第308話 ナムチャベト王国への行き方

 キリカの声が聞こえる。

 ええっ!?僕2体しか使役してないよ!?


【その2体が、どちらも災厄級のドラゴンだからですよ、オニイチャン。


 災厄級は本来、1体使役するだけでも凄いことです。先代のドラゴンマスターだった勇者ですら、クリスタルドラゴンしか使役していませんでしたからね。


 テイマーで考えてみてください。

 Sランクの魔物を2体以上テイムしているテイマーがいますか?本来1体のみですよね?それだけ凄いことってことです。】


 た、単なる情報秘匿契約書代わりのつもりが、なんかとんでもないことになったよ!?

 あとで叔父さんに相談しよう……。

 まずは土地の説明をしないとね。


「僕のスキルで、おそらく誰も住んでいない土地を新たに生み出すことが可能です。試してみないとわかりませんが……。」


「土地を生み出す!?

 そりゃどんなスキルなんだ!?」

「説明すると難しいんですけど……。まあ、そういうことも出来るってことです。」


「みなさんは、どこに島があったらいいと思いますか?希望があればお伺いしたく。」

 叔父さんが、スキルの詳しい説明をさける僕の代わりに、話題をそらしてくれた。


「そうだな……。前住んでた島の近くがやっぱりいいが。あそこは鳥竜種の移動のルートになってるから、肉も捕まえやすいし、海流が荒くて人間の船が近付きにくいしな。」


「では、そこに案内していただけませんか?

 同じ場所に作れるかはわかりませんが、試してみたいと思います。──アレックス。」


「うん。みなさんと一緒にそちらに向かいたいと思います。一番近くの人間の国がわかれば、教えていただけませんか?」


「確かナムチャベト王国って国だった筈だ。

 あの国の人間と番いになった竜も結構いるんだぜ。ナムチャベト王国の初代は、俺たち竜と人間の混血児が王さまになったんだ。」


 人間と子どもの作れるドラゴンがいるっていうのは、この間ミルドレッドさんに聞いたばかりだね。ナムチャベト王国は竜人と呼ばれる種族がたくさん住んでいる国だ。


 ナムチャベト王国王太子の、スレイン・アシット・エイシャオラさまは、リーグラ王国のザラ・アウラ・スティビア王女さまと、先日婚約を結んだばかりだね。


 大国には珍しく、国教が精霊信仰の国なのも、ドラゴンを祖先にもつ国だからなのかも知れないな。精霊信仰の国の殆どは、国王会談にも参加しない小さな国ばかりだからね。


 竜神になれる可能性のある人たちがたくさん住んでいる国だし、いつかいかなくちゃと思っていたから、ちょうどいいかも。


 キリカ!ナムチャベト王国に近い、時空の扉ってあるかな?


【回答、情報規制がかかっていて確認することが出来ません。元勇者などの特別な存在であれば、アイテムボックスなどの情報もありますが、それ以外のアイテムボックスには時空間魔法がかけられており、情報の秘匿制限がある為、私にはわかりません。】


 ミルドレッドさんがいた水晶の館に通じるアイテムボックスは、どこかの代の勇者のものだったということ?


【そうなりますね。】


 そうなると、ひとつひとつ確認するしか、ナムチャベト王国に通じる、または近い時空の扉を探すことは出来ないわけだ。


 ましてや、新しくわかった時空の海のスキルの力じゃ、白く光る扉の中身を当てることは出来ても、その扉そのものを開けることは出来ない。開かない扉だったら意味がない。


 船旅で行くとなると、我がリシャーラ王国からではひと月以上かかる道のりだ。そもそも海に出る為に1番近いレグリオ王国の領地に向かうだけでも、10日はかかるからね。


 レグリオ王国に通じる時空の扉はわかっているから、レグリオ王国まで行って、そこから船だとしても、船で移動する間の商売の準備をしなくちゃならない。


 他の時空の扉からだと、ナムチャベト王国直通の船便があるかそのものがわからない。

 うーん、どうしたもんかな。


「おじさん、僕のわかる範囲だと、ナムチャベト王国に行くのに、往復でふた月もかかっちゃうよ。その間の商売のことも考えなくちゃだし、直通便のことがわからないんだ。」


 叔父さんは世界中を旅していた冒険者だからね、直通便についても僕より詳しい筈だ。

 なにせナムチャベト王国で、騎士団に代わって王族の護衛をしていた経験があるし。


 スレイン王太子の護衛をしていた頃に、ザラ王女とも面識があると言っていたよね。

 だからナムチャベト王国と他の国の間を、何度も移動したことがあると思うんだ。


「ナムチャベト王国か……。確かにレグリオ王国からは直通便が出ているが、あまりに時間がかかり過ぎるな。ひと月は長すぎる。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る