第362話 キリカの提案
「く、雲の上!?」
「雲の上は、少しでも私たちのいる場所に近くなりますし、半分神であるオニイチャンの国として、最も相応しい場所ですね。」
キリカがニコニコしながら言ってくる。
「雲の上に国を作ろうっていうの!?
無理無理無理、それこそ無理だよ!」
「オニイチャンは本当に、兄さまや姉さまたちと同じですね……。私は、出来ないことは言いませんと言いました。」
「あ、ごめんね。話はちゃんと聞いてたんだけど、実感がわかなくて思わず……。
出来るの?え?どうやって?」
「オニイチャンのスキルには、それだけの力がありますから。ただ、ひとつ問題があるとすれば、ステータスが足らないってことですね。スタミナがもっと必要です。」
「バルヒュモイ王国を作る時にも、たくさんスタミナ回復薬を飲んだんだけど、そのやり方じゃ駄目ってこと?」
「雲の上に地面を作るには、一度に減るスタミナの量が尋常ではないです。
今のままでは1回分に足らないので、基本ステータスを引き上げる必要がありますね。
国さえ作ってしまえば、あとはオニイチャンが空中で階段を使えるようにしたように、空中で魔道昇降のように人を引き上げられるようにすれば、人は移動可能ですよ。」
「そっか。それで僕が許可した人たちだけがそれを使えるようにすればいいんだね?」
「はい、そういうことですね。雲の上に飛べる生き物はいませんから安全です。」
確かに。ドラゴンですら雲の上に飛べる種族なんていないからね。僕の作ったギアホースだって、雲の上までは飛べないもの。
僕を狙ってくる人たちがいても雲の上に逃げてしまえば安全だ。叔父さんにも引っ越してもらえるように聞いてみたほうがいいね。
ここにいないほうがいい気がするし。
「ステータスの引き上げかあ……。
スタミナを使い切らなきゃだよね。
あれキツイんだよなあ。」
「ちょうどネプレイースの為の人造人間を作ってるじゃないですか。スタミナ回復薬を使わずに、それをおこなえばいいのでは?」
「作るのがその分遅れちゃうじゃない?
早く作って欲しがってるのに、それで待たせるのも悪いから、スタミナを使い切るのはまた別のことでやるよ。」
「その後遊んであげなくちゃいけなくなるんですよ?ネプレイースがワガママを言っているだけなんですから、そんなの待たせておけばいいんです。オニイチャンを困らせて。」
キリカがぷん!とソッポを向きながらそう言った。そう言えば、キリカはネプレイースの体を作ってあげることに否定的だったな。
僕は思わず苦笑しつつ、
「まあ、知らなかったとはいえ、家族なのに挨拶出来なかったのは事実だしね。寂しがらせちゃったみたいだからさ。まずはネプレイースとの約束を優先してあげたいんだ。」
僕はベッドの上に起き上がった。キリカはそんな僕の膝の上にまたがるように乗っかって、口を尖らせながら首に腕を絡めてくる。
「オニイチャンは私にだけ構っていればいいのに。私オニイチャンと2人だけで過ごせてる時間が全然ないんですよ?せっかく体を手に入れたのに。もっと構ってください。」
「わかったよ、たった1人の妹をほったらかして、キリカのことも寂しくさせちゃったんだね。必ずキリカの為の時間も作るから。」
「約束しましたからね?」
頭を撫でてやると、キリカは嬉しそうに頬を褒めて微笑んだ。それにしてもスタミナかあ。魔力だったら良かったのにな。子どもの頃からMPを上げる訓練はしてきたし。
まさか騎士や近接職みたく、スタミナを上げることになるとは思わなかったな。
「国を作る時は、ついでに訓練場を作りましょうね。」
「訓練場?」
「はい、英雄専門の訓練場です。オニイチャンの使命は、英雄を育てることでもありますから、育てやすくする為ですね。」
キリカが僕の胸に耳を寄せながら言う。
「時空の海で時間を操作して、表で流れる時間と異なる空間を作るんです。たくさん鍛えられるようになることでしょう。」
「つまり英雄を集めて、レベルアップさせる為の空間を作ろうということだね。
うん、いいかも。魔王の復活までに、たくさん英雄を育てなくちゃいけないからね。」
「でしょう?」
キリカが嬉しそうに言う。
「やっぱりキリカはすごいや。」
僕はキリカをイイコイイコしてあげた。
それにしてもキリカは甘えん坊だなあ。もう抱っこされるような年齢じゃないと思うんだけど。母さまに頭を撫でられたことがないと言ってたし、家族に甘えたことがないのかも。その分僕が甘えさせてあげないとね。
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