第374話 ヒルデに秘密を打ち明けよう

 今日は学園の授業はお休みだ。スタミナの基礎ステータス上げの授業は週に2日。走った後に体育館で1時間の休憩があるけど、やっぱりそれだけじゃ回復しないからね。


 もう1日の授業は週末だ。騎士団は毎日でも訓練してスタミナを使い切るけど、学生には他の授業もある。スタミナを使い切った後は眠たくなってしまうから、間を挟むんだ。


「ふあっ。ふあ〜あぁ。」

 ぐっすりと寝たけど、やっぱり眠たくなってしまって、僕は盛大にあくびをした。


 騎士科は1日中走っていたのに、ヒルデは今日も元気にクエストに行ったらしい。

 叔父さんにヒルデが上級片手剣使いになったことを教えたら、やっぱり驚いてたよ。


「俺の時よりも断然早いな。本当に最短で剣聖になるかも知れないな、あの子は。」

「叔父さんとヒルデには、勇者になって欲しいからね。叔父さんも頑張ってよ。」


「あの子のほうが先になりそうだぞ?まあ、俺も引き受けたからには頑張るが。」

 母さまに託された使命ということもあってか、叔父さんも剣神になるつもりでいる。


 Sランクが受けられるような専門のクエストは、滅多に町には出ないから、レベル上げにはダンジョンに入る必要があるらしい。


 だけどSランクの主要な狩り場になるようなダンジョンは、最低でも4人パーティーを組まないと入れないんだって。


 でもたいていの冒険者は、固定のメンバーでパーティーを組んで動いているから、叔父さんが突然加わることは難しいそう。だからレベル上げをする場所に悩んでるみたいだ。


「昔の仲間とか頼れないの?」

 叔父さんだって現役時代はパーティーを組んで行動していたわけだし、その時の仲間たちは今も現役だって聞いている。


「国を転々としているからな。

 それに俺が抜けてから長い。もう既に新しい仲間を見つけて動いているさ。」

「そっか……。」


「お前の国を作ったら、そこに訓練場を作るつもりなんだろう?ならそこで訓練させてもらうさ。まだ誰も英雄になっていないんだ。

 それからでも遅くない。」


「そうだね。みんなバラバラの国にいるし。

 でも何よりは、まずは勇者さまだと思う。

 叔父さんとヒルデには特に頑張って欲しいんだ。ミーニャが追い上げてはいるけど。」


「そうだな。過去の例から言っても、勇者さまと聖女さまがまず現れることで、他の英雄が誕生しやすくなると言われている。誰がなるにしても、育成を急いだほうがいい。」


「うん。7英雄の中でも、勇者さまと聖女さまは特別な存在だよ。僕はヒルデにもそうなって欲しいから、そろそろ僕の使命を話そうかと思うんだけど、叔父さんどう思う?」


「いいんじゃないか?あの子は俺を追い越せる逸材だと感じているよ。

 ただ、今はまだ口外しないように、契約魔法は結んだほうがいいと思う。」


「うん。どこから僕が育てる力を持っているのか、バレるともわからないからね。

 今の段階で国に取り込まれないようにする為にも、そのほうがいいと思う。」


「あの子は俺に憧れてくれているようだし、話す時には俺もついていったほうがいいんじゃないか?急に契約魔法を結んでくれと言ったって、あの子からしたら怖いだろう。」


「ついてきてくれる?叔父さん。」

「それより、うちに呼んだらどうだ?

 近くに住んでいるんだろ?」


「あ、そうだね。そうしようかな。叔父さんに会えるとなったら、ヒルデも喜ぶだろし。

 叔父さんが会いたいと言ってるってことにしたほうがいいかもね。」


「そうだな。そうしようか。

 俺もあの子とは少し話してみたいしな。」

 ヒルデのことは、次の学園登校日に誘うことにした。お昼休みなら食堂にいる筈だ。


 それで見つからなかったら、冒険者ギルドの前で、クエスト受注に来るのを張り込んで捕まえるしかないね。


 次の登校日に、僕は食堂でヒルデのことを探した。既に友だちが出来たらしく、テーブルを挟んでおしゃべりをしていた。ルカリア学園の制服がとっても似合っていて新鮮だ。


 焦げ茶色のジャケットに、白のラインが入っていて、胸元に細い赤のリボンをつけている。スカートは薄茶色に赤のライン入り。こうして見ると女の子って感じがするなあ。


「ヒルデ!」

「あら、アレックス。

 あんたも今日は食堂でお昼?」

 ヒルデが座ったまま僕を見上げる。


「うん、お弁当は大変だからね。それでヒルデに話があるんだけど、ちょっといいかな?

 ──あ、ごめんなさい、お話中に。」


「いえ、だいじょうぶです。」

 ヒルデの友だちは手を振ってそう言った。

「何?話って。ここじゃ駄目な話?」


「ううん、だいじょうぶ。あのさ、ヒルデ。週末僕の家に遊びに来ない?

 話したいことがあるんだ。」


「へっ?い、家……?アレックスの?」

 ヒルデが半分笑ったような、驚いたような顔で、ほんのり頬を染めている。


 向かいの席に座ったヒルデの友だちが、両手で口元を抑えて、目を丸くして僕を見ていた。隣の席の男子生徒まで、驚いた表情でこちらを振り返っている。え?どうしたの?


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なんかバグってましたので修正しました。

コメントで教えていただき確認したら、なぜか文章が3倍に……。


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