないが、良い石材と少量の鉱石を。

 そして食用出来る岩塩が手に入るらしい。

 これは垂涎ものだ。

 魔物が出ないので冒険者ギルドに頼る事がなく領主直営で事を進められる。

 領軍のみで構成する事で仲買人が入る隙がなくせ資源の総取りが出来るのだ。

 そして尽きる事がないので流通量のコントロールを慎重にすれば金を、仕事を生み続ける。


「普通、魔物素材を優先するのだがな。我が領にそれは必要ない。これもご先祖様が切り開き守ってきたおかげだ。感謝するんだぞ、アイ」

「うん。ありがとうございます、ご先祖様」


 ルリシャナは祈りを捧げる私の頭に手を置きクシャッと撫でる。

 ついでにルルとナナも撫でてきてめちゃくちゃにされた。


 シルビアが整えてくれたが、その前に撫でる事は忘れなかった。



 ――――――――――


「よく来たな。部屋はそのままにしてあるから好きに使ってくれ。歓迎するよ」

「アイシャ様!!ごきげんようですわ!お会いしたかったですの!あっ、皆様もどうぞ体を休めてくださいましね」

「ははは、相変わらずだな、リリー。アイの事が大好きみたいだ。結構な事だ。リーナもありがとう。また3日程世話になるよ」


 リーナとリリーが出迎えてくれる。

 リリーは苦しくなるぐらいの抱擁付きで私の足が浮く。

 リリーはまだ発展途上なので私が気絶をするにはあと1、2年はかかるだろう。

 あと、私以外にはついでと言わんばかりの挨拶だった。

 ルリシャナは苦笑を禁じえないという感じだが、リーナはその態度に若干目を細めていた。


 リリー、後が怖いようですよ。


「カタリナ様、私達護衛官10名もお世話になります」

「ああ、軍駐屯地に連絡は行っているよ。ナタリア達も何かあれば管理官に言ってくれ。外からの視点も大事だからな」

「ご配慮痛み入ります」


 この場には赴任地を超えた移動のためにリーナへの顔見せで護衛のタリアが同行していた。

 タリアはそれが終わると今回の狩りの概要確認をしに領軍駐屯地へと向かっていった。

 リーナとルリシャナはそのまま応接室へと消えていく。

 そして今ここには私、ルル、ナナ、シルビアとリリーだけが残された訳だ。


「リリー!!いつまでアイを抱きしめているのよ!離しなさい!!私のよ!!」

「ルル、ここは一緒に抱きつくのが吉」

「いいではないですの。一月ぶりですのよ。わたくしもアイシャ様成分を補給したいのですわ!」


 私は開口一番抱きすくめられ今だにリリーの腕の中にいた。

 それと成分って何だ?まさかちょっと匂うのか?

 クンクンと自由の効く範囲で自分の体を嗅いでみる。

 すると勘違いしたのかリリーが「…ア、アイシャ様。そのような事は2人だけの時にしてくださいまし…」と頬を赤らめずれた事を言ってくる。

 だが、腕の力は弱まらずより密着させるように増すのだけども…。

 さらに擦付ける動きも加わるまでだ。

 …逆にやってほしいのか?


 相変わらずアホ可愛いいリリーだね。


 私が色の失った瞳をしているとナナも後ろから抱きついてきた。

 それを見「遅れた!」とルルも体をねじ込んでくる。

 シルビアは澄ました顔をしているが、指が忙しない。

 衝動を我慢しているようだ。

 どうやら私に久しぶりに会えたリリーに対し気を使っているらしい

 健気な姿だが、夜は寂しさの分大変になるだろうな。


 私が。


 …えー、そろそろ暑いのですが皆さんは…。

 あっ、大丈夫ですか。


 そうですか…。



 ――――――――――


「さて、感動の再会は終えたかな。装備の点検をし馬車に乗り込め。森に行くぞ」

「今回私は同行しないからな。リリーが案内するのだぞ。しっかりと務めを果たしなさい」


 子供達がそれぞれに返答し準備を整えていく。

 前回は心配だったらしいリーナが共に森に潜ってくれたが、今回それはないみたいだ。

 ちなみにルリシャナは最初は同行するが、森で別れる。

 というのも私達が入るのは森の浅瀬でありルリシャナにとっては歯ごたえがない。

 そのため浅瀬で森に異常がないのを確かめるとそのまま奥地へと精鋭を伴い入っていく。


 この場合私達のリーダーとなるのはリリーだ。

 タリア他にも護衛が複数付くとはいえその責任は重大となる。

 近しい親戚であり婚約者の間柄だが、まだそこまでである。

「主家の人間を預かる」という事の重大性をリリーは理解している。


「わかりましたわ!お母様!!城塞都市グルダを任された者として恥ずかしい姿は見せませんの!!」


 リリーは先程までの緩んだ表情を引き締め直し気合を入れる。

 それを見「任せたぞ。だが、抜くところは抜け」とリーナは微笑んだ。


 全員で馬車に乗り込み外を護衛が固める。

 ちなみに馬車を引く馬はただの獣ではない。


 これは「魔獣」と呼ばれる種だ。


 魔獣は魔物の血を引く動物であり通常のものと比べ大柄だ。

 粗食に耐え、力強く、休まず走り続けられる。

 誰もが欲しいと思う程だそうだが、成育は非常に難しいらしい。

 それは確保が大半を占める。

 何故なら魔物はメスがほとんどだからだ。

 魔物は人間と同じように魔力の発現条件に性差が関わっているらしい。

 そのためオスが生まれにくいので簡単に種馬が手に入りずらい。


 まず、オスの普通の馬を森に放つ。

 これが他の動物や別種の魔物に食べられない事を祈る。

 そして自身より遥かに弱い生き物が近づく事を。

 さらに乗っかる事を許してくれるメスと出会う。

 幸運にも種をつけ終わったらその魔物を監視する。

 生まれたら他の魔物に捕食されないようすぐさま確保し育てるという流れだ。


 この最初が一番難しい。

 魔物は自らよりも遥かに弱い魔力を持たない獣が近づけば食い殺そうとするからだ。

 それをせずましてや子を妊む個体はなかなかいない。

 そしてなんとか確保出来た魔獣も三世代も重ねれば普通の獣と変わらなくなる。

 この事から最初の一世代目は非常に高価だ。

「では、魔物を直接使役しては?」となる。

 が、魔物を手懐けるのは非常に難しいらしくそれこそまさに「運任せ」で数が揃えられないらしい。

 それが魔獣の値段に拍車をかけている。


 しかしながら、キッドマン領はこの魔獣を多く飼育している。

 それは近くに大森林ジュマがありその内容を熟知した領軍がいるためだ。

 ターゲットとなる魔物を見つけると他を排除しながら近づき事をなさせる。

 魔物は出産までの期間が短く何と1月程で生まれる。

 また、これを監視し続けられる人材を確保しているために可能な事だ。


 そして金のなる木の存在の魔獣だが、外には販売しないらしいらしい。

 というのも魔獣はその性質上より軍に動員させれば非常に効果的だ。

 多くの人を攻撃箇所にすぐさま展開出来るのは戦争において最も恐ろしい力だ。

 それを仮想敵となる存在に金を払うとはいえ与えるはずがない。

 わざわざ相手に力を付けさせる事もないし出来るとはいえ繁殖に至るまでの経費も高いのだ。

 だからこそ魔獣は外において希少で高価となっている。


 これを大量に保有するキッドマン領の力は凄まじいな。

 敵も多くなると思うが…、どうなのだろう?

 教えないという事は知らなくていいという訳なのだろうが…。


 それが「問題ない」なのか、それとも…。


 今の私にはそれこそ知りようがない。

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