第309話 最短ルート探し

「大国同士は直通便があるのはわかっているけど、他にナムチャベト王国に行くルートはないかな?もう少し短めの日程で。」


「今わかっている時空の扉は、どことどこにつながっている?」

 叔父さんが僕に尋ねてくる。


 1〜72番目・現時点で開かない。


 73番目・お祖父さま。

 リシャーラ王国、キャベンディッシュ侯爵家周辺、他。


 75番目・木こり。

 ラティーヤ王国、ソドル南部、ペイリー領地の名も無い山の中。

 精霊信仰の国。各国との国交を断絶。


 76番目・リシャーラ王国、先代国王。

 リシャーラ王国、王宮周辺。


 77番目・現時点で開かない。


 78番目・アントン・スミス。冒険者。

 ナドミン王国。街道。


 79番目、80番目・現時点で開かない。


 81番目・料理人(料理あり)。

 ドッパーナ王国。


 82番目・冒険者(売りやすい)。

 スウォン皇国。


 83番目・農民(収穫物たくさん)。

 エザリス王国、中央地帯北部、ザサラ領地、ハンメルの村。


 現時点でわかっているのはこのくらいだ。

 僕はそれを叔父さんに伝えた。

「うーん……。それだとレグリオ王国から行くのと大差ないな。もう少し探してみるか。」


「わかった。──リニオンさん、申し訳ないんですが、ナムチャベト王国に行く最短ルートが船でひと月かかるので、もう少し近いルートをこれから叔父さんと探します。」


「探す?どうすんだ?」

 僕のスキルを知らないリニオンさんが、不思議そうに尋ねてくる。


「僕のスキルは、他人のアイテムボックスに干渉出来るんだけど、今干渉出来るアイテムボックスで、ナムチャベト王国に最も近い出口を探すんです。少し時間を下さい。」


「他人のアイテムボックスに干渉する?

 出来たとして、それがなんだってんだ?」

「干渉したアイテムボックスから、外に出られるんですよ。それこそいろんな国に。」


「ただし、死んだ人間のアイテムボックスの中にしか、入ることが出来ません。また、持ち主に関連する土地につながるようです。」

 と叔父さんが僕の言葉を補足して言った。


「その中でナムチャベト王国または、ナムチャベト王国に直通便のある国を探します。

ある程度探したうえでどうしてもなければ、レグリオ王国からの船便になりますね。」


「なるほどのう。それでわらわのいた水晶の館に出られたというわけか。勇者はアイテムボックスを持っていたからのう。」

「はい、そうなりますね。」


 うんうんとうなずくミルドレッドさんに、僕はそれを肯定した。

「なら、俺はここで待ってりゃいいのか?」


「我が家でもいいですし、ミルドレッドさんみたく、僕と心で念話が出来るのであれば、それまで好きにしていただいても構いませんし。どうされたいですか?」


「なら好きにさせてもらう。せせこましいところでじっとしてるのは、正直性に合わねえんでな。これでいいだろ。」


 リニオンさんはそう言って、ミルドレッドさんがやるみたく、指先をついっと振った。

『聞こえるか?』

『あ、はい、だいじょうぶです。』


 リニオンさんの声が頭の中に響いてくる。

「じゃあ、準備が出来たら呼んでくれ。」

 リニオンさんが窓からでて姿を消した。

 普通に玄関から出たらいいのに……。


「わかりました。行こう、アレックス。」

「うん、叔父さん。」

「なんじゃ、わらわはおいてきぼりかの。」

 ミルドレッドさんが不満げに言う。


「ミルドレッドさんには、我が家を守っていただくという使命がありますし……。」

 帰って来て家がなかったら困っちゃうし。


「だが、わらわが近くにおらんと、一定時間でそなたの認識阻害魔法が消えるぞよ?

 かけ直す必要があるであろ?家よりも重要なのはアレックス自身であろ。」


「そうなんですか?」

「まあ、1日くらい問題はないが、なにがあるかはわからんじゃろ?」


「確かに、これまでのことを考えると、まったくないとは言い切れないな……。家は最悪どうとでもなるが、アレックスの位置を万が一にも特定されるわけにはいかないな。」


「そうだね、叔父さん。ミルドレッドさん、ついて来ていただけますか?」

「うむ!もちろんじゃ!」


【オニイチャン、レンジアさんも連れて行きましょう。使命を隠していた時とはもう違います。護衛は多ければ多いほどいいです。】


 レンジアを?


「どうした?アレックス。」

 僕の部屋にいるキリカが、念話でダイニングの僕に話しかけてくる。キリカと念話をすることで、固まってしまった僕に、叔父さんが尋ねてくる。


「キリカが、レンジアも連れて行ったほうがいいって言うんだ。護衛は多いほうがいいってことで。」


「──レンジア?」

 あ。そっか。叔父さんはまだレンジアの存在に気がついていないんだ。

 そっから説明しないといけないな。

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