第273話 クリスタルドラゴンのいざない

「どうした?アレックス。」

 立ち止まって困惑している僕に、叔父さんが振り返って訝しげにたずねてくる。


「ここ、水晶の館だって……。」

「──水晶の館!?ドラゴンマスターだった勇者が従えていたという、クリスタルドラゴンが住みついたというダンジョンか!?」


「うん、マリーアさんたちがスウォン皇国で言っていたよね。もともと住んでたわけじゃなくて、クリスタルドラゴンが住みついたから水晶の館と呼ばれるようになったって。」


「水晶の館ならSSランクダンジョンだぞ?

 確かにAランク以上はたくさんいるだろうが……。なんだってキリカはそんなところを教えたんだ?アレックスにはまだ早いぞ。」


「キリカ!なんでここだったの?

 もっと他に、今現在でAランク以上がたくさんいるようなダンジョンはない?」


【ここがオニイチャンにとって、重要拠点であるという情報をつかまえました。


 クエストが発動するかまではわかりませんでしたが、オニイチャンが立ち寄るべき場所として、名前の上がっている場所は、他にもいくつかあります。そのひとつです。


 それと、クリスタルドラゴンがオニイチャンを呼んでいました。その為ですね。】


「クリスタルドラゴンが呼んだ?僕を?」


【正確には、“ななつをすべしもの”を、ですね。どうやらクリスタルドラゴンは限りなく聖獣に近いことから、神の言葉にある程度干渉できるようです。】


「それって、クリスタルドラゴンは、“選ばれしもの”に伝わった託宣を、直接知ることが出来たということなの?」


【いいえ。“ななつをすべしもの”がいずれやって来る、現れた場合その身にまといし鱗を差し出せ、と、知らされていたようですね。


 ただしある程度までしか干渉できない為、どの程度正確に神の言葉を受け取ることが出来るのかまではわかりません。


 人間を守護している神の言葉は、本来人間と聖獣と精霊にしか届きませんが、聖獣に限りなく近いことから、神の言葉がある程度届くようです。すべては伝わりませんね。


 ちなみに妖精は祝福を授けられますが、神の言葉は聞こえません。唯一妖精女王にのみ届くものとなります。


 クリスタルドラゴンはとても好奇心が旺盛なので、“ななつをすべしもの”がなんであるのか、早く知りたくてたまらないようです。】


「なんか、ここが僕にとって、重要拠点だって情報が見つかったんだって。それがクエストが発生する場所だとまでは、キリカにはわからなかったみたいだけど……。」


「重要拠点?」

「なんか、他にもそういうところがあるみたいだよ。僕が立ち寄るべき場所として、名前の上がっている場所があるみたい。」


「つまり、他の英雄のスキル解放条件に影響を及ぼすような、アイテムを手に入れられる場所だということか?」


「それはわからないけど……。──ねえ、キリカ!ていうか、ひとつ気になるんだけど、弓神解放のクエストって、僕がやるの?弓神を目指している本人がやるものじゃないの?」


「え?アレックスがやるのか?

 錬金術師なんかのスキル解放条件だって、本人がやらないと意味がないだろう。」


 キリカの言葉は僕の脳内に直接響いているから、僕とキリカの会話内容が分からない叔父さんが、僕にそのことをたずねてくる。

「うん、僕もそこが気になって……。」


【オニイチャンがやるのは、クリスタルドラゴンの鱗を手に入れるところまでですね。


 過去に鱗を手に入れた者は、剥がれ落ちたものを拾ったようですが、本来簡単には剥がれませんので、剥がれるのを待っていたら、いつまで経っても手に入れられません。

 

 クリスタルドラゴンの鱗を傷付けずに剥がすのは、聖なる力を持つにしか不可能です。


 クリスタルドラゴンは聖獣に限りなく近い存在ですが、あくまでも魔物ですので、聖なる力を流されると鱗が浮いてきます。


 防具を作るのが、弓神解放条件の1つなので、それは本人が直接おこなう必要があります。クリスタルドラゴンの鱗を手にすると、本人のクエストが発動するようです。


 クリスタルドラゴンの鱗を加工出来る防具職人は限られていることから、それを見つけ出し、他の素材を集める必要がありますね。


 恐らく他の英雄もそうなのでしょう。

 オニイチャンが手助けしないと、解放条件がそもそもわからないんだと推定されます。


 現時点でわかる情報は以上です。】


「僕が力を流さないと、クリスタルドラゴンの鱗が手に入れられないみたい……。

 鱗を手に入れるとこまでが僕の役目みたいだ。あとは本人がやらないと駄目だって。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る