第526話 そして神罰は下された

「……“選ばれしもの”7人すべてに、お告げがくだりました。──これは実に2000年ぶりのことです。中央聖教会より、緊急の通信が届きました。内容は以下の通り。」

 皆がゴクリとツバを飲む。


「“そは、いよいよ尊からずや”。

 “罪は重ねに重ねられその時はきた”。

 “我が手よりこぼれし愚かなる者よ”。

 “未来永劫その罪を背負う者よ”。

 “我ら白き淵にてその身を待つ”。

 “その行い神に仇なすものと知れ”。

 ──“愚かなる者、その名はリシャーラ”。

 エザリス王国が失われた大地と呼ばれる所以となったお告げと、一言一句同じです。

 ……国名がリシャーラ王国な以外は。これはすべての国に一斉に通達されています。」

 皆が見守る中、ドノバス・クアント祭司長の冷たい声だけが、謁見の間に響いていた。


 兄さまたちが、わざわざお告げをした上で神罰をくだすのは、これが神罰であると明確にする為なんだって。ただの天変地異だと思われたら、見せしめにならないからね。


「……。」

 水を打ったようにシン……となった。

 さっきまで余裕そうに構えていた大臣たちまで、ダラダラと脂汗を流しだした。


「この国に神罰が下るというのか!?」

「なぜ!?どういうことだ!?」

「誰か勇者か聖女に手を出したのか?」

「なんてことを!!」


「まさか……。」

 ルーデンス王太子が僕を見上げた。

「ひょっとして、お前が、勇者……?」

 僕はフルフルと首を振った。


「僕はあなた方が捜していた“ななつをすべしもの”。7人の“選ばれしもの”の頂点に君臨する神の使徒。そして愛し子。僕のものに手を出した時点であなた方は終わりです。」


 僕自身が神であることは伏せた。ルーデンス王太子たちを生かすからには、そこはまだ伏せておきたい事実だった。……まあ、言ったところで信じないかもだけど。


「そして神はおっしゃられた。──ヒルデ・ガルドこそ、次世代の勇者であると。

 勇者に手を出したことを神は許さない。」

 1番の候補だから嘘は言ってないよ。


「あ、あの女が勇者……?」

「嘘だろ……。」

 自分たちの罪の大きさに、絶望したような表情の、ルーデンス王太子たち。


「な……“ななつをすべしもの”……!」

「こいつが……!」

 エリンクス公爵とアルグーイ公爵が、僕を見て驚いた顔をしている。


「──神の裁きの時間です。」

 僕の声のすぐ後に、巨大な雷が王宮へと落ち、王宮の一部が崩れて、空と外の景色が丸見えになった。エディンシウム・ラハル・リシャーラ陛下の頭上に瓦礫が落ちる。


「ひいいいい!終わりだあ!」

「この国は滅びるんだあ!」

 我先に逃げ出そうとする大臣たち。

 その頭上に雷が落ち、バタリと倒れる。


「君たちには当てないよう、言ってあるから安心してよ。僕は着の身着のまま君たちを、この国から追い出すつもりでいるから。」

 僕はルーデンス王太子に言った。


「ま、待て!そんなことをされたら……!」

「若くてきれいな女の子だけで、寄る辺もなく放り出されたら、どうなっちゃうんだろうね?女の子たちの気持ちがわかるかもね。」


「ア、アレックス……。」

「待ってくれ!反省する!反省したから!」

「遅いよ。僕は君たちが罪を認めてつぐなってくれたら、ここまでするつもりはなかったんだ。君たちが招いたことだよ。」


「お待ち下さい!使徒さま!

 お願いがごさいます!」

 マリアンヌ・フォダ・リシャーラ皇太后陛下が、僕の前に走り寄ってひざまずいた。


「大おばあさま……!」

 ルーデンス王太子は、マリアンヌ・フォダ・リシャーラ皇太后陛下が助けに来てくれたものと思って表情を明るくした。


「この国の国民だけは!国民だけはお助け下さい!彼らに罪はありません!」

「お、大おばあさま……。」

 それを聞いて愕然とした表情をする。


「わが孫とひ孫はどうなっても構いません!

 必要ならばこの首、差し出しましょう!

 だから国民だけは……。」

 地面にひれ伏す皇太后陛下。


 そこに父さままで滑り込むようにして、地面にひれ伏した。防衛大臣、デクスター・グリフィス侯爵がそれに続いた。他の大臣たちは開かなくなった扉から逃げようと必死だ。


「我々の首も差し上げます……!」

「愚かな王族たちに気付かなかった罪は我々にもあります!どうか我々だけを罰して、国民をお救い下さい……!」


 父さまとグリフィス侯爵が震えている。

 ……僕息子なんだけどな。父さままで、神の使徒としての僕に怯えているみたいだ。


 つまり真に国を守るつもりがあったのは、この3人だけだということだね。他の大臣たちには、順次神罰がくだることだろう。


 ……このままだと父さまたちにもいずれ。

 出来ることならそうしたくなかったというのもあったから、悩んでいたんだけど。


 でも、大臣としての責任は存在する。国の責任を王族の首だけで済ませられないこともある。それは父さまもわかっている筈だ。兄さまたち、父さまたちを許してくれるかな?


────────────────────


エザリス王国の時は、その時の大臣はすべて神罰を受けて、その親戚が次の大臣をやりました。(現在の大臣はその子孫)


AKASAKIさんの「BunnyGirl」、勢いがとどまることを知りませんね。

公開1週間目でオススメに出て聞きましたが、その時も凄かったけど、どんどん順位を上げて、ついに人気1位のミュージックビデオですよ。普通落ちるものなのにねΣ(゚Д゚)


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