第361話 国を作るのに必要な条件

「国を作るのに必要な条件って何?」

 王宮からの使者が帰って行き、僕は自分の部屋で、創生の海でネプレイースの体を作ってやりながら、キリカにたずねた。


「特定の領地があること、そこに王宮があること、3つの国が独立を認めること。

 これで国を作ることが出来ますね。

 国民の数は条件にないです。


 もちろん国を作るだけなら、バルヒュモイ王国のように、勝手に土地と建物を作るだけでもいいですが、オニイチャンの目的の為には、他の国から認められる必要があります。


 そうしなければ外交に力を持てません。

 3つの国は、独立を認める立場かつ、後ろ盾の意味も持ちます。」


 キリカは人造人間と意識をつないで、目の前の椅子に座って教えてくれる。

「バルヒュモイ王国は、どこかの国に認められて、国を再興出来たってこと?」


「いいえ。バルヒュモイ王国は、もともと国として認められた過去があります。

 だからオニイチャンのケースとは、立場が異なる存在ですね。


 土地がなくなってしまった為、国民は離散していましたが、バルヒュモイ王国民であることは変わらないままです。


 土地を取り戻し、再興宣言をしたことにより、他の国々から認められた形です。一度も国として認められたことのないオニイチャンの国は、それが必要ということです。」


「3つの国に認められる、かあ……。

 それって結構ハードル高くない?」

 僕はネプレイースの体を生み出すのに疲れて、ベッドの上に大の字に横たわった。


「出来ないことを、やりましょうとは言いませんよ。オニイチャンは既に、3つの国に恩を売っているじゃないですか。


 ドラゴンの国、バルヒュモイ王国。

 獣人の国、スウォン皇国。

 失われた大地、エザリス王国。


 彼らはみなとてもオニイチャンに感謝しています。オニイチャンが国を作りたいと言えば、後ろ盾として協力してくれるでしょう。


「そうかな?それならまず、3つの国を尋ねて、協力してくれるか、確認してからだね。

 協力してくれそうなら国を作ろう。

 でも、どこがいいんだろう……。


 バルヒュモイ王国は、もともとあった場所に土地を作り直したけど、今までなかったところに土地を作るとなると、下手なところに作って、迷惑がかからないか心配だよ。」


 かと言って、行き来のことを考えると、他の国からあまり離れた場所にも出来ない。

 僕の時空の海は、その持ち主にゆかりのある場所にしか、出ることが出来ないから。


 船で簡単に行かれる場所じゃないと、行き来するのにも困っちゃうよね。

 時空の扉で出せる場所の近くに、土地を作ることは大前提だ。


 となると、やっぱり3つの国の近くの、いずれかが1番いいのかなあ?他の国からも離れた海の上で、それでいて船で行き来するのに、さほど困らない場所に作れば。


「なにも地上や海の上に、こだわらなくてもよいのでは?」

 キリカが不思議なことを言ってくる。

「え?どういうこと?」


「リリィーフィア王女のルリームゥ王国は、海中深くに存在します。そういった、人が簡単に手出し出来ない場所のほうが、攻め込まれにくくてよいのでは?」


「海底に国を作るってこと?確かに、僕が簡単に行き来することが出来るのであれば、それは理想的な気もするけど……。

 僕はそこに時空の扉を出せないよ?」


 それに攻め込まれにくいってことは、同時にお客さんも、僕の国には来辛いってことにもなるよね?国を作ったらみんなに遊びに来て欲しいのに、それは困るなあ。


「出来ないことは言いませんって、言いましたよね?オニイチャン。方法があります。」

「海中に簡単に移動する方法があるの?」

「いいえ、空中に作りましょう。」


「──空中?」

 キリカの言う意味がさっぱりわからない。

 空中って……。土地なんてないよね?


「土地は人間の定義するものですが、なにも人間に合わせる必要なんてありません。

 それに国は、3つの既存国家が認めれば、それで問題ないのですから。」


「既存国家って言っても、エザリス王国も国交が再開したばかりだし、バルヒュモイ王国も復活したばかりだよね?

 そこのところどうなんだろう……。」


「エザリス王国にはルカンタ王国の後ろ盾がありますし、バルヒュモイ王国はドラゴンの国です。いざとなれば実力で黙らせることの出来る人たちですよ。」


「まあ、それはそうかもだけど。

 それで、空中に作るってどういう意味?

 空中に土地を生み出したとしても、宙に浮いてなんていられないよね?」


 仮に創生の海で出したとしても、そのまま地上にベチャッと落ちてしまうだけだよね。

「はい、だから、雲海に作りましょう。」


「うん……かい?」

 キリカはニコッと微笑んだ。

「はい、──雲の上ですね!」


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