雲の上の国造り
第436話 結婚なぞ許さぬ!
「わかったわよ。認めるわよ!
私、あんたのこと、好きだから。」
愛の告白というよりも、まるで喧嘩を売られているような口調で言ってくるヒルデ。
「え、えええ!?」
「ぜんっぜん気付かなかったわよね。
まあいいけど。せっかく結婚出来るんだもの。私も腹をくくるわ。」
嘘でしょう?ヒルデが……、ヒルデが僕のことを、好き!?
にわかには信じられなくて、僕は思わず困惑して、頭が真っ白になる。
【だから言ったじゃないですか、オニイチャンの周囲には、オニイチャンのことを好きな女の人が多過ぎるって。】
とキリカが畳み掛けてくる。
あれってそういう意味だったの!?
でも、キリカは人の心まではわからないんでしょう?どうしてわかったの?
【ヒルデさん、グレースさんには相談してましたから。それを聞いて知ってました。】
そ、そうだったんだ……。
僕の元婚約者で、今でも僕のことを好きなオフィーリア嬢には、さすがに相談出来なかったってことだね。そこで身近にいた大人の女性のグレースさんに相談してたのか。
【そういうことだと思いますね。】
それにしても、ヒルデが……。
これは予想外過ぎるよ。
そんな素振り、まったくなかったのに。
【ありましたよ。オニイチャンが気付いてないってだけで。オニイチャンが自分の好きなものを魔法の手紙の名前にしたことも喜んでましたし、オニイチャンからプレゼントをもらったことも喜んでましたし。】
そ、そうだったんだ……。
なんか悪いことしたなあ……。
そう思っている僕に、
「これから意識させるつもりだから。
覚悟してよね!」
と、腰に手を当てて、僕にビシッと人差し指を突き付けて、ヒルデがそう宣言する。
「お、お手柔らかにお願いします……。」
と返すのが精一杯だった。
「それで?いつ正式に結婚するのよ?」
「僕の国を作ってからかな。王妃様にしないと意味ないからね、既婚者ってだけでも問題には出来るけど、平民は重婚出来ないし、僕はミーニャを差し置いて、偽装とは言え結婚するつもりはないからさ。」
「アレックス……。」
ミーニャが嬉しそうに僕を見つめてくる。
「国を作ったら連絡するから、少し待っててよ。ようやく国作りが可能なくらい、スタミナのステータスが上昇したんだ。」
「わかったわ。でも、それまでにあいつらが接触してきたらどうするの?」
確かに、それはそうだね。明日にでも手出ししてこないとは限らないからなあ。
「僕の作った監視用の魔道具があるから、万が一のことがあった場合、証拠を撮ることは出来るけど、それで守ることは出来ないからなあ……。どうしよう。」
キリカ、なにかいいアイデアはない?
【ミルドレッドさんにお願いして、防御魔法をかけていただいてはどうですか?
手を触れようとすれば弾かれる魔法です。
学園内での魔法の使用は禁止されていますが、魔法感知の魔道具があるわけではないですし。緊急事態ですから致し方ないです。】
そうだね、そうしようかな。
ミルドレッドさんは、僕の従魔として契約を結んであるから、念話を使って呼び出すことにした。
「ヒルデ、これから僕の従魔を呼ぶから、その人に防御魔法をかけてもらうよ。手を触れようとしたら弾かれる魔法だから、簡単には手出しが出来なくなると思うよ。」
「その人?従魔なのよね?人なの?」
「うーん、なんていうかな、高位の魔物で人型にもなれるし、その姿で過ごしている事が多いから、魔物だけど人って感じかな。」
「そうなの。わかったわ。とりあえずそれがあれば安心よね。お願いするわ。」
「うん、ちょっと待ってて、今念話で呼んでるからさ。」
ほどなくして、ミルドレッドさんがヒルデの泊まっている宿にやって来た。
それも窓から。コンコンと窓がノックされて、窓を見たら浮いているミルドレッドさんがいて、思わず声が出そうになったよ。
「ミルドレッドさん、普通に入口のドアから来てくださいよ。」
「こっちのほうが早いではないか。」
悪びれない様子でそう言ってくる。
「このおなごは誰じゃ?初めて見るのう。
ん?んんん〜?
美しい!美しいのう!
わらわは美しいものは大好きじゃ!」
嬉しそうに目を細めるミルドレッドさん。
「あ、ありがとう、ございます……?」
それに困惑した様子のヒルデ。
「ヒルデって言うんだ。今度僕のお嫁さんになる人なんだけど、ちょっと今狙われてて。
だから防御魔法をかけて欲しいんです。」
「なんじゃと!?わらわを差し置いて、アレックスが結婚とな!
許さぬ!許さぬぞよ!」
「いや、これは彼女を守る為の、偽装結婚なので、いずれ離婚しますし……。」
「あら、私は離婚するつもりはないけど?」
「そ、そうなの?」
「い〜や〜じゃ〜!
わらわとも結婚してたもれ!
でなければ防御魔法なぞかけんぞよ!」
ええ……。
────────────────────
スキルロバリー月イチ自己ノルマ更新も、ようやく本日アップしました。
そちらもお目通しいただければ幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます