第490話 奥さんをオフィーリア嬢に紹介
「え!?ちょ、ちょっと……!?」
「いいからいいから、まかせてちょうだい。
ちゃんとアレックス好みにしてあげる。」
「私は情報と通信の女神、心の中は覗けませんが、オニイチャンの好みは把握していますので。それにエリシア姉さまは、オニイチャンの心の中が覗けるので。悪いようにはしませんので、安心して任せてくださいね。」
エリシア姉さまとキリカが、グイグイとヒルデの背中を押して部屋の外に連れ出しながら盛り上がっている間に、訓練の手が空くことになったタンザビアさんは、お孫さんのスカーレット嬢に話をしに行くと出かけた。
「ラーラさんは、引き続き皆さんに、稽古をつけていただいてもよろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんだ。違う職種の人間と戦うことも大切だが、まずは獣神としての戦い方の基本を覚えて貰ったほうがいいからな。」
ラーラさんがコックリと頷いてくれる。
「僕はオフィーリア嬢とレンジアを連れてこないとな。エリクソンさんにも、すぐに来てもらえるといいけど……。」
僕も他の英雄候補と師匠を連れて来る為に席を外すことを伝えて、ミーニャはそれに付いて来てくれることになった。
「僕は、しばらくこちらで、神々とお茶をさせてもらっても構わないかな?師匠は行ってしまったしね。それに師匠の作る武器が出来てから訓練に参加するよう言われたから、訓練場にいても手持ち無沙汰なんだ。」
とバイデン伯爵令息が言う。
「あ、そうですよね。
兄さまたち、問題ありませんか?」
「問題ないぞ。」
「問題ないよ!」
「もちろん構わない。」
「じゃあ、あとはお願いします。」
僕は兄さまたちに、バイデン伯爵令息のことを任せて、リシャーラ王国へと戻った。
「オフィーリアさんは自宅かしら?」
「たぶん。冒険者としてクエストに出かけてなければね。普段はヒルデと、ジャックさんとグレースさんとパーティーを組んでいるから、ヒルデがいないなら自宅だと思うよ。」
僕はミーニャと、オフィーリア嬢が借りている、仮の自宅を尋ねた。
ドアをノックすると、ジャックさんがドアを開けてくれた。
「アレックスさま。お嬢様にご用事でしょうか?ただいまあるじは湯浴み中ですが。」
思わず脳内を、お風呂に入っているオフィーリア嬢のイメージが駆け巡る。
「いてててて!」
「アレックス。」
ミーニャがそれを察したのか、僕のほっぺたを嫌と言うほど引っ張ってくる。
ミーニャは兄さまたちと違って、人間の心なんて読めない筈なのに、察しが良すぎないかな!?というかそろそろ離して……。
「こひらで待らひていららくことはれきますれしょうか?」
「は?」
「申し訳ありません。私とアレックスは、オフィーリアさんに用事がありますので、湯浴みからお戻りになるまで、こちらで待たせていただくことは可能でしょうか?」
「ああ、はい。問題ございません。
ご案内致します、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
ようやくミーニャが僕のほっぺたから手を離してくれたので、2人で連れ立って屋敷の中を歩く。それにしても、さすがは最も高貴な伯爵家こと、オーウェンズ伯爵家の従者だね。こんな状況を見ても動じないや。
しばらくして、
「アレックスさまがいらしてるの!?」
という喜色めいたオフィーリア嬢の声と、バタバタと走る音が聞こえてきた。
「オフィーリアさま、まずは身支度を整えませんと。」
「あ、そうね!グレース、よろしくね。」
「かしこまりました。」
オーウェンズ伯爵家と比べると、この家は狭いものね。お風呂場と面会室が近いんだろうな。僕だけじゃなく、ミーニャも一緒だってことは、果たして伝わってるんだろうか。
「おまたせ致しました、アレックスさま。」
グレースさんの開けたドアから、カーテシーをしつつオフィーリア嬢が現れた。
「お久しぶりです、オフィーリア嬢。」
「アレックスさまもご健勝そう……で、」
そして、僕の横に腰掛けているミーニャにようやく気がつくと、その顔から笑顔がスッと消え、警戒するような顔色を浮かべた。
「失礼致します。」
オフィーリア嬢が腰掛けると、すぐにジャックさんがお茶を運んで来てくれて、それをグレースさんが1人ずつに配ってくれる。
「……。」
「あ、紹介します。以前お話した、僕の婚約者で、このたび正式に結婚する運びとなった僕の妻のミーニャです。」
「ミーニャです、はじめまして。」
ニッコリと自信タップリに微笑んだミーニャの姿を見たオフィーリア嬢は、固まった表情のまま、ゆっくりとソファーに傾いて。
「オフィーリアさま!?」
「気付け薬を嗅がせよう!」
そのままパッタリと、ソファーの上で気絶してしまったのだった。
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今月からアルファポリスへの転載を始めたのですが、ファンタジージャンルで2位、HOT(独自の注目ランキングだそう)で1位を取りました。
参加人数が少ないというのもあると思いますが、ここまでランクが上がったことがないので、モチベーションにつながりますね。
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