第316話 ドラゴン集結

【スタミナ回復薬を飲んでおいたほうがいいですよ。スタミナがぐんぐんと減っていますから。このままだと倒れますね。】


 わ、わかった!

 キリカの言葉に、マジックバッグからスタミナ回復薬を取り出して飲んだんだけど。


「え?ちょ、え!?」

 植物どころか、どんどん建物までもが出来上がっていく!なんで!?僕はただ、大陸を作っただけのつもりなのに!


【オニイチャン、ドラゴン“王国”の大陸と言ったからですよ。創生の海が、ドラゴン王国を作ろうとしています。】


 えええええ!?


 どうりでやたらと疲れると……。スキルはスタミナを使うものだから、僕の求めた以上の結果に、スタミナが追いついてないんだ。


 エザリス王国で水瓶を作った時ですら足りたのに、やっぱり国ひとつともなると、莫大なエネルギーが必要なんだな。


 僕がスタミナ回復薬を12本飲み終わる頃には、巨大な城まである立派な国がひとつ、目の前に出来上がっていたのだった。


「す、すげえ……。なんだこりゃ……。」

 リニオンさんだけでなく、叔父さんも、ミルドレッドさんも、レンジアも目を丸くして、ドラゴンの大陸を見下ろしていた。


 え、えらいことしちゃったかも……。

 国が1ついきなり出来たとなれば、ここを通りがかった人たちが大騒ぎだよ!


 土地が出来るくらいなら、なくはないんだよね。海底火山が噴火した結果、新たな土地が生まれるって家庭教師から教わったから。


 実際僕が生まれる前にも、島がひとつ出来たって聞いてるしね。だけど植物や建物がいきなり出来るなら話は別だよ!


【気にすることはありませんよ。お母さまだってこの世界を作った時は、何も考えていなかったとおっしゃってましたし。


 神の作るものは、気まぐれで、世界にどう影響を与えるかなど、考えて作るものではありません。オニイチャンは神なのですから。


 望まれて神が与えたものの結果は、神が気にすることの範疇ではありません。】


 そ、そうなのかなあ……。


「これなら国をいちから作る手間が省けて助かるぜ!すぐにでも仲間たちを呼んで、ここで暮らせる!」

 嬉しそうなリニオンさん。


「だ、だいじょうぶですか?

 いきなり建物まで出来ちゃって、他の国から攻め入られたりなんてことは……。」

 僕は心配になったことを尋ねる。


「例えそうだとして、誰がドラゴンの国にかなうんだ?俺たち人型になれるドラゴンは、攻め入って来られなきゃ攻撃しない。むしろ返り討ちにしてやると宣言するさ。」


「確かにそうだな。SSランクに相当するドラゴンの国に、かなう人間の国はないだろうし、そんな愚かな真似をする国は、焼かれたって仕方がないだろうな。」


 と叔父さんが言う。

「むしろ国王がそんな馬鹿な真似をしたら、国民が反乱をおこすんじゃないか?国民の安全を脅かす王族などいらんだろう。」


「そっか、なら、そんなに心配しなくてもいいのかな。良かった。」

 叔父さんがそう言ってくれたことで、僕はホッと胸をなでおろした。


「さて。みんなを集めるか。」

 リニオンさんがニヤリとする。

「え?どうやって?どこにいるかも分からないくらい、散り散りになってるんじゃ?」


「まあ見ておれ。」

 とミルドレッドさんも笑っている。

 リニオンさんが、スウウウ……と大きく息を吸い込んだかと思うと。


「ウオオオオオオオオオオォ!!」

 と大きな声で吠えた!!

 大気を震わせる程の力強い声だ。

 これが、ドラゴンの咆哮ってやつ!?


 するとしばらくして、遠くの方からいくつもの点が浮かんでいるのが見えた。

 なにあれ?気の所為かな?


 それがどんどん近付くにつれ、巨大なドラゴンたちがこちらに飛んで来てるとわかる。

 い、いったい何体くるの!?


 空を埋め尽くさんばかりに、大量のドラゴンたちが集まって来る。

 物凄い光景だ……!

 空がドラゴンでいっぱいだなんて!


「グオオオオオオォ!!」

 ドラゴンたちが咆哮する。え!?な、何?

「みんな!久しぶりじゃのう!

 わらわも嬉しいぞよ!」


「挨拶してるだけだ。喜んでるんだよ。」

 リニオンさんが教えてくれる。怒ってるみたいにしか見えないんだけど……。


「こんなにたくさんのドラゴンたちが、人里近くに隠れ住んでいたのか……!

 こりゃあ、国を作って正解だな。まあ、人間の国の勢力図が変わるかも知れんが。」


「え?どういうこと?」

「ドラゴンの国と手を結ぶ国が現れれば、当然その国は勢力を増すからな。」

「あ、そっか。それは確かにそうだね。」


「みんな!ここにいるアレックスが、俺たちの国を復活させてくれたんだ!」

 ドラゴンたちがその言葉に、扉の入口に立っている僕を一斉に見て来る。こ、怖い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る