第315話 楽しいドラゴン王国作り
自国の王太子の護衛を任される程の人なんて、どこの国でも出世頭かつ憧れの存在だものね。叔父さんを疑った女の人も、少し気まずそうに目線をそらした。
「気になさらないでください。あなたの行動は主人の安全を考える従者として、当然のものです。俺は気にしていませんので。」
叔父さんにそう言われつつ微笑まれて、女の人が少しはにかむ。叔父さんって、自分が女性にモテるってことに結構無沈着だよね。
母さまにしか興味がないからかもだけど。
【……なんでしょうか、今、異界からの意識が流れ込んできます。“おまいう”とは、どういう意味の言葉でしょうか?】
キリカが急にまた謎の情報を受信したみたいだ。僕に聞かれてもわからないよ!
キリカが知らない言葉は僕も知らないし。
「海外の冒険者が、王族の護衛を任される際は、貴族出身の者でないとなれないと聞いたことがありますわ。では、あなたさまは?」
「叙爵は受けておりませんが、Sランクになってから長いものですから。それと、元キャベンディッシュ侯爵家の次男です。」
「まあ……。そんな方に助けていただいたなんて。私はとても幸運だったのですね。」
シャイラ嬢は両手を合わせて、夢見るようにそう言う。なんかロックオンされてない?
「あなたがお困りの際には、必ずお助けするとお約束いたしますわ。私の店はそこの大通り沿いのパブリミ宝石店です。
必ずぜひ訪ねていらしてください。」
必ず、を少し強めに言っている。叔父さんとこのまま縁が切れるのが嫌なんだろうな。叔父さんは、ではと言って僕の肩を抱いて、そそくさと逃げるように人混みに紛れた。
「少し押しの強い人だったね。
怖い目にあったばかりだって言うのに、女の人は強いなあ。」
僕は思わず関心してしまう。
「とりあえず、目的は果たしたんだ。すぐに国に帰ってリニオンさんを呼ぼう。
正確な場所を教えて貰わなくてはな。」
「わかった。」
僕は人気のないところで時空の扉を出して中に入りつつ、リニオンさんに心の中で呼びかける。リニオンさん!リニオンさーん!
『なんだよ?』
『ナムチャベト王国につながる扉が見つかったので、戻って来ていただけますか?』
『案外早かったな。わかった。戻るわ。』
『お願いします。』
リニオンさんがそう言って念話が切れる。
リニオンさんが戻るまでの間に、僕は叔父さんたちと一緒にリシャーラ王国へと戻る。
叔父さんの家に帰ると同時に、家のドアがノックされる。
「はい?」
「俺だ。」
ドアを開けたらリニオンさんが目の前に立っていた。叔父さんは着替えに部屋に行く。
「早いですね?」
「声かけられてすぐ戻ったからな。
それで?もう行くのか?」
リニオンさんが腰に両手を当てて、コクンと首を傾げて僕を見てくる。
「はい。正確な場所を教えて欲しいです。
一緒について来てくださいませんか?」
「いいぜ。お前、飛べるのか?」
「いえ、僕のスキルで向かいます。
その為に探していたので。
ここに入って下さい。」
僕は92番目の扉を出して、リニオンさんにそこに入るよう、うながした。
「これでどこにでも行かれるのじゃ!
そなたも入るがよい。」
ミルドレッドさんが、時空の扉の入口で様子を伺うように、扉の周囲をジロジロ見て調べているリニオンさんをせっついた。濡れたズボンを履き替えた叔父さんが戻って来た。
「こんな魔法、初めて見るぞ?
ほんとにこれで行けんのか?」
「魔法じゃなくて、スキルですね。
僕に念話で位置を伝えて下さい。」
『これでわかるか?ここらへんだ。』
「はい、わかりました。
時空の扉!イメージの場所へ!」
僕はリニオンさんが念話で伝えてくれたことで、頭に浮かんだイメージの場所を、時空の扉に念じつつ扉を開けた。
そこは海の上だった。こっわ……。
扉から頭を出して、左右を振り返ると、右手側の遠くのほうに、ナムチャベト王国らしい大陸が見える。
左手側にも大陸があるはずだけど見えないのは、やはりナムチャベト王国のある大陸がもっとも近いからなんだろう。
「この辺で間違いないですか?
確認していただきたいです。」
「ちょっと待ってな。」
そう言って、外に飛び出るリニオンさん。
「ああ。ここだ!間違いねえ!」
空中に浮かびながら腕組みをし、僕にそう告げてくる。
「わかりました。──創生の海。
ドラゴン王国の大陸を作成!……駄目か。ドラゴン王国の大陸を作成!」
繰り返しドラゴンの大陸作成を試みる。
「あ?なに言って……。」
すると何回目かで、ゴゴゴゴという音ともに、海面が大きく揺れだした。
「な、なんだ!?」
海面が盛り上がったかと思うと、巨大な大陸が姿を表した。それだけじゃない。次々と大陸の上に植物がはえて広がっていく!!
────────────────────
【ドラゴンの大陸】
と
【ドラゴン王国の大陸】
では、出来るものが違うんですよね( ̄ー ̄)ニヤリ
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