第491話 オフィーリア嬢に秘密を打ち明けよう①

「だ……だいじょうぶですか?」

 僕とミーニャは、うっすらと目を開けて、グレースさんたちに介抱を受けるオフィーリア嬢を、心配しながら見守った。


 まさか気絶するほどのショックを受けるなんて……!なんだかとっても申し訳ないな。

 こればっかりは仕方がないとはいえ……。

 

 しばらくグレースさんたちに介抱を受けたのち、オフィーリア嬢はいったん自室に戻って、身支度を整え、再度僕らの前に現れた。


「お騒がせ致しました……。」

 ようやくしっかりとソファーに座り直したオフィーリア嬢が、頬を染めて恥ずかしそうに、膝の上で手を揃えてそう言う。


「アレックスさまは、かねてより婚約なさっていらした方と結婚なさったのですね。

 ……おめでとうございます。」


 思うところがあるだろうに、そう言って、僕とミーニャの結婚を祝ってくれたよ。

「その……。ありがとうございます。」

 僕もなんと言っていいかわからなかった。


 だって僕との婚約破棄に納得出来なくて、家を飛び出てまで僕を追いかけて来た彼女だもの。なんとか僕の気を引いて、新しい婚約者から取り返す宣言までしてたわけだしね。


 自分と婚約破棄したあとで、僕が別の女性と婚約しなおして、更にこんなにもすぐに結婚するなんて思っていなかった筈だし。


 僕と親しくなろうと、ルカリア学園にまでついて来たのに、結局僕はミーニャと結婚しちゃったしな。それがショックだったんだろうね。早くいい方と知り合えるといいけど。


「お相手の方は、以前、アレックスさまのご自宅で、お見かけしたことがありますわ。」

 オフィーリア嬢がミーニャにチラリと目線を向けつつ、そう言った。


「ああ、はい。ミーニャは僕の乳母の娘なんです。僕と乳兄弟で、幼馴染でもあるので、見かけたこともあるかと思います。」

 と僕は答えた。


「そうでしたか……。そんなにも以前から、アレックスさまと親交を温めていらしたのですね。羨ましいですわ。」

 そう言って寂しそうに微笑んだ。


「わたくしの気持ちに気付いていただけないうちに、こんな素敵な方とずっと一緒にいらしたら、それはそうですわよね……。」

「……。」


 どうしても言いたくなってしまったのだろうけど、未練のような強い感情をぶつけられても、なんと言っていいかわからない。


 でも、結婚の報告と、オフィーリア嬢とレンジアを英雄候補として、フルバティエに誘う為に来たんだし、そこは話さないとな。


「オフィーリア嬢。実は今日は、オフィーリア嬢にお願いがあってまいりました。」

「わたくしにお願い……ですか?」


「はい、僕と口外禁止の契約魔法を結んでいただきたいと想っています。それがないとお伝え出来ない、重要事項を今からオフィーリア嬢にお話ししたいと思っているんです。」


「口外禁止の契約魔法……。ずいぶんと厳重なのですね?もちろん口外などいたしませんとお約束はいたしますけれど、こと契約魔法となりますと、少々臆してしまいますわ。」


 困惑したようにオフィーリア嬢が言う。

「それはご尤もだと思います。貴族にはあまり馴染みのないことですからね。それこそ軍事機密に使うようなイメージでしょうし。」


「ええ……。」

「ですが商人であれば、これは割と一般的なことなのです。僕はいくつも商売を手掛けていまが、その殆どに契約魔法をかわしているのです。そこをご理解いただければ。」


「ご商売の延長線上のお話ですか?」

「少し違いますが……、そのほうが理解しやすければ、そう思っていただいても構いません。契約魔法をかわしていただけますか?」


「信頼を形にするというだけのお話ですものね。はい、もちろん問題ありませんわ。」

「ありがとうございます。

 では、こちらに血判をお願い致します。」


 書類に手を伸ばそうとして一瞬手を止め、

「血判……ですか!?

 それは罰則の伴うものと聞いたことがあります。随分と重たい契約なのですね……。」


「オフィーリア嬢にそこまで、とも思いましたが、皆さん同様の契約をかわしていただいておりますので、例外を作るよりも平等に同じ契約をしていただいたほうが、よいのではないかと考えました。」


「……ミーニャさんも、この契約を?」

「はい、私も契約魔法をかわしたことで、アレックスの秘密を教えてもらいました。」

 ミーニャがそう言って頷く。


「アレックスさまの……、秘密、ですか?

 奥さまにも契約魔法を使わないと話せないほどの秘密なのですね。それはとても教えていただきたいですけれど……。」


 なんで僕の秘密って聞いて、そんなに恥ずかしそうっていうか、嬉しそうにしているんだろうか?僕、そんな、聞いてて笑っちゃうような恥ずかしい秘密なんて話さないよ!?


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1日だけアルファポリスのファンタジーランキングで1位になれました。

すぐに落ちたけど、男性向けHOTランキングでもしばらく1位をいただけました。

これからも頑張りたいと思います。

今日はまだ更新があります。


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