第398話 バウアーさんの野望
スクロールが見つかるまでは、スタミナだって隠しスキルみたいなものだったんだし。
もしもそのスクロールがなかったら、それこそ創生の海で作ってしまえばいいしね。
「もしも隠しスキルが実際に存在したら、大発見だぞ。マーシャル・グラントの魔法推論でも、ステータスにない、成長に影響を及ぼすものの存在が示唆されている。」
「第6章ですね。僕も読みました。」
マーシャル・グラントは有名な賢者だ。
彼の書籍は、魔法を勉強する人間は、いつかは読む本のひとつとされているね。
「そうね。可能性としては面白い話ね。
なくはないと私も思う。」
エリクソンさんがそううなずく。
「もしも僕に隠しスキルがあって、それが無属性魔法に対応していれば、もしくはそれに近しいものであれば、開発出来るのではないかと思い、挑戦してみたということです。」
隠しスキルの可能性については、僕も以前に考えていたことだからね。うまいことそれっぽく話せたんじゃないだろうか。
「なるほどな。本当に君に無属性魔法適正の隠しスキルがあるかはわからないが、そうして実際成功出来たわけだ。」
「……新たな研究課題が出来たわね。」
エリクソンさんが考え込むように、顎に手を当ててうつむいている。どうやらこの説明で納得してもらえたかな?
「──それにしても君の護衛だっけか。隠密スキルを持ってるんだよな?いいなあ、羨ましいよ。俺も欲しいと思っていたんだ。」
隠密?レンジアのこと?ああ、魔法禁止の魔道具が通じなければ、それは認識阻害魔法じゃなく、隠密だってすぐわかるものね。
「賢者に隠密って、あったほうが嬉しいものですか?魔法を放とうとすると解除されてしまうから、近接職でないと、あんまり意味のないスキルだと伺いましたが。」
隠密のスキルは、姿を隠して殴ったり切ったりは出来るけど、魔法を放つと何故か解けてしまうものだという。
だから魔法使いにとっては、あんまり相性のよいものとされていないんだ。
ちなみに人にぶつかられたり、攻撃を受けたりしても、解けてしまうものだね。
「そうじゃない。俺は透明人間になるのが夢でな。認識阻害魔法は、知られずに潜入するには制限のあるものだが、隠密はどこでも入ることが可能だろう?」
「まあ、確かにそうですね。王宮ですら、先程入口で使われたような、解析魔法はありませんし、侵入可能と聞きます。」
「あれは魔塔全体を使って、侵入者を拒む為にしかけている魔法だから、たとえ王宮であっても、再現するのは難しいでしょうね。魔塔と同じだけの魔法使いがいなければ。」
「そうなんですね、凄いや……。」
さすが魔法の粋を集めた魔塔だね。
賢者レベルの魔法使いが、たくさんいる魔塔だからこそ出来ることだってことだね。
「でも、どうして透明人間になりたいんですか?魔塔の賢者も、どこかに侵入しなくてはいけないことがるとか?あ、研究に必要な素材を、ダンジョンの魔物に気付かれないように取りに行くとかありますよね。」
「いや、そうじゃなくてな。
俺は世界中のありとあらゆる美女の風呂が覗いてみたいんだ。王宮なんてそれこそ、隠密でも持ってないと不可能だろ?」
少年のような笑顔で言うバウアーさん。
「え、えと……。」
なんて答えていいかわからないよ!?
レンジアは呆れたように、半目のジト目で口を上向き三角のように開いて、バウアーさんを見ていた。
「この馬鹿の言うことは気にしないで。
こういう人間だから。
これでも賢者としては優秀なのよ。
下半身に問題があるだけでね。」
「そ、そうですか……。」
「さっきも私に送った手紙で、くだらない、それはいやらしい言葉を送ってきたわ。
慣れるしかないのよ、これには。」
さっきエリクソンさんが、くだらない手紙だと言ってたのは、バウアーさんがエリクソンさんに卑猥な手紙を送っていたからか。
200歳をはるかに超えた年齢になると、そういう男性の性的な行動も、気にならなくなるのかなあ……。
まあ、エリクソンさんから見たら、バウアーさんも子どもみたいなものだろうし。子どものイタズラくらいに思ってるのかも?
そういえば、隠しスキルってほんとにあるのかな?ねえ、キリカ。隠しスキルを見られるスクロールって、この世に存在してる?
【回答。隠しスキルの存在と、隠しスキルを見られるスクロールの存在について。
隠しスキルが現在流通している、ステータススクロールで見られないもの、という点においては、存在します。
また現在流通しているステータススクロールの中に、上記の隠しスキルに該当するステータスを見ることの出来る、ステータススクロールは存在しません。】
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更新遅くなり申し訳ありません。
例によって体調不良です汗
遅れた分をなんとか取り戻すべく、頑張りたいと思います。
早く気候が安定するといいのですが。
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