第523話 国王の判断

「誰か来るぞ。こんな時間に王宮に来客予定だなんてあったか?」

「いや、聞いてないな。」


 門番の番兵たちは、そんな風に話しながらこちらをしっかり見ようと覗き込んでいる。

「お、おい……。なんだあれ。

 まさか──ルーデンス王太子殿下!?」


「ルーデンス王太子殿下が捕縛されてるぞ?

 誰だ、あの先頭の奴は!!」

 門番がこちらを見て叫んでいる。


 僕は一度国に戻って正装し、ドラゴンの国バルヒュモイ王国の従者たちによって捕縛されたルーデンス王太子殿下たちを引き連れ、馬に乗って王宮へと向かっていた。


 同じく馬に乗った護衛と、その横に槍を持った歩兵たちが、ルーデンス王太子殿下たちが逃げないように取り囲んでいる。


「国王に取次を所望する。こちらの者たちは我が国の王族に手出しした罪で捕縛された次第。聞けばそちらの国の王太子及び、その配下とのこと。国として正式に抗議と賠償請求をさせていただきに参った。」

 馬上の従者が巻き紙を開いて見せる。


 それを聞いた番兵は、飛び上がるようにして驚いた。

「そ、それでは取次を確認させていただきますが、どちらの国でいらっしゃいますか?」


「我が国はフルバティエ。

 先日新しく国と認められたばかりだ。」

「フルバティエ……?聞いたことあるか?」

「いや……。まあとりあえず取りつごう。」


 番兵の1人が門の奥に引っ込み、しばらくして僕らは王宮内に通されることになった。

 謁見の間で、赤い絨毯がまっすぐに引かれた先の一段高い場所に国王がいた。


 巻き紙をフルバティエの従者から受け取ったリシャーラ王国の従者が、筆頭補佐官、デニス・アルグーイにそれを手渡した。


 筆頭補佐官、デニス・アルグーイは、巻き紙に目を通すと、驚いた表情で壇上に上がって、国王に何事か耳打ちをした。


「我が国の王太子が、そちらの国の王族に危害を加えたと。……フルバティエ王国、だったか。聞いたことのない国だが。」


 国王、エディンシウム・ラハル・リシャーラ陛下は、不審なものを見る目を隠そうともせずに、僕を見つめていた。


「先日、バルヒュモイ王国、スウォン皇国、エザリス王国の3つの国に、新たな国として認めていただいたばかりです。こちらがその書類の写しになります。」


 僕の指示で再び別の巻き紙を差し出した従者の元に、さっきの従者が駆け寄り、巻き紙を受け取ると、筆頭補佐官、デニス・アルグーイに手渡した。


 筆頭補佐官デニス・アルグーイが巻き紙に目を通すと、それを恭しくエディンシウム・ラハル・リシャーラ陛下へと差し出した。


「……確かに。これは正式な書面になるな。

 して、危害を加えられた相手というのは、そなたなかな?」

 陛下はヒゲを引っ張りながらそう言った。


 なんだろう、すごく感じが悪いな。

 ルーデンス王太子の態度といい、僕はずっと引っかかりを感じていた。


「いえ、僕の妻ヒルデです。彼女はフルバティエの第2王妃。その彼女を無理やりものにしようと、ここにいる6人で襲ったのです。

 ここに証拠の音声と映像もあります。」


「あの女が王妃だと!?」

「そんな……、聞いてない……。」

 ルーデンス王太子たちが騒いでいる。

 このためにわざと隠してたわけだしね。


「それが本当のことならば、他国の王妃を6人もの人間で襲ったとなると……。」

「我が国は他国からの非難を免れない。」

「なんということを……。」


「エザリス王国といえば、最近ルカンタ王国の後ろ盾を得た国じゃないか。ルカンタは我が国など比べ物にならない大国だぞ……。」


「スウォン皇国も獣人の国では1番だ。」

「おまけにドラゴンの国、バルヒュモイ王国だって?ドラゴンが攻めてくるのか?」


 壁に等間隔で並んで立っている兵士たちから、そんな言葉がヒソヒソと漏れ聞こえてくる。これが将来の国王と、その側近候補なんだからね。国民は裏切られた気持ちだろう。


「それだけじゃありません、彼らは複数の女生徒に同様の危害を加えています。被害者は両手ではおさまらないほどです。僕はルーデンス王太子殿下の廃嫡を望みます。」


「アレックス!お前、何を……!」

「静まれ!勝手にこの場を動こうとするな!

 我が王が会談中だ!」


 ハリソン・フェアファクス公爵令息がそう叫んだ途端、僕の従者に頭を押さえつけられて、地面に力ずくでひれ伏せさせられた。


「僕は今、君たちの学友としてでなく、フルバティエの国王として話しているんだ。

 少し黙っていてくれないかな。」


 遠くで魔法大臣としてこの場にいた父さまが、目を丸くして僕を見ている。父さまは何も言えないだろうな。この場で僕と親子の名乗りを上げると、場を混乱させるからね。


「フルバティエ国王……だったか。

 貴殿の言い分はわかった。だが、その願いはかなえることが出来ぬな。」

 陛下は鷹揚に構えてそう言った。


────────────────────


ヒルデのスカートの長さについて、編集部で要会議だったんですが、無事ミニスカートに決まったそうです(パチパチパチパチ)。


書籍のオリジナルエピソードはレンジアに決まりました。お楽しみに(*^^*)



YouTuberのたこまるさんの、「120万円でTEMUの良いところだけ言ってください」という案件を断って自腹で商品買ってディスる動画、話題になってますね。


以前ヘラヘラ三銃士が宣伝してたから、一度調べてみて、その時点で胡散臭いなと思って利用を控えていたところだったんですが、やっぱりかあ、という。


ヘラヘラ三銃士自体は好きなんですけど、案件ちゃんと企業や内容を調査した上で選んでるのかな?って疑問に思うものをたまに受けてるんですよね、あの人たち。


ヘラヘラの動画だけ見てると、素敵な商品を揃えているように見えるんですけど、実際サイト見るとね……(^_^;)


まあ良いものも中にはあるのかもですが。


今回の動画で初めてたこまるさんを知りましたが、この方は危機管理意識の高い、信用のおける方だなと感じましたね。

たまにPC自作する人間なので、今後他の動画もチェックしていきたいと思います。



少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。

ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る