第271話 たぶらかしたって言われても!
僕がそう言って微笑むと、シャーリー嬢は恥ずかしそうに、嬉しそうに、モジモジと上目遣いで僕を見てきた。──なんだろ?
「あなたは確かに凄い力を持ってるし、俺たちにとって神さまみたいな存在ですけど、妹は簡単には渡しませんから。手を出すつもりなら俺をの屍をこえる覚悟をして下さい。」
と、突然アイオロスさんが言ってくる。
!????
「ちょ、ちょっと、兄さん!何を言い出すのよ!恩人相手に失礼だよ!」
「お前がこいつを見て頬なんか染めるからだろうが!今までどんな相手に言い寄られても袖にしてたくせに、初対面の相手に簡単にたぶらかされやがって!」
アイオロスさんがシャーリー嬢に怒鳴る。
アイオロスさんは妹さんが、特別に大好きな人なんだろうか……。まあ僕もキリカやリアムに恋人が出来たら寂しいとは思うけど。
【まあ、オニイチャンが悪いですよね。】
なんで!?
キリカの言葉が予想外過ぎて、僕は思わず声に出しそうになってしまった。
【不用意に微笑んだりするからですよ。】
これからお世話になるかも知れない、初対面の人たちに会ったんだよ?微笑むくらいしたっていいじゃない!理不尽過ぎるよ!!
【オニイチャンは駄目です。これ以上オニイチャンを好きになる女の人が増えても困りますから。私の前でだけ笑ってて下さい。】
ええ……。というか、微笑んだくらいで、好きになったりしないでしょ?普通。
キリカの考え過ぎだよ。
【いいえ、なってます。オニイチャン、私を誰だと思ってますか?】
え?僕の妹……。
【それと?】
じょ、情報と通信の女神さまです……。
【はい。だから、なってます。】
キリカが再度断言する。
キ、キリカは、人の考えてることまでは、分からないんじゃなかったの!?
【私には、美と愛の女神であるエリシア姉さまがいるんですよ?姉さまにわかることは、姉さまを通じて私にもわかります。】
そ、そういうものなの?
え?てことは、シャーリー嬢はほんとに?僕がシャーリー嬢をチラリと見ると、バチッと音がしそうなくらい瞬きして目をそらす。
う、うわあ……。ほんとにそうなのかな。
てことは、エリシアさんにも、僕が誰を好きで、誰が僕のことを好きかってことも、筒抜けだってことなのか。恥ずかしいな。
「アイオロスさん。僕には婚約者がおりますので、シャーリー嬢とそういったことにはなりません。だから安心してください。」
そう言うと、シャーリー嬢に露骨にガッカリした悲しそうな顔をされた。
うう……。なんだか心苦しいな。
「なんだと!?お前婚約者がいる身で、妹を誘惑したってのか!?」
「なんでそうなるんですかあ!!」
もー!どうしろって言うのさ!
「せっかくこの国を安全にしてくれた人なんだよ?そんなくだらないことで、恩人に喧嘩を売ったりしないでよ。見てご覧なさいよ、あの人困ってるじゃないの。」
「困るのはこっちのほうだ。確かにあの時は助かったさ。だけどなんでも一緒くたに魔物を消しちまうもんだから、テイムされてた魔物まで、あの後消えてたのがわかったろ。」
「それは確かにそうだけど……。」
え?そ、そうなの?キリカ。
【はい、消えましたね。テイムされてるだとか、そういうのは、条件にありませんでしたから、まとめて消されてしまっています。】
「神がしたことだと思っていたから、それも仕方がないって話になったが、人間がやったってんなら話は別だ。テイムされている魔物を殺したらどうなるか、分かってんのか?」
僕は思わず叔父さんを振り返る。僕は冒険者のルールにそこまで詳しくはないから、叔父さんに確認するしかない。叔父さんは、僕の意図をくんでくれて、説明してくれた。
「テイムされている魔物は、テイマーの財産に当たるんだ。殺してしまった場合、補填が必要になる。冒険者ギルドで代わりの魔物が用意出来れば、買い取り費用を負担だな。」
もしもその時冒険者ギルドに代わりの魔物がいなければ、捕獲クエストを発注して、買い取り費用の他にクエスト依頼代金も支払うことになるのだそうだ。
「わかりました。こちらで魔物の費用を負担させていただきます。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
「お、おう、素直になりゃいいんだよ。」
僕が謝ったことで、気が削がれたみたいにアイオロスさんはそう言った。
「ご本人にも直接謝りに行かせていただきますのでどなたか教えてくださいますか?」
「もう兄さんったら!ガウリスさんは命が助かったんだし別にいいと言ってたでしょ!」
「そういうわけにいかねえだろ。」
「そういうわけにはいきません。」
僕とアイオロスさんの声が重なった。
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昨日の正解はシャララックス【岡山弁アニメ】さんの、ジジイ同士のだいぶ見ていられないラップバトルと、耳が通すぎたラップバトルでした。
未視聴の方は面白いのでぜひ見ていただきたいですね!
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