第272話 緊急クエスト発生
アイオロスさんが思わず僕のことを、驚いた顔で、目を丸くしながら見ている。
「テイマーにとって、テイムした魔物は命を預ける大事な味方と聞きます。」
僕はシャーリー嬢の目を見て言った。
「人によっては家族のように大切にしている方もいるとか。それが一瞬で消されてしまって、何も思わない筈はありません。」
シャーリー嬢が、あ……という表情を浮かべて僕を見た。もしもその人が魔物を大切にしていた場合、僕はその人の家族を消してしまったことになるんだ。
予想外の効果だったとはいえ、そこに僕の責任がないかと言われたら違うと思う。僕なら相手になにか言ってやりたいもの。
「僕にはお金を支払うか、代わりの魔物を用意することしか出来ませんが、それでも精一杯つぐないはさせていただきます。」
「けど、保証するったって、今この国の冒険者ギルドには、代わりの魔物がいねえんだ。
あんたよそから連れてこれんのか?
死んだ魔物はAランクだぜ?」
「この国のダンジョンには、Aランク以上の魔物が出るところはないのですか?」
「この間制覇されたばかりだからな、ダンジョンボスだし、当分はわかねえよ。」
「そうですか……。」
キリカ!どこかにいいところはないかな?
【回答、603番目のアイテムボックスが、ダンジョンに直接つながっているようです。Aランク以上の魔物ばかりのところですので、気にいる魔物も見つかることでしょう。】
「叔父さん、僕、ダンジョンに魔物を捕まえに行こうと思う。手伝って貰えないかな?
捕まえ方なんて僕、わからないし。」
「ああ。もちろん構わんさ。」
「ダンジョンに行って魔物を捕まえる!?
お前にそんな事出来んのか!?」
「あ、僕の叔父さんは、現役のベテランSランク冒険者なんです。他国の王族の護衛経験があるレベルの。だから叔父さんがいればだいじょうぶだと思います。任せて下さい。」
それを聞いたアイオロスさんがポカンとする。他国の、の意味は、国交を断絶してたこの国の人には分からないかも知れないけど、王族を護衛出来る意味はわかると思う。
ちなみに他国の王族を護衛出来るのは、貴族の地位を得られる年数分と、同等の経験を持つ冒険者だけなんだよね。
他国の冒険者ギルドには所属していないから、なにかあった時の保証を冒険者ギルドはしてくれない。自分で保証することの出来る貴族にしか無理なんだ。
冒険者は長年Sランクを続けていると、その貢献年数に応じて叙爵が許されるもので、叔父さんはそれだけ長いこと、現役Sランクでいたってことになるんだよね。
「ま、まあ、そこまで言うのなら、ちゃんと捕獲してきたら、見直してやってもいいぜ。
それだけの力があるなら、シャーリーとのことも、考えて直してやらなくもない。」
「兄さん……。嬉しい。」
「あの……、その話、もうやめません?」
なんでそこにもっていくかなあ!もう!
「とりあえず、お2人には先に経験を分配しますね。僕のほうの用事はこれでいったん終わりましたので、店の方も気になりますし、こちらで失礼させていただいても?」
「ああ。構わんよ。」
「きちんと英雄に育つまで、様子を見に来させていただきますし、食料事情の方も引き続き面倒を見させていただきますので。」
僕はアイオロスさんとシャーリーさんに経験値を分配すると、2人の育成協力をバイツウェル3世にお願いして、王宮の馬車で叔父さんとオンスさんたちのもとへと戻った。
突然王宮に連れて行かれた僕たちを、心配してくれていたオンスさんたちは、僕らが無事戻ったことにホッとした表情を浮かべた。
「さっきのあれを見たかい?
空にキラキラしたもんが浮かんで……。
ありゃあ綺麗だったねえ。吉兆の前触れだと、みんなで話していたのさ。」
「そ、そうなんですね。」
「俺たちは行くところが出来ましたので、一旦こちらで失礼します。ひと月先の分まで、魚は預けていきますのでお願いします。」
「おう!まかせておくれよ。渡された分はすっかりさばけちまったよ。みんな久々に食べ物が手に入るってんで大混乱だったがな。」
「明日からは、少し落ち着いてくると思いますよ。さすがに国も動く筈ですからね。」
「だといいがねえ。」
叔父さんの言葉にオンスさんは苦笑した。
オンスさんたちと別れて、僕らは時空の扉を出して中へと戻った。
「おかえりなさい、オニイチャン。」
笑顔でキリカが出迎えてくれる。
「僕らはこのまま、603番目の扉に行くから、なにかあったら教えてね!」
そう言って、603番目の扉に向かい、扉を開けた瞬間、キリカの声が聞こえた。
【緊急クエストが発生しました。水晶の館にて、クリスタルドラゴンの鱗を手に入れよ。
クリスタルドラゴンの鱗で防具を作ることが、弓神の英雄解放条件の1つです。】
ク、クエスト!?
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コンテスト参加の効果なのか、まもののおいしゃさんと、こじらせ中年のブックマークが日々、ジワジワと増えております。
こ、更新、頑張らねば……。
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