第489話 初夜の準備に張り切る姉と妹
「つまり、加護をどれだけ得てるかどうかでアレックスの気持ちがはかれるってことね?
それで今の1番は私ってことなのね?」
ミーニャが僕の顔を覗き込んでくる。
「そ、そうだね……。」
「アレックスの気持ちって、加護によって筒抜けなのね!面白〜い!」
ミーニャがそう言って無邪気に笑う。
「ミ、ミーニャは気にならないの?
その、他の子のこととか……。」
だって僕が誰を今好きなのか、加護してる状態で丸わかりってことなんだよ?
「全員英雄候補なんでしょう?ならそれは必要なことじゃない。それに私自分が1番なら2番3番は気にしないことにしてるの。」
ミーニャが無邪気にそう言った。
「そ、そう……。ならいいけど……。」
うちの奥さんは肝がすわってるなあ……。
「そう……。私だけなのね、アレックスに好かれてないのって……。」
「そ、そんなこともないよ!?」
ただ今まで、ただの可愛い女の子としてしか、意識してなかったっていうだけで……。
ヒルデはちょっぴり目に涙を浮かべて、キッと僕を睨んで指先を突きつけてきた。
「アレックス!今夜、夫婦の寝室で待ってなさい!私のことが全然好きじゃないなんて、金輪際言わせないんだから!覚悟して!」
え、えええええ〜〜〜!?
「ふ、夫婦の寝室って……。」
ぼ、僕、ミーニャともまだ、そういうことしてないのに、ヒルデと先にってこと!?
僕が真っ赤になっていると、
「そういうことじゃないわよ!
まあ……そういうことでもあるけど……。」
どっちなのさ?
「2人っきりで、真剣に話がしたいってことよ!少しは私のことも、ちゃんと奥さんとして見て欲しいのよ。夫婦なんだから……。」
「そ、そう、ならいいけど……。」
元々予定してなかったとは言え、結婚したからにはヒルデとも、いずれそうなることになるとは思うけど……。
僕初めてはミーニャとって決めてるし、さすがにその順番までは変えたくないもの。
第1夫人より第2夫人が先っていうのも、常識的に言っても流石に変だしね。
「ミーニャ、いいかな?」
僕は一応年の為、ミーニャにもお伺いを立てることにした。なにせミーニャよりも先に夫婦の寝室にヒルデを入れることになるからね。ミーニャの気持ちは無視出来ないよ。
「うーん、寝室ってところが引っかかりはあるけど……。ヒルデさんもまだそのへんの覚悟は決まってない感じがするし、いいわ。」
唇に人差し指を当てながらミーニャが上目遣いでそう言ってくる。そのへんの覚悟って言うと、ヒルデよりも僕のほうが、全然決まってないと思うよ……。
ミーニャとの初夜だって、期待しているし楽しみにもしているけど、まだ全然そういう直接的な行為に及べる気がしないもの。
少なくとも今回のリシャーラ王国の問題が片付いてからだね。じゃないと落ち着かなくて、緊張しまくっちゃう気がする。
一応元貴族の令息として、婚約者が決まると、そのあたりの心構えだとか知識だとかは家庭教師から教わってはいるけど……。
知識と実践は異なるものだからね。
僕はリードしなきゃいけない立場だし、なおのこと心配事は取り除いておきたいから。
僕はともすれば家族の前でミーニャとの初夜を想像しそうになる頭をふりかぶった。
僕、自分で妄想癖があるのは自覚してるからね。家族の前で変なっこと考えないように気をつけなくちゃ。さすがに恥ずかしいし。
「わかったよ、ミーニャもいいと言ってくれているし、僕らの夫婦としてのあり方について、一度真剣に話をしよう。なし崩し的に結婚しちゃったけど、僕らはもう夫婦なんだもの。今後のことも考えなくちゃね。」
「ありがとう、アレックス。」
ヒルデはそう言って、本当に嬉しそうに目を細めて微笑んだ。あれ、かあいい……。
僕はちょっとドキッとしてしまった。
僕、少なくとも、自分を好きだって言ってくれる子に弱い人間なんだなって、意識はあったけど、それにしても弱いんだな……。
ヒルデは可愛いから余計にだよ。
でも、夫婦としてはいいことだよね。
「う、うん……。」
僕は照れながらそうとだけ答えた。
「そうですか、ならば私は妹として、全力でヒルデさんのサポートをさせていただきますね、オニイチャン。」
と突然キリカが言い出す。
「あら、いいわねえ。義妹のおめかしは、私もやってあげたかったのよねぇ。私もひとくちそれに噛ませてちょうだいな、キリカ。」
「はい、もちろんです、エリシア姉さま。」
「うっふっふ。ヒルデちゃんを、アレックスが気に入るように、私たち2人で美しく磨き上げてあげるから、楽しみにしていてね?」
そう言ってエリシア姉さまが微笑んだ。
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