第275話 人型になれる魔物

 そして僕と目が合うと、

「そなたが“ななつをすべしもの”であるな!

 わらわにはすぐわかったぞよ!

 さあ!今すぐこの身を差し出そうぞ!」


 そう言うと、強い風がクリスタルドラゴンの体を取り巻いて、僕と叔父さんは目を開けていられなくなった。両腕で顔の前を多いながら、風がおさまるのを待ってやり過ごす。


 そして風がやんで目を開けると、足元までの銀色の髪に、金色の目をした──一糸まとわぬ幼い美少女がそこにいて、いそいそとベッドに潜り込むと、ブランケットをめくり、


「さ、優しくしてたもれ……。」

 と、ポッと頬を染めてモジモジしだした。

 え!?どういうこと!?

 ていうか、そのベッドどっから出したの?


 僕と叔父さんはポカーン。

「なんじゃ、こぬのか?あまりおなごに恥をかかすものではないぞ?」


「え!?ま、待って下さい、僕はあなたが僕と話をしたいというから来たのであって!

 それに僕が欲しいのはあなたの鱗です!そう事前に聞かれていらっしゃいますよね?」


「鱗?鱗とな?わらわは、“ななつをすべしもの”が現れた場合その身を差し出せとしか聞いておらぬぞよ。──違うのか?」


 そ、その身って……。

 あのベッドは、そういうこと!?

 僕は思わず全身が真っ赤になる。


「“ななつをすべしもの”が……いずれやって来る、……現れた場合その身……にまといし鱗……を差し出せ。なるほど。ところどころが途切れて聞こえていたというわけか。」


 叔父さんが1人納得している。

「ち、違います!僕、そんなつもりありませんから!勘違いです!鱗が欲しいだけで!」


「なんじゃ、つまらぬのう。ついにわらわは鏡を愛でなくともすむと思うたのに。わらわは美しいものが好きなのじゃ。ここに住んだのもわらわをうつす鏡がらあるからじゃ。」


「鏡?この水晶群のことですか?」

「そうじゃ。ここにおれば、いつでも美しいわらわの姿を見ることが出来るのじゃ。じゃがわらわも、つがいが欲しゅうてのう。」


「つがい?旦那さんですか?」

「そうじゃ。じゃから長年神に願っておったのじゃ。わらわの審美眼にかないし、美しいおのこをここに寄越せとの。」


「はあ……。」

「ついに神から返事があったのじゃ!

 じゃからわらわの願いを聞き届けて、美しいおのこを寄越したと思うたのじゃ。」


「なんかすみません……。」

「神の答えはわらわの思うておったものとは違ったが、そなたは実に美しい。お互いがよければよいであろ?さ、抱いてたもれ。」


「で、出来ません!そんなこと!

 僕、好きな子がいるんです!」

「なんじゃ、人間の娘か?構わん構わん。

 わらわは2番目以降を気にせんのでな。」


「僕が気にします!」

「なんじゃ……。わらわを美しいと申したであろ。この身が欲しくはないのか?」


 そう言ってスルリとベッドから出ると、全裸のまま僕に近寄って来た!長い髪の毛でほとんど隠れた幼い姿は、まるで絵画のように美しいけど、あれは見ちゃ駄目だ!


「どうじゃ……。美しいであろ!」

 髪の毛をスッと片手で持ち上げたのが、僕の腕の下からチラリと見える。


 まるで僕に見せつけるみたいに、堂々と自分の裸をお披露目してくる。

「わかりましたから服を着てください!」


「なんじゃ、つまらん。勇者のようなことを言うのだの。人間のおのこというものは、裸の美しいおなごを前にすると、むしゃぶりついてくるものと聞いておったのじゃが。」


 人によってはそうかも知れないけど……。

 僕はそういうの、無理だから!!

「申し訳ありません、うちの子には刺激が強いので、そういうのはちょっと……。」


 叔父さんもそう言ってくれる。

「なんじゃ、仕方がないの。」

 そう言うと、再び強い風が吹いて、

「さ、もう服を着たぞよ。」


 クリスタルドラゴンがそう言ったので、僕と叔父さんが目を開けると、どうやって着たのか、ちゃんとドレスを身にまとっていた。


「あの……、クリスタルドラゴンさん。」

「ミルドレッドじゃ。」

「ミルドレッドさん、」


「んん〜〜……!!美しいおのこに名前を呼ばれるというのはいいのう!」

 ミルドレッドさんは体を震わせて、目をギュッと閉じて嬉しそうにそう言った。


 な、なんかやり辛いなあ……。

「そなた、名はなんと申す?」

「挨拶が遅れて申し訳ありません。

 俺はセオドア・ラウマンと申します。」


「僕はアレックス・キャベンディッシュと申します。」

「アレックス!良い名じゃ!

 実にわらわのつがいに相応しいの!」


 マナーとして、年長者の叔父さんが先に名乗ったんだけど、叔父さんのことはガンとして無視して、嬉しそうにしていた。


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ようやく登場、ロリババア枠、魔物っ娘、かつナルシストキャラポジション。

人型になれる魔物は今後も出てきます。

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